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2015年2月20日(金)16:32
働く女性に人気「ナチュラルローソン」。カフェ利用を意識したイートインでくつろぎ提供。
コンビニの外食化はもう止まらない!利便性からくつろぎの場へと変貌中。(5-4)
記事への評価
取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年2月19日執筆
古くはおでん。最近では唐揚、いれ立てコーヒー、そしてドーナツと、コンビニは外食の領域に深く切り込んできた。弁当も内容の改善が年々進み、持ち帰るだけでなくその場で食べたい顧客が増えて、イートイン設置が当たり前になってきている。それだけではなく、飲食店との融合でつくり立てを提供する店や、飲食スペース専門の店員が勤務する店まで登場してきた。利便追求で伸びてきたコンビニが、今、ゆっくりと飲食していってほしいと一様に言い出してきている。その背景にどのような消費者がいるのか。外食にとってどこまで脅威なのか。取材してみた。(5回シリーズ)
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コンビニの外食化はもう止まらない!利便性からくつろぎの場へと変貌中。(5-3)
女性顧客が5割を占める「ナチュラルローソン」はくつろぎをテーマに店づくりを行っている。(写真は荻窪五丁目店)
ローソンが2001年から展開している「ナチュラルローソン」。ゆったりしたナチュラルな演出と商品が特徴のコンビニで、イートインをコンセプトに明記している。現在は東京都23区を中心に首都圏で116店(2015年1月末現在)で広がっている。従来、コンビニが取り込めていなかった女性をターゲットとしており、顧客も女性が6割と多い。「美しく健康で快適な」ライフスタイルを身近にサポートする趣旨の店を目指していて、原材料にこだわった健康的な食材を中心に販売している。大部分が「食」に関する商品が並んでおり、化粧品、生活用品は独自色あるものの、雑誌、文具、モバイルサポート用品なども売っているが、通常のコンビニの売場に比べても目立たない。
イートイン利用率が高い、横浜ベイクオーター店。
また、業態との親和性の高さから、薬局とのコラボ店、病院内での出店が多く見受けられる。ドラッグストアを兼ねているケースでは、かぜ薬のような常備薬ならば24時間医薬品が買えるコンビニとして営業している店もあるということだ。商品の考え方として、合成保存料不使用を貫いている。惣菜は国産を優先的に採用し、特定保健用食品も生活習慣病予防の観点から積極的に取り入れている。米飯・調理パン・デリカ等のオリジナル開発商品は、ローソンの品質基準に準じている。
豊洲三丁目店イートイン。
通常の「ローソン」と共通の商品も多数あり、有機・無農薬・減農薬の野菜、果物も売ってはいるが、ごく一般のカップラーメンも売っていて、自然食品の店とは一線を画している。高級そうに見える店だが、価格は通常の「ローソン」とそんなに変わらないという。「利用者は働く女性が多いです。山手線の内側に店舗が多いのはそのためです。最近は、健康を気にする主婦や高齢者の来店も増えていて、それを意識した品揃えをしています。イートインに関しては、くつろぎをテーマにした演出、居心地の良い空間、快適なお買物でしていただくという店づくりの一つとして、強化していますね」(ローソン・広報)。
一食あたりのカロリーがきちんと表示されている。
「ナチュラルローソン」では、「ロハスキッチン」をテーマに、カウンター周りの演出を行っており、まるで家にいるかのような落ち着いた、自然な感じでの買物ができるように考慮している。もちろん、それはカウンター周りのみならず空間全てに及んでおり、ベビーカーや車椅子でも通れる広い通路、バリアフリーのトイレも含めて、セカンドハウスのような親しめてゆっくりできる空間が目指されている。
焼きたてパンも1つの売り。
すなわち、従来のコンビニにあった近くて便利という要素よりも、カフェのような店づくりがなされていて、そうした中でカフェ的なくつろげるイートインの設置も行われているのだ。また、外にパラソルを立てて、テーブルと椅子を置き、オープンカフェのような演出を行う店も多い。カフェに隣接し、一部カフェでもある業態と言えるだろう。店内で焼く焼きたてパンと、「ローソン」と共通のサービス「マチカフェ」のコーヒーで、イートインやオープンスペースに座って軽く小腹を満たしていく人も多い。但し、駅ナカのような立地やスペースによっては、イートインがつくられないケースもある。
「ナチュラルローソン&フードクルック」神宮外苑西店の店内。
飲食を展開する企業とのコラボ店も存在し、2012年12月にオープンした神宮外苑西店は、「代々木ビレッジ」で知られるクルックとコラボレーションした店だ。クルックは日本各地の生産者と都市で生活する人々をつなぐ「Food Relation Networkプロジェクト」を展開しているが、そのリアル店舗1号店でもある。この「ナチュラルローソン&フードクルック」は、全国の生産者から届く新鮮な野菜、肉、スタッフが探したこだわりの調味料、ワイン、その場で精米するお米、野菜がたっぷり摂取できる惣菜などが買える、「食」のセレクトショップ。人気中華料理人・五十嵐美幸氏監修のデリ「フードクルック・デリ」、注文を受けてから調理するジャパニーズフォーなど、女性の視点からの商品が揃っている。広いイートインも設けられ、カフェとしても利用が可能だ。
神宮外苑西店、「フードクルックデリ」。「美虎」五十嵐美幸シェフ監修。
課題としては、近年は「ローソン」も健康を気にした商品を強化してきているので、「ナチュラルローソン」との商品とどう差別化するのか、今後難しくなっていくかもしれない。「ローソン」にもイートインは増えている。「ローソン」はあくまで利便性優先ならば、いっそ「ナチュラルローソン」はスペースの半分はカフェそのものといったくらいに差別化されてもいいような感もある。商品の差別化については、「フードクルック」のような考え方をもっと取り入れる方向もあるだろう。「100円ローソン」が全体の2割260店、「ローソンマート」39店全部を閉店し、そのうち約100店を、「ローソン」または「ナチュラルローソン」に転換する動きも始まった。カフェの需要を取り込む「ナチュラルローソン」が、首都圏のビジネス街でさらに存在感を増してきそうだ。
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