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フードリンクレポート

2013年11月17日(日)21:01 ランダムトーク

シンガポール人経営の日本料理店は正しくないのか?

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取材・執筆 : 安田正明 2013年11月17日執筆

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 おもてなしセミナーを開催したシンガポールで、同国人が経営するスタイリッシュな日本料理店「KINKI(きんき)」に行きました。マリナベイサンズを望む桟橋の2階にあります。エレベーターの中のコミカルな相撲レスラーのロゴが目を惹き、床には巨大な鯉が、壁にはメイド系コミックが描かれています。

 21時半に入ると、店内は約50席で3~4割埋まっていました。白人と若いシンガポール人ばかり。寿司カウンターではマレーシア人寿司職人が握り、バーカウンターではジーンズを履いた女性サーバーがドリンクを運んでいます。照明は薄暗く、窓からは輝くマリナベイサンズが見えます。

 フォアグラと貝柱寿司、フォアグラとウナギ巻き、ウナギと貝柱巻きなど、日本では見ないような寿司を食べてみようと注文しました。フォアグラは日本では「俺のイタリアン」がステーキと合わせて有名にした食材。温かいフォアグラと冷たい貝柱の不思議な食感。巻物は軽く天ぷら粉で揚げてからカットしてあり、こちらも温かい。

 文字で伝えると、「えっ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。私を含め同席した4名は皆、美味しいと賞賛しました。微妙に温かい寿司と冷たい白ワインがマッチします。日本でもバブル時代は海苔の裏巻き、カリフォルニア巻きが流行しましたが、それより進化しています。

 方や日本人が経営する日本料理店では、新しい店は日本と同様の、築地直送の鮮魚や、もつ鍋など九州料理を出して繁盛しています。しかし、顧客は日本人と、日本人が連れてきたローカルばかり。「KINKI」とは客層が全く異なります。

 今の日本は伝統的な日本料理を世界に認めさせようとしています。2007年、農水省が日本食認定制度を作ろうとした際、海外から「スシポリス」と揶揄され猛反発を受け、頓挫しました。しかし、今年2013年。再度、日本料理に造詣の深い学識経験者らを「食の伝道師」として育成し、世界に派遣しようとしています。「スシポリス」の二の舞にならなければ良いのですが。

 和食がユネスコ無形文化遺産に認定されようとしている中、日本人のおごった考えが出てくることが心配です。料理はその時代やその土地に合ったものに変化していくことが必要だと思います。2010年、伝統的フレンチが同じく無形遺産に登録されました。しかし、ポール・ボキューズ、ジョエル・ロブション、アラン・デュカスなど現代的な料理人が登場して変化を遂げ、今や現代フレンチが世界を席巻しているように思います。

 日本では、和風スパゲティがあり、トンコツラーメンがあり、ライスカレーがあり、他国料理を勝手に変化させてきました。自国の料理の変化にも寛容になるべきではないでしょうか。

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