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2015年2月19日(木)16:18
スリーエフのファーストフード強化型業態グーツ。オープンテラス風店舗が受けて本格展開へ。
コンビニの外食化はもう止まらない!利便性からくつろぎの場へと変貌中。(5-3)
記事への評価
取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年2月18日執筆
古くはおでん。最近では唐揚、いれ立てコーヒー、そしてドーナツと、コンビニは外食の領域に深く切り込んできた。弁当も内容の改善が年々進み、持ち帰るだけでなくその場で食べたい顧客が増えて、イートイン設置が当たり前になってきている。それだけではなく、飲食店との融合でつくり立てを提供する店や、飲食スペース専門の店員が勤務する店まで登場してきた。利便追求で伸びてきたコンビニが、今、ゆっくりと飲食していってほしいと一様に言い出してきている。その背景にどのような消費者がいるのか。外食にとってどこまで脅威なのか。取材してみた。(5回シリーズ)
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小田原厚木道路、平塚パーキングエリア下りで営業する、グーツエキスプレス。
神奈川県を地盤に首都圏1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で、563店を展開するスリーエフでは、ファーストフード強化型コンビニの「グーツ」を積極的に展開し始めている。今年に入って、去る2月13日には、大規模再開発で注目を集める武蔵小杉に出店。さらに、2月27日には、みなとみらい21地区にも出店する。これらの出店によって、「グーツ」は8店舗となった。
「グーツ」1号店は横浜市内日本大通りに2004年、いちょう並木通り店をオープン。2009年10月には中目黒店が開いた。昨年は、5月に神奈川県庁前店、7月に銀座店がオープンしている。高速道路のパーキングエリアにも、「グーツ エキスプレス」のブランド名で、2008年7月に狭山PA店、2011年5月に平塚PA店が誕生し、盛業中である。
グーツ銀座店では入口付近にイートインスペースを有している。
既に10年ほど前から実験的に取り組んできた業態なのだが、昨年から出店の加速が始まっている。東京都心の銀座に出したのは、象徴的な意味合いがある。「グーツ」の店名の由来は、お鍋がグツグツ煮える音とおなかがグーッと鳴る音のイメージから来ており、「食」、特に弁当、おにぎり、惣菜パン、サンドイッチ、コーヒーなど、すぐに食べられる、スリーエフによればファーストフードに特化したコンビニだ。
通常のコンビニの基本は、工場でつくったファーストフードを店内で提供する。一方で、「グーツ」では店内の調理場でつくった商品を提供しており、つくり立て、或いはつくり立てに近いファーストフードを買い求めることができる。そのため、スリーエフではインストアファーストフード特化型と称している。デパチカの弁当や惣菜パンのコーナーが、カジュアルかつリーズナブルになって、市中に展開されているような業態だ。店内から調理風景が見えるオープンキッチンが、シズル感を誘う。
弁当は店内調理のつくり立てを提供。
しかも、横浜のいちょう並木通り店に言えるのだが、オープンカフェのような店の雰囲気を持っており、印象として飲食店に極めて近似している。実際に、いちょう並木通り店では、店の外にテーブルが置かれていて、晴れた日には歩道にパラソルが広がり、店内で買い求めた商品を、オープンカフェで開放感ある気分で楽しめる。
このオープンカフェは、中目黒店や新規オープンした武蔵小杉店にも設置されているが、店内に飲食スペースをつくるのは、現状あまり積極的とは言えない。銀座店では出入口付近に6席ほどのイートインが設置されているものの、申し訳程度である。パーキングエリアの狭山店と平塚店にも、車の移動中にほっと一息、コーヒーブレイクしたい人のために、イートインが設けられている。
圏央道狭山パーキングエリア内回りにあるグーツエキスプレスではイートインが充実。
つくり立てを提供するコンセプトと、オープンカフェが好評なのを考えると、立地にもよるが、店内により本格的な飲食スペースが登場するのはもはや時間の問題とも思える。今後どう進化していくか、興味深い業態である。スリーエフのホームページによれば、「ストアコンセプトは、従来のコンビニに不足している"出来立て"感の訴求による、あたたかさ、和み、やすらぎを感じて頂ける店」とあり、内外装デザインもオープンテラス風の開放的な入口、間接照明の採用、コンセプトカラーによる全体コーディネートなどを、多摩美術大学との産学協同により、特に若い女性の感性を生かした店づくりに挑戦しているという。
グーツ銀座店外観。
スリーエフの金子昌司・広報課長によれば、「食べれる、しゃべれるのコンボスタイルではありません。外食進出はしていなくて、あくまでインストアファーストフード強化型のコンビニですね。メインになるのは、約12種類からテイストを選べるグーツコーヒーです。お客様が自分でブレンドできて、今日は軽いアメリカンでとか、やっぱり今日はゆったりとブラジルかなと、好きなコーヒーが選べるのがポイントです」と、選べる持ち帰りコーヒーがコアになっているとアピールした。しかし、ゆっくり座って休んでいきたい要望が多い立地によっては、座席をつくる選択肢もありということなのだ。
コーヒーはブラジル、アメリカンなどその日の気分で選べ、自分でブレンドもできる。
グーツコーヒーは、つくり置きではあるが、30分で常に入れ替えるので、新鮮なコーヒーが味わえる。価格は12oz(約360ml)で140円、アイスは160円(価格に関しては武蔵小杉店の商品を表示、以下同様)。シュガー、ミルクも数種類が用意されていて、カロリー控えめにしたい人はローファットミルクが選べる。フードは、手づくりおにぎりは、お茶碗約一杯分のご飯を使ったボリューム満点の爆弾おにぎりが人気。具材を挟んだサンドおにぎり、丁寧に握った三角おにぎり、唐揚やウィンナーや玉子焼が入ったおにぎりセットなどを販売。価格は108円~。
店内で焼く、焼きたてパンも売りの1つ。
弁当は、バケツタイプの容器になった箱弁をはじめ、彩り、バランスを考慮して店内で調理して提供。価格は460円~店内のオーブンで焼き上げる、香ばしい焼きたてベーカリーは、「グーツ」の売りの1つ。朝食向けの食事パン、グーツコーヒーと一緒に味わいたい菓子パン、店内で焼いたバンズを使った手づくりハンバーガーなどが楽しめる。価格は123円~。このほか、季節感、話題性を取り入れたスープ、食べ切りサイズのひと手間掛けた惣菜類を日替わりで提供している。価格は200円~
人気の爆弾おにぎり。
「グーツ」の場合は、売れ筋商品は全店共通ながら、各店で地域特性を考えた商品を売っている。たとえば、いちょう並木店や神奈川県庁前店では、午後3時頃になると弁当に代わってチーズケーキが並ぶ、狭山店では狭山茶や地元で有名なサイボクハムを使った商品を売る、平塚店では桜エビやシラスの入ったさつま揚げがヒットするといったように、臨機応変な売場づくりを行っている。
このような地域ニーズにこたえる機動力は、スリーエフのどの店にも見受けられる特徴だが、強豪チェーンひしめく首都圏にあって差別化がなされており、独特な存在感を放っている。「グーツ」の場合は飲食店に必要な要素をほぼ全て満たしてなおコンビニという、ギリギリの線を狙っている。しかし、既に一部では越境し、越境した部分を歓迎する顧客もいる事実がある。
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