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2015年2月23日(月)17:17
ちょい飲みできるミニストップ「シスカ」、カフェとデリカテッセンとグロッサリーを融合。
コンビニの外食化はもう止まらない!利便性からくつろぎの場へと変貌中。(5-5)
記事への評価
取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年2月22日執筆
古くはおでん。最近では唐揚、いれ立てコーヒー、そしてドーナツと、コンビニは外食の領域に深く切り込んできた。弁当も内容の改善が年々進み、持ち帰るだけでなくその場で食べたい顧客が増えて、イートイン設置が当たり前になってきている。それだけではなく、飲食店との融合でつくり立てを提供する店や、飲食スペース専門の店員が勤務する店まで登場してきた。利便追求で伸びてきたコンビニが、今、ゆっくりと飲食していってほしいと一様に言い出してきている。その背景にどのような消費者がいるのか。外食にとってどこまで脅威なのか。取材してみた。(5回シリーズ)
ミニストップの新業態「シスカ」1号店の日本橋本町店。お酒もイートインで飲め、店員が盛り付けサービスも行う。今月末に東京都内に2号店オープン予定。
ミニストップは、2014年9月29日、JR新日本橋・東京メトロ三越前の両駅に近い日本橋本町に、女性をターゲットにした新業態「cisca(シスカ)」1号店をオープンした。「できたて」、「健康感」、「つながり」をコンセプトとした、カフェとデリカテッセンとグロッサリー専門店を融合させた新しいタイプの店舗である。店舗面積104.79㎡のうち売場面積は86.67㎡。17席のイートインを有しており、9席に電源コンセントが設置されている。商品アイテムは約1200あり、うち酒類が約200と豊富に揃っている。
食に特化され、ヘルシー志向のOLとサラリーマンがターゲット。
しかも通常のコンビニでは認めていない、お酒をもイートインで楽しめるのが大きな特徴だ。つまり、コーヒーのみならず、店内で購入した缶ビール、缶チュウハイ、ワインなどを、イートインにて味わうことができる。そのため、"ちょい飲み"できるコンビニとして話題になっており、角打ちのニュースタイルとしても注目されている。
ブランド名"cisca"は、city small cafeに由来。ミニストップでは2005年よりカフェ業態の検討を始め、翌06年にはサンドイッチやおにぎりをコーヒーと一緒にゆっくり座って楽しめる、セルフカフェ方式の「ミストカフェ」を実験店としてオープン。カフェ需要、コーヒー需要が隠れていることを認識し、東北地方でいれ立てコーヒーの実験を始めた。そして、09年10月に全国の「ミニストップ」にていれ立てコーヒーの展開をスタートして、今日にいたるコンビニのいれ立てコーヒーブームの先駆けとなった。
主力のコーヒーは150円。スムージー、スープも人気。
さらに、ミニストップではテイクアウトコーヒーの拡大、女性客のライフスタイルの変化に対応して、「シスカ」開発へと進んだ。コンビニの延長線上でなく、女性客が望むものは何かをゼロベースから考え直し、カフェ+デリカテッセン(野菜を中心としたヘルシーな食事)+グロッサリー専門店を機軸とする、業態に到達したとのことだ。
元々、ミニストップでは、創業当初からイートインを設けて、コンビニとファーストフードが融合したコンボストアーとしてスタートしている。これは、同社が1980年創業と、コンビニとしては後発にあたり、他社と同じことをしていたのでは差別化にならないとの判断からであった。当時、小売で最も勢いあるコンビニと、飲食で最も勢いあるファーストフードを組み合わせれば、最強の店ができるとの期待があった。
「シスカ」店内。
ちなみにセブン-イレブン・ジャパンは1973年の創業で、翌74年東京・豊洲に1号店が誕生。ローソン、ファミリーマートも間もなく1号店がオープンしている。既に80年には「セブン-イレブン」の店舗は1000店に達し、破竹の勢いで伸びており、前年に東証2部に上場、81年には東証1部に指定替えとなっている。
しかし、最近は新しい店舗には必ずと言っていいほどイートインを設置するファミリーマートをはじめ、他のチェーンもイートインを強化しており、コンボスタイルがミニストップ独特の戦略とは言えなくなってきた。そこで、さらに前に行って新しいマーケットを切り拓こうという意図が、「シスカ」開発の背景にある。
ワインとおつまみの売れ筋。
「シスカは昼間の人口の多いところでの出店を考えています。ターゲットのメインはオフィスで働いている20~40代の女性、サブが同じ男性ですね。今までミニストップが得意だった郊外型ではなくて、都心型の展開をしていきます。店舗の大きさも恐らく1号店が一番大きくなると考えていまして、もう少し小さい店で広げていく予定です」(ミニストップ コーポレートコミュニケーション部秘書・広報チーム、山盛雅美さん)。
「シスカ」は街で女性が求めているものをリサーチし、カフェ、コンビニ、デリカテッセン、グロッサリーはそれぞれあるが、そのエッセンスを組み合わせた店はないといった気づきから生まれている。
カロリーが通常のドーナツの半分という蒸しドーナツはしっとりとした食感でお土産にも売れている。
食に特化した店で、文房具、洗剤のような生活用品、雑貨は置いていない。マスクだけは要望があって置くようになったが、ATMもないしコーピー機もなく、宅急便の扱い、収納代行も行っていない。営業時間も7時~22時(土曜は17時)と夜遅くは閉まっているし、日曜・祝祭日も開いていない。決して便利な店ではなく、通常のコンビニとは大きく品揃え、営業形態が異なっており、もはやコンビニのカテゴリーで括れないほどだ。
一方で品揃えにはこだわっており、コーヒーはドリップ抽出、エスプレッソ抽出に加えて、ミルク系メニュー、紅茶をラインナップ。また、野菜や果物のみで作った3種類のスムージー(各300円)が人気だ。
冷えたグラス、盛り付け、ボイル、水割りセットを提供。
フードは、野菜や魚介類をベースにうま味を引き出した、具材がゴロゴロと入ったスープ(各300円)や、発芽玄米を使用したおにぎり、全粒粉を使ったサンドイッチ、通常のドーナツよりカロリーを半分くらいに低減したヘルシーな蒸しドーナツなど、健康的なものを取り入れている。特に蒸しドーナツは、これを目当てに来店する人も増えており、「シスカ」では力が入っている自信の商品だ。
グロッサリーに関しては、ワイン、お酒のおつまみになるチーズ、缶詰、菓子類など、友達、同僚に話したくなる商品を揃え、売場からお気に入りを見つけ出す喜びを提供すると共に、友達、同僚、家族へのプレゼント需要の喚起も狙っている。
イートインコーナー。
イートインの利用は、ランチタイムは忙しい人が多いため、持ち帰りが主流となるが、それでも2回転くらいするほどで、よく活用されている。むしろ、男性がよく使っているようで、打ち合わせで喫茶店として使ったり、パソコンを広げて仕事をしたりといった具合だ。
夜にお酒を飲むのは、圧倒的に男性。最初はワインのコルクを開けたり、冷えたグラスを提供したりといった簡単なサービスにとどまっていたが、顧客の要望により、盛り付けサービス、缶詰や惣菜をボイルしてくれるといった飲食店並みのサービスまで行うようになった。お酒の品揃えにこだわりがあり、居酒屋ではあまり飲めない商品も多数あるので、つい通いたくなる人も増えて不思議ない魅力がある。フードのレベルも高い。
盛り付けサービス例。
「シスカは徒歩圏のお客様を想定していまして、駐車場は考えていません。お車で来る人がまずいらっしゃらないので、お酒も出せます。今までも弊社はファーストフードをやってきたので、お客様とのコミュニケーションは上手に取れていると思っています」(前出・山盛さん)。
カキの缶詰はボイル、盛り付けしてもらった。
「シスカ」でお酒を買い、缶詰をボイルしてもらうなどして飲んでいると、同じ値段でこれだけのお酒と料理を飲食店が出せているのかなとふと疑念がよぎった。無理に勧められることもないし、自分のペースで飲めるメリットもあるだろう。"ちょい飲み"ができるコンビニ「シスカ」の登場は、角打ちの復権を加速させ、居酒屋の顧客を取り込む新たな勢力が伸張してくる予兆なのかもしれない。
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