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兵庫県は「受動喫煙の防止等に関する条例」が3月に制定されたのを受けて、3億円の予算を設け、分煙が義務化された客席面積100平方メートルを超える大規模飲食店を経営する、中小企業者向けに助成金制度をスタートさせた。補助率は2分の1、上限は250万円となっており、分煙設備を整えるにも資金が苦しい中小の飲食店には朗報である。
兵庫県庁。
兵庫県では3月19日に、全国で神奈川県に続き2例目の公共的施設における受動喫煙防止条例、「受動喫煙の防止等に関する条例」が県議会で可決されて成立した。官公庁、病院、学校、児童福祉施設などでは2013年4月から、飲食店を含む民間施設では2014年4月から施行されることとなった。飲食店では、客席面積が100平方メートルを超える大型の飲食店が規制の対象となり、分煙を義務化。当初の予定であった大型店と中小店を、客席面積75平方メートルで区切る分類より緩和されてはいるが、それでも県内にある約2万店の飲食店のうち、約4000店が条例によって規制されるという。
客席面積100平方メートル以下の中小飲食店は、喫煙も可であるが、分煙か、喫煙か、禁煙か、喫煙ポリシーの店頭表示が義務化される。ナイトクラブなどの風俗営業法の対象となる業態は、規模にかかわらずパチンコ店などと同様に、努力義務にとどめられている。
改善命令に従わない場合には罰則規定があり、30万円以下の罰金が徴収される。飲食店の場合、罰則規定は2014年10月1日から適用される。つまり、2014年10月1日までのこれから2年3ヶ月ほどの間に、兵庫県内の100平方メートルを超える客席面積を有する飲食店は、全面禁煙に踏み切る場合を除き、必ず喫煙室を設置する、間仕切りをする、エアカーテンを取り付けるなどの工事を行って、喫煙スペースのたばこの煙が禁煙スペースに漏れ出ないように、対策を講じなければならない。なお、喫煙スペースの面積は、店内面積の3分の2を超えてはならず、罰則の対象となる。
しかし、急に分煙のための設備工事を行わなければならないと言われても、資金的に厳しいお店も多いのではないだろうか。現に、兵庫県下の飲食店経営者に話を伺うと、「適用される期間までに何をすれば良いのか分からない。」、「すぐに施行されるわけじゃないから、最近は気にかけていなかった。どのくらいの費用をかけて行えばいいのか見当がつかない。」、「全店の分煙化を進めるとなると相当額の費用が発生する。その為の費用捻出は現段階では難しい。」など条例への理解度、また対応する為の費用を不安視する声が聞こえてきた。
そこで兵庫県では、中小企業者である飲食店や宿泊施設の管理者に対して、改修経費の負担を軽減する助成制度、「分煙設備整備事業」をスタートさせた。国でも厚生労働省が助成事業を行っているが、兵庫県のホームページに掲載があるものの、非常に検索がしにくく、県の助成金が始まったことを知らない飲食店が大多数であると推測される。
これは、中小企業信用保険法第2条第1項に規定する、中小企業者を対象とした助成金で、飲食店の場合には、資本金の額または出資の総額が5000万円以下の会社、あるいは常時使用する従業員の人数が50人以下の会社または個人ならば、助成を受けることが可能だ。
「受動喫煙の防止等に関する条例」が成立。
対象経費は、喫煙室の設置、間仕切り壁の設置などの分煙措置を講じるために必要な既存施設の改修費用である。補助率は2分の1で、補助金額は250万円が上限となっている。県の今年度の「分煙設備整備事業」予算は3億円となっており、申請者の金額の合計が3億円となった時点で打ち切りとなる。担当官は来年度以降も助成を継続する強い意思を示しているが、現状では未定である。
5月15日より受付を開始しているが、兵庫県健康福祉部健康局受動喫煙対策室施設相談係によれば、「今、まさに業界団体を通してPR活動を行っている段階で、問い合わせはちらほらとある。申請した事業者はないのではないか」とのこと。受付窓口は、神戸市は県庁の受動喫煙対策室施設相談係、その他地域ごとに、芦屋、宝塚、伊丹、加古川、明石、加東、中播磨、龍野、赤穂、豊岡、丹波、洲本の健康福祉事務所となっており、工事開始前に事業計画書を提出しなければ、助成は受けられないことに注意したい。
・国の補助金とのダブル申請で4分の1の費用で分煙対策ができる。
業界団体に入っていない飲食店にとっては、県が分煙に対して支援策を取ってくれるのか、まだ情報が周知徹底されていないが、いずれにしても、たばこを吸う人にも、吸わない人にも、気持ちよく過ごしてもらえる店舗環境作りは、お客様満足・売上アップにつながる重要な設備投資である。
国のほうでも、厚生労働省が飲食店や旅館業の中小事業主を対象に、費用の4分の1、上限で200万円を助成する制度をスタートさせている。兵庫県とは別途申請しなければならないが、中小の飲食店経営者は、県と国の両方の補助金を使って、軽い負担で分煙対策を行うことも可能である。
そこで、仮に200万円の設備投資で分煙対策を進めて、県と国の両方から補助金が入ったとすると、県から2分の1の100万円、国から4分の1の50万円、計150万円が助成され、自己負担は4分の1の50万円で済むということになる 。工事にかかる経費が4分の1で済むのなら、モチベーションも上がるのではないだろうか。
公共的スペースでの喫煙に関する規制は世界的な潮流であり、今後、条例の先例となった神奈川県や今回の兵庫県が、必ずしも特殊な環境だという時代ではなくなる可能性もある。
飲食店は他店との差別化のためにも、いち早く有利な助成金を活用し、万全の分煙対策を進めて、顧客満足度アップに取り組んでみてはいかがだろう。
・厚生労働省 『受動喫煙防止対策助成金制度のご案内』
・兵庫県 『分煙設備整備事業について』
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