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ランダムトーク

フードリンクレポート

2015年8月18日(火)15:53 ランダムトーク

クラウドファンディングは新奇性あるレストランで、資金調達の最後のひと押しなら賛同を集めやすい。

本格化する飲食店のクラウドファンディング活用(5-1)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年8月16日執筆

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 インターネットを使って、不特定多数の一般市民から小口の金額を募るクラウドファンディング。この仕組みを活用して、事業を始める企業、団体、個人が増えている。飲食店においても、独立開業、新規出店、店舗補修などで活用が進んできた。では、クラウドファンディングとはどのようなもので、どんな使い方ができるのか。取材してみた。(5回シリーズ)

セララバアド1.png
クラウドファンディングで内装・インテリアの不足分、開業資金の一部を調達した「セララバアド」。代々木上原の閑静な住宅街にある。「食べログ」トップ1000に入るいまや人気店。

 小田急線・東京メトロ千代田線の代々木上原駅近くの閑静な住宅街に、今年1月オープンしたレストラン「セララバアド」。この店は、「マンダリンオリエンタル東京」の「タパス モラキュラーバー」の元料理長で、スペイン料理の名店「サンパウ東京」、英国の権威あるフードビジネス専門誌「レストラン」が選ぶ「世界のベストレストラン50」で1位になったデンマークの「ノーマ」などで修業した橋本宏一シェフが開いたレストランで、分子料理という斬新な調理法を用いて、新しい日本の食を表現する理想に燃えている。

 その「セララバアド」は、クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」を使って、開業資金の一部116万9820円を、76人のサポーターより調達した。目標金額は内装・インテリアの不足分50万円だったが、223%と目標を大きく上回る人気を集めた。

 「マクアケ」は購入型と呼ばれるクラウドファンディングで、リターンはレセプションパーティー招待券とコースディナーが設定された。支援するコースは、2000円、8000円、1万2000円、1万6000円、1万7500円、9万6000円と6種類用意され、金額に応じたサービスが提供された。たとえば2000円コースでは、まかない料理をシェフたちと一緒に食べる招待券を購入する形となり、グラスワインが付加されていた。

セララバアド2.png
「モダンガストロノミーを気軽に!」が、セララバアドのコンセプト。顧客単価は9000円ほどを想定。写真は「根セロリで作った折鶴」。

 これは1つの例だが、外食にもクラウドファンディングの活用が広がっている。クラウドファンディングとは、crowd(群衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた造語で、インターネットの普及とともに2006年頃から台頭し、アメリカ、イギリスを中心に世界的には1兆円市場に達したと言われている。

 日本では東日本大震災の復興支援として広がってきた面があり、ビジネスに展開されてきたのは昨年くらいからと言えるだろう。代表的なサービスには、レディーフォーの提供する「レディーフォー」、ハイパーインターネッツが提供する「キャンプファイヤー」、サイバーエージェント・クラウドファンディングが提供する「マクアケ」などがあるが、国内の市場規模はまだまだ小さく、100億円を少し超える程度のようである。

ソウ1.png
サンフランシスコのジュースバー「ソウ」の2人のオーナーは、ブルーボトルコーヒー卒業生。

 先行するアメリカの代表的なクラウドファンディングの企業には、キックスターター(KICKSTARTER)、インディーゴーゴー(INDIEGOGO)などがあり、特にこの2社はもしアメリカでスピーディに事業を始めたいのであれば、資金調達の手段として検討に値する。

 日本の企業でも、アニメの制作会社などは「キックスターター」を上手に活用しており、東京都武蔵野市のSTUDIO4℃では、8月4日、30日間の支援者募集期間を経て、全世界での公開を目指した新作アニメーション『Red Ash -Magicicada-』の制作費16万2882ドル(約2019万円)を、1869人の支援を受けて調達した。目標金額は15万ドルだったので、それ以上を集めた。

 2009年に設立された「キックスターター」がカバーする分野は、アート、ゲーム、フード、ファッション、ジャーナリズム、音楽、映画など15のカテゴリーに及んでおり、クリエイティブな発想を持ちながらも、資金が足りない人を応援することが主たる事業の目的となっている。2014年11月の時点で7万4000のプロジェクトが成立し、約14億ドルの資金を集めている。

 支援者は、投資によって金儲けをすることはできない。つまり資産運用はできなくて、支援と引き換えに、リターンとしては商品やサービスの提供を受ける。要は販売予約のようなものであり、それゆえに購入型クラウドファンディングと呼ばれる。クラウドファンディングには、実は別の型も存在するが、最もポピュラーなのが購入型であり、最大手「キックスターター」が採用している。

 「キックスターター」では設定した目標金額に達しなければ、集まった金額を受け取ることができず、全額支援者に返金される、オール・オア・ナッシング方式である。目標金額に達した場合、「キックスターター」は成立額の5%を徴収する。別途、払い込みに使う、アマゾンペイメントまたはクレジット決済手数料として3~5%が徴収され、残りの金額が支援金を募った側に渡る。

 こういった仕組みも、概ね日本のクラウドファンディングに踏襲されている。

ソウ2.png
「ソウ」のフレッシュジュースはサンフランシスコ郊外の有機農法の農家から仕入れた野菜と果物を使っている。オーダーが入ってから作る。

 「キックスターター」を活用した飲食店の開業としては、たとえば2012年サンフランシスコで開業した「ソウ(sow)」というジュース・バーがある。この店の2人のオーナーは、サードウェーブの代表格「ブルーボトルコーヒー」の店員として出会い、「ブルーボトルコーヒー」のような生産者と手作りにこだわったフレッシュジュースと軽食を提供するカフェを開きたいと企図。「キックスターター」により、約1ヶ月で1万2600ドルを調達して、独立を果たしている。

 いかにもサンフランシスコらしい起業の仕方が興味深い。夜はワインバーになる店を日中間借りして、スタートした。

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ポートランドのメキシコ料理店「タケリア・ヌエベ」は、クラウドファンディングの支援によって5年ぶりに店を再開できた。

 オレゴン州ポートランドの「タケリア・ヌエベ(Taqueria NUEVE)」というメキシコ料理店も、約1ケ月で3万1413ドルの支援を集めて、2014年1月に開業している。オーナーは5年前に閉店した同店を再開すべく、必要資金の85%を既に調達していたが、最後のひと押しのために、「キックスターター」を活用した。

 冒頭挙げた日本の事例や、クラウドファンディング先進国のアメリカの事例からも、分子料理、ジュース界のサードウェーブのような新奇性のあるプロジェクトや、既にほぼ開業できるだけの資金を集めていて最後のひと押しに活用するケースに、支援者は賛同して、クラウドファンディングは成功しやすいということが、知られるのである。



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