フードリンクレポート
定額料金で期限内なら使い放題というサブスクリプション方式のビジネスモデルが、広がりを見せている。元々IT関連企業で盛んで、定額制の音楽配信、ソフトウェア使用などが一般化している。他のビジネスにも広がっているが、今年あたり外食でも見るようになってきた。では、この定額制、サブスクリプションサービスにはどのようなうま味、メリットがあるのだろうか。実践している企業に取材してみた。(5回シリーズ)
野郎ラーメン西早稲田店(出典:同店Twitter)。
ボリュームたっぷりのがっつり系ラーメンチェーン「野郎ラーメン」を展開するフードリヴァンプ(本社・東京都世田谷区)では、昨年11月1日にスマートホン向けにリリースした「野郎ラーメンアプリ」にて、1日1杯月額8600円の定額で提供する、サブスクリプションモデルのサービスを開始した。
対象となる商品は、看板商品3種の「豚骨野郎」(780円、税込以下同)、「汁無し野郎」(830円)、「味噌野郎」(880円)。「豚骨野郎」ならば12杯食べれば元が取れる。
オリジナルの会員カード「ブタックカード」や他のクーポンとの併用もできる。「ブタックカード」では麺増し、野菜増し、小ライス無料、ミニビール無料などのサービスを同時に受けられる、8大特典があるカード。
「ブタックカード」は指定のラーメンを、指定のトッピングで注文し、何回か通わないと得られないが、定額制と組み合わせれば、相当お得に食事をすることができる。なお、現在は新規募集を行っていない。
定額制により店員と顧客のコミュニケーションが深まった。
食べ盛りの学生や働き盛りの社会人に、おなか一杯になっていただきたいという想いを込めたのが「野郎ラーメン」の名称。その想いを実現したく、もっと気軽にもっと安く、"野郎世代"におなか一杯になってもらえるように、「1日1杯野郎ラーメン生活」を提案したとのことだ。
年齢制限があり、18~38歳のフードリヴァンプが定義する"野郎世代"ならば、首都圏にある「野郎ラーメン」16店で、定額サービスを受けることができる。
また、12月1日にはサブスクリプションモデル第2弾として、月額300円で好きなトッピングが無料となる「野郎まんぷく定期券」をリリースした。こちらもアプリにてのサービスで、指定のページを提示すれば適用される。
無料になるのは、麺増し、野菜増し、半ライス、味玉、海苔増し(5枚)のうちの1つで、100~150円相当である。
野菜増しを注文すれば450gとなり、農林水産省が提唱する1日の野菜摂取量目標の350gを軽く超えることができる。
なお「野郎まんぷく定期券」は、「1日1杯野郎ラーメン生活」や他のクーポンとの併用はできない。
ボリュームたっぷりの豚骨野郎。
同社・広報担当の黒木勝巳氏によれば、「定額サービスが広く報道されることによって、新規のお客様が増えた」と、実際にアプリに登録した人から8600円の売上を確定する以上に、大きな広告効果があり、かつて利用していたがしばらく遠ざかっていた顧客が再び戻ってくるケースも多かったという。
また、TwitterなどSNSで好意的に受け止められ、30日間毎日「野郎ラーメン」に行って食べるイベントを設定して、実況をツイートする人も現れた。こうしてクチコミ効果で、「野郎ラーメン」の知名度、ファンが広がった。
このような顧客の間での自然発生的な盛り上がりもあり、7名が30日間チャレンジを達成した。そのうち、連絡の取れた5名には会社からありがとうの気持を込めて表彰したとのことだ。
「お客様にも毎日の予定がありますし、30日間欠かさずお店に来るのは大変です。夜におつきあいでお酒を飲む時には、ランチに行くといったように皆さん、工夫されていました」(黒木氏)。
「1日1杯野郎ラーメン生活」のアプリ画面(イメージ)。
「1日1杯野郎ラーメン生活」で常連になった人とは、店員も親しくなり、味の好み、お店への要望など本音がわかるようになったのも大きな成果だ。つまり常連とのコミュニケーションが密になった。
例えば留学生で月に使えるお小遣いが、2万円、3万円の中で、まず8600円で「1日1杯野郎ラーメン生活」の会員になり、食事は基本「野郎ラーメン」で済ますことにして、間食をなくし、残りの金額をどう使うか計画的に考えている人もいるそうだ。
同社ではサブスクリプションによって儲かったというよりも、顧客との絆が深まったと手応えを感じている。
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