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2015年2月12日(木)13:59 トレンド

外食のインバウンド&人材不足を解決!活躍する勤勉なネパール人留学生。

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取材・執筆 : 桐田政隆 2015年2月12日

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 皆さんはネパールと聞いてどのようなイメージを持っているだろうか?多くはヒマラヤ山脈、エベレストといった印象が大半のはず。しかしじつは今、外食業界がぜひ注目したい国でもある。なぜなら業界が抱えるインバウンドへの対策、また慢性的な人材不足の解決策において、ネパール人スタッフの活用が大きな近道の一つになるかもしれないからだ。その理由は、在留ネパール人は基本的に日本語を学ぶために来日し、かつ英語を話せて読み書きできること。そして宗教や国民性が日本人に非常に似ていること。そこで今回は、在留ネパール人のサポートを行い、また日本の飲食店に人材派遣などを行っている「特定非営利活動法人 ネパールナマステ協会」理事長、高野行男氏にネパール人スタッフ活用のメリットについて話を伺ってみた。

ネパール人スタッフ.png
飲食店で活躍するネパール人スタッフ。

 まずネパールナマステ協会は、ネパールと日本両国の人的交流、経済、文化交流。またネパール人への生活支援及び日本語教育と、日本人へのネパール語教育事業。また両国の友好の発展を目的として設立された。そして具体的には、日本に留学に訪れるネパール人が同協会に在留登録を行い、日本での生活相談やサポートを行っている。その設立者が高野氏である。

高野さん.png
特定非営利活動法人 ネパールナマステ協会 理事長 高野行男氏

 高野氏は1988年に世界中の輸入ビールを扱う、「ビリー・バルゥーズ・ジャパン」を設立。現在も代表を務め、都内やカトマンズには直営店の「ビリー・バルゥーズ・ビア・バー」を営業。他にも商業環境開発のコンサルティングや運営も行っている。またそれ以前にアマチュアボクサーだった高野氏は、1997年にネパール初のプロボクシング発足に協力すべく、プロモーターとして同国を訪れた。ちなみにネパール王室と日本の天皇家は'60年代から王室同士の付き合いがあり、国交も良好。そうした流れもあり、'90年代に入るとスポーツや文化交流もより盛んとなった。

 こうしてネパールでの滞在を通じ、ネパール人の性格が勤勉で、日本人に非常に似ている国民性を知り、自身が経営するビアバーにネパール人留学生を雇い入れた。高野氏は、「ネパールは部族国家で、宗教は仏教系のヒンズー教。かつてカースト制度もあり主従関係がはっきりとしていて、日本の先輩と後輩の関係にも非常に似ている。そしてボスは絶対的な存在で、必ず付いてきてくれます。そうした面でも、ネパール人は他のアジア諸国の労働力を頼るより、はるかに頼れる人材だったんです。また日本に留学するネパール人のほとんどが日本語を勉強することが目的。現在、ネパールでは日本語を話せるようになり、日本で就職してクレジット・カード(銀行信用力)を持つ、つまり先進国の日本で社会的地位を築くことが、とてもステータスで、ブームのようになっています。また今日のネパール人留学生は100%英語を話せます。うちのビアバーは世界各国のビールを販売するので、異国情緒があって日本語と英語を話せる外国人のスタッフがいたらいいな、と思っていました。そして真面目なネパール人はまさに格好の人材だったんです」。

 そしてネパール人に対して、とても印象的だったことがあるという。「東日本大震災直後、私が管理していたホテルでは中国、フィリピン、ベトナム、それにネパールのアジア人が働いていました。すると震災が起きた翌日、ネパール人以外は皆、私に「給料を1.5倍にしないと帰国する」と言ってきました。こちらだってそんな条件は飲めませんから、断りましたが、ネパール人は「ボスの下でこれからも働けるなら、給料は上がらなくていいし、帰国もしない」と言ってきました。もちろん他の国のように、簡単に帰国して再来日できない事情もあるでしょうが、ネパール人は信頼関係が築ける真面目な国民性を持っています」。ちなみにネパールは基本的に海外に長期滞在する際は、学生ビザでないとおりないそう。また今日の在留外国人ではネパール人は第7位(3万人)だそうだが、国別の犯罪率では142番目だという。


無料アルバイト研修会の様子。日本でどのように働くか勉強した。.png
無料アルバイト研修会の様子。日本でどのように働くか勉強した。

 話は現在の日本における深厚な人材不足に移る。「経済、産業の発展にはマンパワーこそが全てなのは、日本も他ではありません。ただ現在日本人の平均年齢は約49才。ベビーブームが起こることはそうも考えられない高齢化社会で、特に外食業界は2020年の東京五輪までに根本的な人材不足の解決から、英語を話すことができる人材を強化していくことが求められています。するともう時間はありませんし、マンパワーを輸入するしかないわけです。ただ国ごとに文化がありますし、すべての外国人労働者と文化を共有することなんて無理な話。それならなるべく、2020年までに日本の文化や社会に適した労働者を育てカスタマイズしていくしかありません。そうした場合、日本語と日本の文化を学ぼうと訪れ、かつ英語の読み書きもできるネパール人の労働力は最も可能性があると思うんですよ」。

 そして高野氏は日本に労働力を提供してくれるなら、日本という外国の地で安心安全に生活できる環境作りを行い、しっかりとギブ&テイクの関係を築かなければいけない。そうした思いのもと、2014年にNPO法人のネパールナマステ協会を設立。ネパール人留学生はここで在留登録を行い、生活相談や仕事の紹介などを受けることができる体制を整えた。例えば現在、山手線内に暮らす者だけで1700人以上のコミュニティがあり、高田馬場にある同協会では毎日勉強会やバイト紹介を行われている。また登録者には皆、協会会員カードを持たせている。そのカードには街で警察に職務質問などを行われた際、協会に連絡してもらう記載があったり、無用なトラブルを回避する役割もあるという。また日本語学校と連携を図り、出席状況や授業態度などの確認もしている。さらに「日本では絶対に自転車に乗るな」といった、普段の生活の細かいアドバイスも行っている。これはやはり外国人は警察に盗難の疑いがかけられやすいためで、言葉が通じない状況ではすぐに出入国管理局へ送られて、国外退去という例も少なくないからだ。

 またネパール人を雇う側にも、労働条件をしっかり確認してもらわないといけないと話す。「例えば外国人労働者はラブホテルで働けない、といった法律があります。つまり清掃業で請け負った企業は、外国人労働者をラブホテル清掃に派遣したりはできません。ただこうした法律を企業側も外国人労働者も皆が理解しているわけではなく、過去にはこうした違反が見つかって国外退去になるケースもあります。ですから、協会では雇う側にも労働環境や法律を確認してもらい、ネパール人を採用してもらうことにしているんです」。

横浜で行われた国際流しそうめん大会。.png
横浜で行われた国際流しそうめん大会の様子。

 話は変わるが、高野氏は18~25才にかけてカナダ、メキシコ、アメリカ 中南米を放浪していた。'80年代にアメリカでバイト先を見つけると、こんなことを言われたという。「お前は猿マネの得意なジャップだ。バイクもテレビも車も日本はそうやって大きくなってきたんだろ? ならばお前もアメリカ人をコピーしろ。そして生きる場所を探すんだ」。こうした海外での体験から、日本におけるネパール人をはじめとした、外国人の気持ちがよくわかるという。

 「ただ僕もネパール人に対して同じようなことを言ってます。先進国で仕事をするには絶対にナメた考えで働くな。ネパール人であるプライドはそのままに、日本人をまずはコピーしろ。日本人の倍働くやり方で、日本での自分達の在り方を作れ。その代わり、俺がそのチャンスや信用を日本人に伝える」。詳しく聞くと、前述の日本での細かい生活相談では、まずはトイレの使い方からはじまり、体臭の指導までするという。

 「入浴してるしてないが理由ではなく、ネパールは香辛料を多く食べるので体臭がきついんです。すると飲食店などの採用では敬遠されるでしょう。でも一カ月ほど香辛料を食べず、日本食で過ごすと体臭がしなくなります。こうした指導もネパール人は皆、聞き入れてくれるんですよ。またおかげさまで今まで雇用していただいた会社では、今後もネパール人を受け入れたいと言っていただいています。飲食店や居酒屋のキッチンなどでも、ものすごく真面目に働くと好評ですよ」。また現実的に指導する一方で、優しい心も覗かせる。「日本ではネパール人である事を一旦忘れろ!、とは言うけど、自国のいいところのプライドは絶対に忘れるなとも言います。また雇っていただく側にも言いたいのは、ちゃんと働く以前に格差はあっていい。ただ成果に対し正当な評価をして欲しいのです」。

 そして最終的には、ネパール人留学生がメイド・イン・ジャパンの素晴らしいサービス、おもてなしの文化を習得して、世界に発信してもらいたい。「これが"外国人日本文化おもてなし広報宣伝ネパール人部隊"構想です。こうしたネパール人は日本に限らず、世界で活躍してもらいたい。またそんなネパール人が増えたら、自ずと日本の価値が高まるでしょう?」 こうした視点から見ても、勤勉で日本人と意志疎通しやすく、しかも日本語と英語が話せるネパール人、またそれをサポートするネパールナマステ協会が、今後外食企業の人材戦略における重要なマンパワーとして、大いに注目を集める存在になるかもしれない。

■NPO法人ネパールナマステ協会
HP:http://namastejapan.org/
facebook:https://www.facebook.com/namastejapan.org

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