スマートフォン版のフードリンクニュースを見る

RSSフィード

トレンド

フードリンクレポート

2015年1月29日(木)14:38 トレンド

"デコ鍋"で、多様な鍋ニーズに応える居酒屋が増加。

~多様化する鍋ニーズ~一人鍋から女子会鍋、贅沢鍋まで(5-2)

記事への評価

  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
0.0

取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年1月22日執筆

キーワード :   

 鍋の需要が多様化している。定番化している忘年会、新年会の鍋とは別に、牛すき鍋を先導役に一人鍋が急増。女子会、カップル向けの鍋も、菌活、腸活のような新しい考え方を取り入れたり、見た目の楽しさを重視したデコ鍋が話題になったりと、変化している。また、脱デフレの流れの中で、フグ、エビ、カニなどといった高級海鮮や牛肉を使った、一捻りを加えた贅沢鍋が、トレンドに敏感な顧客層に人気を博すといったように、今年の鍋は賑やかさを増している。(5回シリーズ)


DSCF2019-001.JPG

「よござんす」が今シーズン提案した「七福神トマトデコ鍋」。食材を使ったデコは全て手づくり。尾頭付きの真鯛がまるまる一匹入っている。


 思い思いのキャラクターをモチーフにして、食材を駆使したデコレーションを鍋に表現。見た目も楽しい、「デコ鍋」がインターネットの料理投稿サイトを中心に流行っている。飲食店でも、このチャンスを逃すまいと「デコ鍋」に挑戦。マスコミの話題をさらう店が出現している。東京・浜松町、芝大神宮のほど近くに残る昔懐かしい路地にある、創作料理居酒屋「よござんす」では、今シーズンの新しい試みとして、昨年11月より「七福神トマトデコ鍋」を発売。2日前までの予約制ながら、週に1組か2組は出る評判の鍋となっている。


DSCF2118-001.JPG

築70年の古民家長屋を改装した「よござんす」。系列店は浜松町、新橋、神田に計4店。


 「10月に考案しましたが、商品として難しいという話になって、本当にできるのか。試作を繰り返しましたね。オーダーが入ると、デコ鍋に掛かり切りとなって、これだけで3040分を費やしてしまいます。それで予約制にしているわけですが、ご注文されたお客様は、お鍋が出てきたら、おーっと声を上げて、まずスマホやデジカメで一斉に撮影されています。テレビ局の取材も2社入りました」と、横山玲亜店長。最初はテレビの影響もあって、カップルや女性のグループがオーダーしていたが、今は中年の男性ビジネスマンのグループが、面白いじゃないかとよく注文するという。


DSCF1996-001.JPG

「よござんす」店内。


 「よござんす」では7種類の鍋を出しており、ちゃんこ、もつ鍋、水炊きなどといった定番の鍋が年末、新春の宴会シーズンには、誰の舌にも無難だということで主流になる。一方、デコ鍋は準備に手間と時間がどうしても掛かるので、出過ぎても現場が回らなくなってしまう。繁忙期が一段落し、今くらいの注文の頻度がちょうどいいくらいである。


 同店はビジネス街の立地なので、顧客の89割が男性。年齢層は20代から60代までと幅広いが、人数比では中年が多い。女性やカップルは土日、祝日に目立ち、東京観光や劇団四季の「四季劇場」観劇の帰りに立ち寄る人が結構いる。


DSCF1992-001.JPG

「よござんす」吹き抜け。


 「立地が渋谷や新宿なら、もっと女子会ニーズでデコ鍋は出るでしょうが、反響がありましたし十分です」と横山店長は満足げだ。「七福神トマトデコ鍋」はお正月を意識したメニューで、ありがたい七福神がハンペンをベースに描かれている。神様の顔は、焼海苔、ズッキーニ、パプリカ、ナスのヘタ、ニンジンなどで見立てて全て手作業で作っており、食紅で目を描いたり、お米で眉やひげを表現したりと、細部に至るまで凝っている。


DSCF1990-001.JPG

「七福神トマトデコ鍋」の火をかける前の状態。金箔が散りばめられているのがわかる。


 「普通の料理とは違ってまず完成形の見た目から、何を使って描くかを考えましたね。具材がたっぷりで、真鯛が1匹まるまる入っている、縁起の良いお鍋です」と嘉藤正房料理長としても自信の作だ。価格は1人前1900円で2人前から。コースは4500円で、飲み放題が含まれている。


 「よござんす」の鍋のラインナップで、海鮮系はこの「七福神トマトデコ鍋」だけ。正月らしくおめでたい、鯛の尾頭付きも豪華だ。具材は、真鯛、海老、鮭、さつま揚げなどの練り物、白菜、モヤシ、キノコ類が入っている。景気付けに金箔も入っている。トマト鍋ではあるが、鰹節、コンブでダシを取っているので、スープは和のテイストが強く出ている。 真鯛、海老、鮭は刺身でも食べられる鮮度を誇っており、視覚的インパクトだけではなく味のほうもしっかりしている。シメは海鮮のダシがたっぷり染み出たスープで、雑炊にする。お酒は何でも合うが、特に日本酒、白ワインと楽しむ人が多いそうだ。


DSCF2068-001.JPG

魚は刺身でも食べられる鮮度の高さ。シメは雑炊にする。


 このほか「よござんす」では、ランチで8点出している800円の日替わりメニューの中で、冬のシーズンは一人鍋を提供して好調に売れている。特に寒い日はたとえばもつ鍋が18食と、ランチ全体60100食出るうちの23割を占める日もあって、以前に比べても一人鍋が定着してきていると実感している。巷の流行に敏感に対応し、新しい試みとして、デコ鍋、一人鍋にも果敢にチャレンジ。安易に他店の真似に走らず、オリジナルを追求していく「よござんす」の姿勢に、居酒屋の矜持が感じられた。


BbnTlOwCIAAH4fX-001.jpg

「三匹の台所」の「ぽかぽかみぞれお風呂鍋」。


 デコ鍋にチャレンジする飲食店は他にもある。神戸・三宮の女性に人気のある、創作ダイニング「三匹の台所」では、白熊がお鍋のお風呂に浸かっているかのように、大根おろしで表現した「ぽかぽかみぞれお風呂鍋」が、女子会で高い支持を受けている。料理投稿サイト「クックパッド」で検索すると、大根おろしでキャラクターを表現した、「大根おろしアート」の人気が高まっており、鍋に大根おろしで作った、白熊、ひつじ、猫、パンダ、うさぎ、雪だるまなどが浸かっている画像が多数投稿されている。黒い目などは焼海苔で、赤い口などは食紅で、茶色い色付けは醤油を垂らしてといったように、投稿者は工夫を凝らして家庭で「デコ鍋」を楽しんでいる。


deko鍋.png

ネコをモチーフにしたデコ鍋。「クックパッド」サイトの投稿より。


 「デコ鍋」は非常に手間が掛かり、大人数の宴会には不向きな面がある。しかし、少人数の女子会、デート、ファミリー、会社の内々の集まりなどでは、見た目の面白さ、可愛らしさがあって、場の雰囲気が大変盛り上がる。若い女性や子供には喜ばれる確率も高い。飲食店の集客が落ち込む真冬から初春のシーズン、「デコ鍋」で期間限定的にメニューのてこ入れをするのも、一考の価値があるのではないだろうか。


読者の感想

興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

この記事をどう思いますか?(★をクリックして送信ボタンを押してください)

興味深い
役に立つ
送信する
誰かに教えたい
  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

( 興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

Page Top