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取材・執筆 : 安田正明 2012年8月19日執筆
シンガポールや上海で外食経営者を取材していてよく聞くのは、昔は家族経営の小さな食堂を営んでいた、という話。美味しさが評判になって店が増えて行った、と。時代を見る目、経営手腕、運など様々な要素も加わっての成功だと思いますが、経営者は自信を持って、味が良かったから成功したと語ります。
日本では最近、美味しいから流行っている、という話はあまり聞きません。成熟市場で競争が激しく、味のレベルが総じて高くなっているからです。また、ファーストフードなどで濃い味に慣れており、微妙な味が判別しにくくなった。加工食品などによる食品添加物の影響もあると思います。
焼鳥で例えれば、老舗はブロイラーを使って行列ができる。対して、新しい店は銘柄鶏を謳い文句に販促に金を掛けて集客する。お客様も美味しさ判断に自信のない方が多く、声の大きな方が美味しいといえばそれになびく。
10年ほど前から、使う食材のプレミアム性を打ち出ささいと、お客様は美味しいと感じてくれなくなった。各店の味のレベルが大差なく、お客様も味が判断できないなら、味覚ではなく、頭で美味しいに違いないと思い込ませざるを得ない訳です。
味覚で美味しいと感じさせ、それが評判になり、店舗数が増えるという流れは、日本ではもう起きないのでしょうか。今の日本は食材に頼り過ぎているので、揺り戻しで調理技術に目が転じるようになる気もするんですが。
小龍包の人気店「ディンタイフォン」。1958年、台湾で創業。1996年の日本進出を機に、中国、香港、韓国、シンガポール、インドネシア、マレーシア、米国、オーストラリアで展開しています。どの店も入り口にはキッチンがあり、そこで器用に小龍包を作る多くの職人達の姿が見える。誰に聞いても美味いと言うし、ランチやディナー時は行列ができる。こんな店は日本からは出ないのでしょうか。
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