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2015年6月23日(火)16:58 トレンド

丸亀製麺は負け組から肉盛りうどん効果で一発逆転!肉推し季節メニューでヒット連発!

デフレを脱却、好調な外食低価格業態は何を変革したか!(5-5)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年6月22日執筆

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 日本経済が長らく停滞しデフレに苦しんできた中で、数少ない勝ち組として君臨してきた低価格の外食業態が、アベノミクスによってデフレ脱却、景気浮揚がはかられる中で、業績を落とす傾向が見られる。株価上昇による資産効果が出ている高価格業態はともかく、生活に密着したデイリーユースの低価格業態ほど、昨年4月の消費増税によって消費マインドが落ち込み、消費対象のセレクトが厳しくなったこともあって、どういった施策を打てばいいのか、非常に難しい経営の舵取りが必要な状況にある。2017年に再びやってくる消費税率10%アップに向けて、困難はしばらく続くだろう。しかし、そうした中にも、消費者のニーズを的確にとらえて、新しい時代の風をとらえて成長軌道に乗る低価格の外食業態もある。そうした、新しいタイプの勝ち組を特集する。(5回シリーズ)

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「丸亀製麺」の業績を急回復させた救世主、昨年8、9月に販売された「肉盛り」。580円とワンコインで食べられるこの店としては高価だったが、ボリューム感ある肉のインパクトで大ヒットした。

 「丸亀製麺」の業績が絶好調である。今年に入ってからの既存店売上高は、1月104.1%、2月114.0%、3月105.1%、4月117.0%、5月113.3%と前年同月比で毎月伸びている。しかも5ヶ月間のうちに3ヶ月で2桁の高水準で伸びているのだ。客数と客単価も全ての月で伸びている。直近5月の既存店客数は106.5%、既存店客単価は106.4%となっている。

 経営するトリドールの平成27年3月期連結決算によれば、「丸亀製麺」の売上収益は過去最高の771億8300万円(前期比8.9%増)、セグメント利益は112億9000万円(前期比12.2%増)となっている。店舗数は期中に5店増えて、779店舗となった。好業績に対して、これまでハイペースで出店してきたにもかかわらず、意外と店舗数が伸びていないということは、「丸亀製麺」の店舗数を増やすよりも、内容の充実に注力したことを示している。

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店舗数が増えてチェーン同士の顧客の奪い合いが起こる、競合も増えてきたと、取り巻く環境は楽観視できないが、商品力と宣伝で突破。

 しかし、実は「丸亀製麺」の業績は昨年の1月~7月まで苦戦しており、既存店売上高がなんと全ての月で前年同月を割れていた。26年3月期の国内店の既存店売上高も前年比5.7%減であり、むしろアベノミクスによる負け組に属していたのだ。ところが、8月以降12月までは5ヶ月連続で2桁のペースで売上増と驚異的な回復を見せ、今年に入ってからもその勢いが続いている。

 なぜ、ドミノ返しのごとき劇的な急回復が可能だったのか。そこには期間限定商品の強化と、宣伝の戦略の大転換があった。起死回生策として、2014年8月1日から9月23日まで販売した、夏を乗り切るためのスタミナ新メニュー「肉盛りうどん」は、ボリュームたっぷりの牛肉をスライス玉ねぎと一緒に甘辛く煮込み、温・冷いずれのうどんにもよく合う味付けに仕上げた「肉盛り」を別皿で提供する、新しいスタイルのうどん。ベースになるうどんは、「かけ」、「ぶっかけ」、「釜揚げ」から選べるように自由度を持たせた。

 「肉盛り」は牛皿のタワーといったフォルムで、牛丼ファン、ビーフが好きな人も納得のがっつりメニューである。うどんとは別に食べたり、うどんに乗せて食べたり、ご飯を別途注文して牛丼にしてもいいと、顧客がカスタマイズできる良さをアピールした。

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単なるセルフの讃岐うどんにあらず。顧客の使い方によって、お好みの天ぷらうどん、天丼、天ぷら定食、おにぎりを使っただし茶漬けなど、いろんな食べ方ができる。

 「丸亀製麺」では従来から好きな天ぷらをトッピングした食べ方、その天ぷらで天丼をも楽しめる、おにぎりとセットにできる、おにぎりに無料のダシ汁を入れてお茶漬けにできるなどといったような、セルフ式の讃岐うどんを進化させた、顧客の自由度の高い業態で人気を博してきたが、そこにトレンドである「肉」をインパクトのある形で投入して成功した。

 税込590円という値段は、ワンコインで食事ができる「丸亀製麺」としては高い。しかし、同様の肉のボリュームと品質でがっつり系ラーメンを食べるとなると、600円で可能だろうか。牛丼ファンは別かもしれないが、見方を変え、これまで「丸亀製麺」を利用しなかった人にしてみれば、そんなに高いとは感じないかもれない。

 そして、同社としては初の全国にオンエアーされるCMを制作。億単位のお金をかけて大々的に宣伝した。陸上競技・十種競技の元日本チャンピオンで、タレントの武井壮さんを起用し、「ヤバい」を連発する印象的なCMで、多額の出費を補って余りある絶大な効果を及ぼした。以降は、同様な約2ヶ月間の季節商品投入とCM放映により、ずっと好調を維持している。

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初夏のシーズン限定。現在販売中で7月中旬までの冷やしうどんの商品「豚マリネぶっかけ」(590円)。豚肉のボリュームは迫力ある。

 その間投入したのは、「タル鶏天ぶっかけうどん」、「知床いくらうどん」、「Wカツカレーうどん」、「だし玉肉うどん」、そして現在5月27日から7月中旬まで販売中の「豚マリネぶっかけ」(590円)である。「豚マリネぶっかけ」は大きめにカットしてうどんだしで下味を付けた豚しゃぶと、オニオンスライス、千切りにしたキャベツでつくり甘酢で仕上げたマリネを、冷たい塩ぶっかけうどんに乗せた初夏向けの商品。和洋折衷のさっぱりした味わいで、個性的でよく研究されており完成度の高さを感じる。

 売り上げの差はもちろんあるが、どの商品もヒットしており、創作性の高い「丸亀製麺」の季節商品を楽しみにしているファンも増えてきた。「一番売れたのは肉盛りですね。シンプルで、肉を別盛りにしてボリューム感を出したのが受け入れられました。見た目のインパクトもありました。お正月でいくらを出した以外は、ずっと肉推しで通しています」(トリドール・IR担当)。

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まず豚肉を豚しゃぶとして食べ、次に野菜・マヨネーズと合わせて食べ、最後にうどんと一緒に食べる。だし醤油をかけるとまた味に深みが出ると、4通りに味わえる。「肉盛り」などにもこういった食べ方が提示されていた。

 今までも季節商品はずっと出してきていて、商品開発の引き出しとなるベースはできていた。しかしながら、宣伝をして来なかったために印象が薄く、売り上げに大いに貢献しているとは言いがたかった。それまでも、肉系のうどんの当たりが良かったので、牛肉をメイン食材に抜擢し、多少値段が高くても思い切った分量で提供し、インパクトあるテレビCMで一気にブームをつくってしまった。

 テレビCMがなくても売れただろうが、前年同月2桁増までは売れたかはわからない。経営陣としてみれば、利益が細って赤字転落の黄信号が出ていたので、地道な改善をしてもなかなか売り上げが上がらない中、何としてでもとの思いがあっただろう。今年3月25日からうどんの商品単価を10円ずつ値上げしているが、影響はない模様だ。

 今後の課題としては、商品開発力を磨いていくのはもちろんだが、店舗数が全国700店ともなると、近所の「丸亀製麺」の店同士で顧客の奪い合いが起こっていたのも事実。そのあたりはトリドール側も認識しており、より新規出店の立地を厳選していくと共に、リロケーションや他業種への転換も必要となってくるだろう。

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「CoCo壱番屋」では6月1日から甘さも5段階で選べるようになった。

 もう1社付け加えると、「CoCo壱番屋」の既存店売上高と客数は、今年3月まで18ヶ月連続で前年を上回っていた。客単価は一昨年12月から直近の今年5月まで毎月上がっている。今年4月の既存店売上高は前年同月が122.5%と良すぎたため、93.2%と冴えなかったが、5月は99.9%とかなり戻してきている。経営する壱番屋・広報によれば、「一昨年9月にグランドメニューを改定し、海の幸カレー、チーズインハンバーグカレーなど7品を追加した効果が大きい」と、新商品群が寄与しているという。

 それに加えて、「昨年4月には「アメトーーク!」という番組で、「CoCo壱番屋芸人」が特集されて、そのインパクトが大きかったです」と、テレビ番組の多大な影響力に驚いていた。特に、「CoCo壱番屋」ではソースがビーフ・ポーク・ハッシュドビーフ選べるだけでなく、ごはんの量、カレーの辛さ、30種以上のトッピングも選べて自分好みのカレーが食べられることが、「アメトーーク!」放映後はよく浸透するようになり、番組中で出演芸人が披露したトッピングを真似する顧客も増えたと聞く。

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「CoCo壱番屋」のテーブルには無料で辛さを調節できるスパイスに加えて、無料で甘さが調節できるソースも置かれるようになった。有料の辛さ、甘さ調節と併用できる。

 注目されるのは、6月1日から甘さも選べるシステムを導入したことで、ハチミツを使った「とろ~り甘くなるソース」によって、1甘(21円増し)から5甘(105円増し)まで、甘くすることができる。これによって辛さが苦手な人や子供でも利用しやすくなった。追加料金を払って10辛までできる辛さも使って、2辛と1甘といったような注文もできるそうで、味に幅が広がった。この甘さも選べるシステムにより、再び快進撃なるかどうかといったところだ。CMにしろ、TV番組にしろ、マスメディアの力はやはり大きい。おいしいものをつくっていれば自然と顧客は来るとも限らず、時にはメディアに打って出るのも必要なのである。

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