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2015年2月17日(火)16:54
サークルKサンクス「K's CAFE」。コンビニとの融合で女性客、高齢者を取り込む。
コンビニの外食化はもう止まらない!利便性からくつろぎの場へと変貌中(5-1)
記事への評価
取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年2月16日執筆
古くはおでん。最近では唐揚、いれ立てコーヒー、そしてドーナツと、コンビニは外食の領域に深く切り込んできた。弁当も内容の改善が年々進み、持ち帰るだけでなくその場で食べたい顧客が増えて、イートイン設置が当たり前になってきている。それだけではなく、飲食店との融合でつくり立てを提供する店や、飲食スペース専門の店員が勤務する店まで登場してきた。利便追求で伸びてきたコンビニが、今、ゆっくりと飲食していってほしいと一様に言い出してきている。その背景にどのような消費者がいるのか。外食にとってどこまで脅威なのか。取材してみた。(5回シリーズ)
「サンクス晴海フロント店」に併設された「K's CAFE」。
昨年6月25日、サークルKサンクスが、東京・晴海にオープンさせた「K's CAFE」。「サンクス晴海フロント店」と共通の出入口を持つ、コンビニ併設型の店舗ながら、従来のイートインとは異なり、ゆったりと寛げる空間づくり、女性受けするおしゃれな内装、コンビニの商品とは差別化された独自のカフェメニューの展開で、注目を集めている。
料金はレジで先払いになっているが、コンビニのレジとは別に、カフェ専用のレジが設けられている。但し、カフェ専門の店員が勤務しているわけではなく、コンビニ店員がカフェの接客、調理、会計を兼務している。「サンクス晴海フロント店」の店員は、「K's CAFE 晴海フロント店」の店員でもあるわけだ。「K's CAFE」用の制服もあるが、「サンクス」店員で回している。なお、コンビニの商品を店内で食べたい時は、通常の「サンクス」に設置しているようなイートインコーナーが別の場所にあって、そちらで飲食する決まりになっている。
晴海通りに面し、ビジネス街に立地している。
「K's CAFE」の主たるターゲットは30~40代女性。コンセプトは"和モダン"で、店内は黒とうぐいす色を基調とした、高級感あるイメージで統一されている。「K's CAFE」ブランドのロゴマークも、古来より日本人が大切にしてきた「気」や「水」の流れを意識して、新しくも懐かしい印象のデザインとした。
元々は、サークルKサンクスの子会社で、エリアフランチャイジーとして愛媛県と高知県を中心に店舗展開してきたサークルK四国が、2008年より取り組んできたカフェ業態を全国展開へと採用したものだ。サークルK四国は現在7店を展開している。
各席にコンセントが付いている。
四国の愛媛、高知は、実は中京圏の名古屋市から岐阜市あたりまでの地域とその周辺部と並ぶ、特異な喫茶文化を持つ日本有数の喫茶が盛んな地域で、名古屋発祥のユニーグループに属するサークルKサンクスが、四国と東海の喫茶文化をどう融合して、新しい日本の喫茶スタイルを構築するのか。興味深いチャレンジである。
「K's CAFE」の全国展開には、サークルK四国の精鋭もサークルKサンクスのプロジェクトに参加し、共に戦略を練っている。晴海フロント店は、東京の1号店である。
パンケーキ。器の底にカスタードが。
当面は、関東、東海の両地域での拡大を目指すが、今期目標の関東、東海で計5店は、今年1月22日に名古屋市港区に出店した「サークルK港木場店」に併設されたカフェによって達成された。これが名古屋市内1号店である。まずは順調なスタートと見てよいだろう。
「K's CAFE 晴海フロント店」を訪れてみると、晴海通りに面し、「晴海アイランド トリトンスクエア」の道向かいにある高層ビルの1階という立地。すぐ近くにサークルKサンクスの本社がある。
晴海、勝どき、月島といった自転車で行ける範囲の周辺エリアは、高層マンションが増えているが、店の周囲に関してはオフィス街であって、休日、夜間に来店する人は少ない。なので、ターゲットとする30~40代女性が集まるような土地柄とは、ズレている感がある。
しかし、そこは会社側も承知しているようで、各席にはフリーで使えるコンセントが付いていて、パソコンやスマートホンが充電できるようになっている。つまり、モバイルで仕事をするビジネスマンを取り込もうとしているのだ。実際に、店内ではパソコンを開いて仕事をしている人をよく見掛ける。
和モダンをコンセプトとした内装。
メニューは、まずドリンクの種類が豊富だ。コーヒー・紅茶だけでも15種類あり、サイズもレギュラーとラージの2種類が用意されている。アイスもできるのは8種類。価格は「K's ブレンドコーヒー」、「K's ティー」のレギュラー250円、ラージ300円。アイスも値段は同じ。カフェラテとカプチーノはレギュラーで360円、ラージで410円と、かなり強気な設定だ。コーヒーは、セルフ式のカウンターコーヒーとは異なり、エスプレッソマシンを使っている。
抹茶ラテ、しょうがラテ、ほうじ茶などといったメニューもあり、和モダンを象徴的に表している。「クッキームーススムージー」(レギュラー410円、ラージ460円)など、スムージーが4種類。その他、ココア、オレンジジュース、りんごジュース、バナナジュースを揃えている。
「K's CAFE」の主力商品。パニーニは店内のオーブンで焼いて提供してくれる。
フードは、専用レジの横に、「K's CAFE」ブランドのパスタ、パニーニ、ホットサンドなどが用意されていて、顧客が好きなものを選んで、会計を済ませたら、店員が温めて席まで持ってきてくれる。コーヒー、紅茶とのお得なセットもある。商品は適時、新開発のものが投入される。
「K's CAFE」ブランドのカフェ用商品は、「サンクス」の棚にもコーナーが設けられ、持ち帰りだけではなく、「K's CAFE」店内でも食べることができる。特徴的なのは、パンケーキだ。粉砂糖で描いた菊のような文様も見事だが、表面のざらっとした食感に対して、中はふんわりとしており、容器の底には温まったカスタードが敷いてある。カスタードを絡めたパンケーキはミルキーで、前面に出すべき商品である。名古屋テイストの、小倉バターのパンケーキも販売されている。また、朝11時まではモーニングセットが販売されていて、コーヒー、紅茶、オレンジジュースのどれかに、トースト、サラダ、ゆで卵が付いて360円と安い。450円の小倉トーストのセットもある。
コンビニ店内にも「K's CAFE」の商品コーナーが設置されている。
サークルKサンクス・広報によれば、「時間節約型のコンビニに対して、 K's CAFEでは寛ぎの場を与える、時間消費型の店舗と考えています。椅子もクッション性を重視していまして、コンビニでのついで買いも期待しています」とのこと。都心部では20席程度、郊外では50席以上の広々とした店も検討していくそうだ。
名古屋の「サークルK港木場店」の場合は、周辺には高層マンション、団地が建ち並び、居住人口が多い。さらに近隣は工業地帯が広がり、大型車両の通行も多い立地。席数もテラスを含めて49席ある。どちらかというと、東京・晴海の店よりは新しく名古屋に出した店のほうが、今後の「K's CAFE」のスタンダードに近いと思われる。
「K's CAFE」松山大街道店(愛媛県松山市)。コンビニが併設されない純粋なカフェ。
「K's CAFE」のルーツは、サークルK四国が2003年に、コンビニの棚で、PB商品のサンドイッチやコーヒーを並べて、カフェに見立てたコーナーを展開したこと。サークルK四国の村上榮一社長は、それだけでは飽き足らず、2008年に愛媛県松山市に本当のカフェの実験店、「K's CAFE 松山大街道店」をオープンした。コンビニでない純粋なカフェだ。
村上社長はさらには、本業であるコンビニとの融合を目指し、2010年に「サークルK 松山インター店」をオープンしている。この店の成功によって、「サンクス晴海フロント店」をはじめとする全国展開につながった。
サークルK四国「K's CAFE」の旗艦店、よさこい咲都店(高知県高知市)。
サークルK四国によれば、「K's CAFEを併設することで、今までコンビニには来られなかった、主婦や高齢者の来店が増えています。相乗効果でコスメ、ストッキングなど女性向けの商材が160%ほど伸びた店舗もあるほどです。高齢者では毎日モーニングを食べに来れらて、ついでにコンビニで何か買って帰られる方も多いですよ」と、カフェ併設の効果を力説した。
課題としては、カフェのメニュー数が多いので、やはりコンビニ業務の片手間ではなかなか店が回らないという、オペレーションの問題がある。また、最近のコンビニのカウンターコーヒー、フードのレベルは非常に上がってきているので、商品に圧倒的な差がつきにくい。しかし、「K's CAFE」の今のラインナップでも、アツアツでまろやかなパンケーキのような、飲食ならではのできたての醍醐味が堪能できるメニューも、すでに開発されている。この特徴あるパンケーキのような商品が、ドリンクにも、モーニングにも、ランチにもとなってくると、外食にとって大変な脅威になるだろう。
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