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フードリンクレポート

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2015年9月04日(金)11:08

繁盛する立ち食いそば屋を7軒めぐって見つけた、人気店を支える4つのポイント。

繁盛する立ち食いそば屋、行列の先にあるヒット現場!

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取材・執筆 : 須田萌子 2015年9月4日

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 立ち食い寿司、立ち食いステーキ、立ち食い焼肉、立ち食いフレンチに、イタリアン...飲食業界でブーム真っ只中の「立ち食いグルメ」。かつては「立ち食い」と言えば「時間のない時のサクッとランチ」「サラリーマンの昼メシ」「安くて早いが、味はそれなり」というイメージが強かったが、近年は、立ち食いならではの高回転率を活かし、クオリティの高い料理を低価格で提供し、お客様に行列してまでも食べたいと思わせる店が増えている。その立ち食いブームの渦中で特に増えているのが「そば屋」だ。今回は昼夜問わず行列をなし、お客様の心を掴み続けている「立ち食いそば屋」を訪問。各店の特徴をレポートしながら、人気のヒミツに迫る。

 今回都内7軒の人気立ち食いそば屋を訪れ、各店のロケーション、店舗レイアウト、メニュー、オペレーション、客層などを調査した。そのなかで見つけた「繁盛する店の4つのポイント」と個人的な「立ち食いそば屋所感」を以下にまとめた。

①店舗構造は「タテ長」が使い勝手◎
 
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間口が狭く奥行のあるレイアウトの立ち食いそば屋が圧倒的に多かった。立ち食いそばは、基本的にひとりで利用するケースが多ため、お客様がストレスを感じることなく食事ができる壁向きのカウンター席が求められる。タテ長の物件であれば、壁一直線に長いカウンター席を設置でき、店側は薬味のセッティングや掃除もラク。混雑時はお客様に詰めて立ってもらえば、想定する席数よりも少し多く収容できるというメリットもあった。(写真は人形町「寿々木屋」のカウンター)

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日本橋「よもだそば」は、店の両サイドがカウンター。収容力抜群だ。

 私自身、はじめは「立ち食いそば屋」に女性一人で入店するのに抵抗があったが、タテ長の店舗ならば間口が狭く、小道を入るような感覚で意外に入りやすいと感じた。壁向きのカウンターならば、対面式のカウンターやテーブル席と違って人目を気にすることなく食事ができるし、かえってそばと向き合いじっくり味わうことができるのだ。女性だって立ち食いそばを楽しみたい、でもちょっと恥ずかしい...そんなときは「タテ長の店舗」を狙うのがおすすめだ。

②「天ぷら」にもこだわる

 「あっさりとした味わいのそば」×「ボリューム満点の天ぷら」で、一層の満足感・満腹感を得てもらうため、各店「そば」はさることながら「天ぷら」にも力を注いでいた。それぞれの店でお客様がどんなメニューを注文するのか調査したところ、人気が高かったのが「かき揚げ」だ。

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日本橋「そばよし」のかき揚げは、分厚く大きいが、サクサクした軽やかな食感。玉ねぎ、ねぎ、にんじん、桜えびの定番の具材で食べ飽きしない王道の味。
 
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茅場町「たかね」のかき揚げは、どんぶりの直径を上回る超ビッグサイズ。カリッと揚げられていて食感もよい。同店は、夜はアルコールを提供する居酒屋的機能も持つため、つまみにもぴったり。「たかね」は全商品テイクアウトが可能で、夜はちょい飲み酒場に変身し使い勝手もよいので、個人的には職場や家の近所に欲しいそば屋ナンバーワン!

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日本橋「よもだそば」のかき揚げは、玉ねぎをまるごと一個使うというインパクトで勝負。同店はこのほかに、紅しょうが天や、ニラ玉天など単品の天ぷらを数多く揃えているのも魅力的である。

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水道橋「とんがらし」には、かき揚げはないが、天ぷらは注文を受けてから丁寧に揚げ、しかもボリューム満点という大盤振る舞いで、そばより「天ぷら」目当てにやってくるお客様も多いようだ。

 各店のかき揚げや天ぷらを食べ比べてみると、ただ具に衣をつけて揚げているだけではない。ネタの種類や大きさ、形状、揚げ油、食感にその店の個性が現れ、各店のこだわりや情熱、おもてなしの姿勢がにじみ出ている。むしろ、そばの麺の太さや固さ、つゆの味よりも天ぷらの印象で店を記憶していると言ってもいいくらいで、天ぷらがそば屋の「顔」にもなっていておもしろい。そば屋とはいえ、天ぷらを毎日ひっきりなしに揚げているので、「天ぷら屋」さながらのクオリティで。立ち食いそば屋にうまい天ぷらあり、である。

③お客様の記憶に残る「個性」
チェーン店から個人店まで、立ち食いそば屋があふれる都心において、リピーターを作るにはお客様の心に留めてもらえるような「個性」が必要である。

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虎ノ門「港屋」の「肉そば」。ラー油を加えたつゆと、豚肉がてんこもりのビジュアルでそばのイメージを一新。同店はモダンな外観、バーのような内装、すべてにおいて個性を発揮。ここ最近、似たような「肉そば」を提供する店も増え「港屋インスパイア系」という言葉まであるほど。

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日本橋「そばよし」は老舗鰹節問屋直営という強みを活かした、そばつゆの旨さに加え、白いごはんに鰹節工場で出た無料の「粉かつお」をふりかけて食べる「おかかごはん」でも人気を博す。実際に「おかかごはん」を食べてみると鰹節の濃厚な旨みがたまらなくおいしいため、「おかかごはん」目的で通いたくなるほどだった。

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中野「かさい」は、都心のにぎわう立地ながら店の軒下で食べるオープンなスタイルが斬新。通りかかるだけで興味が湧く店であり、中野の駅前のちょっとした名所!?と化している。

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日本橋「よもだそば」は、そば屋にして「インドカレー」も売りにするという意外性で興味を惹き、人形町「寿々木屋」は、東京であえての名古屋名物「きしめん」を売りにする。各店とも「ここにしかない」メニューや雰囲気づくり、おもてなしで独自性を出している。

④その街に馴染む営業スタイル

 「立ち食いそば」の多くはオフィス街にあり、利用客はビジネスマン男性が圧倒的に多いため、彼らの「欲しい」にいかに応えていくかも人気の鍵となる。

 金融系企業が多い日本橋にある「そばよし」や「よもだそば」は、出勤時間の早い銀行・証券マンを狙い、朝7時からの営業で朝ごはんニーズに対応。同じく金融街の茅場町にある「たかね」は、テイクアウトサービスで、デスクランチ派の多忙なビジネスマンに応える。3店舗とも夜はビールなどのアルコール(「そばよし」は缶ビールのみ)を揃え、仕事の疲れを癒す「ちょい飲み」ニーズにも対応し、ビジネスマンが昼夜足繁く通う店として定着。土日は定休や営業時間を短縮し、オフィス街ならではの効率の良い営業スタイルをとっている。

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水道橋「とんがらし」は、年季の入った店構えと味わいのある手書きメニューが、気取らない水道橋の街並みに馴染み、さらに老夫婦店主のほのぼのとした雰囲気が心地よい、ビジネスマンの癒しの場になっている。

 今回さまざまな立ち食いそば屋をめぐり、一番に感じたのは「立ち食いそば屋」をビジネスマンのものだけにしておくのはもったいない、ということ。ここ数年で人気に火がついた「立ち食いフレンチ」や「立ち食いステーキ」の店は連日女性客でにぎわっているようだが、「立ち食いそば」に「時間のないビジネスマンの昼メシ」という昔からのイメージが染みついているせいか、訪問した立ち食いそば屋で女性客を見かけるチャンスは少なかった。しかし、いまや立ち食いそばは、各店「そば」にこだわり、「つゆ」にこだわり、季節感のある素材を使ったトッピングにも創意をこらし、「ワンコインでクオリティの高いそば」を満喫できる店と進化している。かつての「安いが、味はそれなり」という印象はまったくないのだ。そんな中、女性に訪問してもらいやすい工夫をしている店舗も増えつつある。
 
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たとえば、虎ノ門「港屋」はスタイリッシュな空間で、女性ひとりでも入りやすい。カップルも数組利用していたので、デートにもいいようだ。さらに茅場町「たかね」はテーブルの下にバッグを置けるカウンターを設置、日本橋「よもだそば」は地下にテーブル席を用意するなど女性にうれしい気遣いが感じられた。

 男女問わず、日本人に昔から親しまれている「そば」、そして「立ち食いグルメブーム」と相まって、これからも「立ち食いそば屋」は増え続けるに違いない。「そば」自体のおいしさやつゆに使われる素材などのクオリティが一層求められるのは当然だが、大切なのは「街の人々に愛される営業スタイル」。その地に拠点を置く人たちの生活リズムに合うメニューや店の雰囲気作り、サービスを取り入れ、ビジネスマンだけでなく、女性のお客様も気軽に通える「立ち食いそば屋」が増えてほしい。

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