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フードリンクレポート

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2015年10月09日(金)15:47

初めてのスナック攻略法とカラオケについての考察。

密かなブームが到来しているスナックの今(4-3)

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取材・執筆 : 中山秀明 2015年10月9日

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 数ある飲食業態の中で、極めて特異なジャンルがある。それが「スナック」だ。飲食を楽しむところであり、多くはカラオケで歌える店であり、ママをはじめとする店員とディープな話ができる場所でもある。歴史は古く、全国に20万軒は存在するという説があるものの、詳しい実態は謎だ。また、紹介する情報誌は希少で、『食べログ』にもジャンルはなく、検索してもほぼ出てこない。

 そう考えると一見では衰退していくと思われそうだが、そんなことはない。最近では「一般社団法人 全日本スナック連盟」が誕生したり、その会長である玉袋筋太郎氏によるTV番組が放送されていたりと、盛り上がりを見せている。さらには『スナックキングダム(SNACK王国)』や『スナッカー』という専門の情報サイトがあったり、有名雑誌で特集号が出版されたりと、実は密かなブームになっているのだ。ということで今回はスナックに焦点を当て、その魅力を改めて紹介するととともに人気の秘密に迫りたい。玉袋氏や現役ママなど関係者の証言を交えながら全4回のレポートで綴っていく。

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外に料金を表示しているスナックもある。このような店は良心的かつ一見さん歓迎であるとみてほぼ間違いない。

 前回は新宿・ゴールデン街のベテランママの店「ルマタン」にお邪魔して、ママとどんな会話をして、どんなメニューがあって何が提供されたかなどをレポートした。第3回目となる今回は、一般的なスナックというものを考察したうえで、その楽しみ方をビギナー向けに紹介していきたい。

 まずは料金システムについて。一部例外もあるが、多くのスナックには基本料金がある。飲み放題+カラオケ歌い放題で4000円とか、カラオケ歌い放題込みのチャージ2000円+キープ料込みのボトルが3000円とか、店によってさまざま。前回紹介したルマタンはカラオケがないタイプで、おつまみ食べ放題+1ドリンクが2000円。追加ドリンクは1杯500円、ボトルは4000円というシステムだった。カラオケがないスナックの場合はこのような形になるが、相場はひとり4000~5000円といったところだろうか。

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お通しがスナックの場合、個包装の米菓子は定番だ。だが写真のようなオンザロックやカクテルは、スナックでは主流のドリンクではない。

 ただ、店の外はおろか店内にも料金表が貼り出されていなかったり、メニューリストが存在しないスナックもあるので、もしはじめて利用する店なら必ず入店時に料金を聞いておいた方がいい。そうすれば、万が一ぼったくられることもないだろう。また、稀に時間制を採用している店もあるので注意が必要だ。ママと常連との信頼関係が暗黙で成立=金額を表記しないという図式がある店ではハードルも高いが、最初さえクリアすればまずは難関突破といえるだろう。

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スナックで定番の食事メニューといえば焼きうどんだ。ソース味で提供されがちな焼きそばと違い、醤油味がセオリーな焼きうどんは水割りとベストマッチ。

 メニューについても店によって千差万別。「スナック」というだけあって、お通し=乾きものというケースは多く、食事に主軸は置かれないのがほとんどだが、中には居酒屋顔負けのこだわりの逸品を提供してくれるスナックもある。料理に関してはバーにも同じようなことがいえるが、柿の種やポテトチップス、チョコレートといった乾きものが主体な店、それに加えて枝豆やピザ、チキンナゲットなどの出来合いのフードが脇を固める店、そしてママやマスターの手料理が充実している店の3タイプに大きく分けられる。各料金は手作りの店の方が味とのコスパでいうと断然良く、たとえばポテトサラダ400円、ハンバーグ800円、ピザ1000円など一般的な飲食店とほぼ変わらない金額で楽しめるのがほとんどだ。一方料理が出来合いの店は、調理に手間をかけていないものの一品500円や1000円など高めで設定しているケースが少なくない。

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ポテトサラダは居酒屋でも定番だが、スナックでも同じことがいえる。ママの手作りであれば嬉しさもひとしお。

 ドリンクに関しては、大前提として焼酎やウイスキーの水割りが基本。樽生はおろか瓶ビールさえ扱っていない店もたまにあり、ウーロンハイやサワー類、ハイボールなどがない場合も。ラインナップはそこまで豊富でないのが一般的である。今さら説明する必要もないが、スナックは会話やカラオケを楽しむのが主となる業態。料理やドリンクはあくまでも潤滑油的なものである。それを鑑みれば、メニューにこだわらないのは当然といえよう。

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前回紹介したルマタンのボトル。特にこだわっているわけではないそうだが、芋焼酎を中心にハズレのない銘柄が数種類並んでいた。

 店によっては本格的な料理が提供されるスナックがあることを述べたが、同様にある特徴がズバ抜けて光っている場合がスナックにはよくある。たとえばカラオケ。最新・高価な本格音響だったり照明設備だったりと、器材にこだわっているケースがあれば、中には生バンドや楽器を揃えていることもある。おしゃべりが好きだったり悩み相談が得意だったりするママのスナックであれば、あえてテーブル席を設けず、こだわりの円形カウンターなどで接客するということもあるだろう。また、ママ自身が美人かあるいは美人なキャストを揃えていたり、セクシーな衣装で統一していたりといった容姿でアプローチするパブ・クラブ的な要素を持つスナックも存在。そして住宅街などに多いのが、地域未着型のスナック。ママと常連が家族ぐるみで仲が良かったり、店主催の旅行やカラオケ大会をはじめとするレクリエーションを行ったりしているようなタイプだ。これら「料理系」、「カラオケ系」、「会話系」、「パブ系」、「地域密着系」の5つに分けられ、もちろん「料理系」と「カラオケ系」を組み合わせたスナックや、中にはすべての要素を持つオールマイティ型の実力店もある。スナック通にもなれば、小腹がすいた時は「料理系」、相談事がある時は「会話系」といったようにその日の気分に合わせて行きたいタイプの店で楽しめるはず。これもスナックの醍醐味といえるだろう。

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まるでワインバーのようなスタイリッシュな雰囲気。だがここはカラオケに特化したスナックで、一流メーカー「BOSE」のスピーカーと最新鋭の機器を導入している。

 ただ、多くのスナック初心者にとってハードルが高いもののひとつが、本特集において何度も登場してきた「カラオケ」ではないだろうか。酒が回っていればまだ違うかもしれないが、見知らぬ人の歌声を聞くのは退屈であるだろうし、自分が歌うというのも恥ずかしいものだ。もちろんカラオケ自体が苦手な人はルマタンのようにカラオケが存在しないスナックへ行けば良いのだが、所見で有無を見極める事は難しい。そこで、スナックにおいてのカラオケと、このシステムの攻略法を考察してみよう。

 第1回目でレポートしたように、カラオケ専門店が希少だった1980年代において、カラオケといえばスナックであり、また酒を伴うシーンや宴で歌われることがほとんどだった。カラオケの定番曲である「酒よ(吉幾三/1988年発表)」をはじめ、当時のヒット曲に酒をテーマにした歌が多いのはこの影響があり、「居酒屋(五木ひろし・木の実ナナ/1982年発表)」などのデュエット曲が今より多かったのも、ママや女性客と一緒に歌うことを想定して作られていたからと考えられるだろう。また、未だに演歌や歌謡曲に根強い人気があるのも、スナックでカラオケを歌うという文化が全国各地で支持されているからと考えられる。

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新宿・ゴールデン街の一角。この界隈は、店舗スペースが狭小であるなどの理由でカラオケを置いているスナックは比較的少ない。

 そのため、スナックで愛される歌というのはカラオケ専門店とはやや異なる。もちろん、アイドルや軟派なえせアーティストらによる廃りの早い商業的な流行歌などではない。通信カラオケのトップメーカー・第一興商のDAMのリクエストランキング(スナック業態)によると、1位「糸(中島みゆき)」、2位「あったかいんだからぁ♪(クマムシ)」、3位「酒よ(吉幾三)」というのが2015年4月の調査結果だ。2位は時期的なものが強く影響されているが1位と3位は圧倒的なマスターピースといえる。そのほか、6位は「北空港(桂銀淑 ・浜圭介)」、7位は「ロンリー・チャップリン(鈴木聖美 with RATS & STAR)」、8位は先述の「居酒屋」と、デュエット曲も多い。男性であれば「酒よ」や、5位の「シングルベッド(シャ乱Q)」。女性であれば「糸」や10位の「ハナミズキ(一青窈)」などが無難に盛り上がるラインで、デュエットでもひとまずは6~8位の上記3曲が歌えれば間違いないといえるだろう。

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曲のリクエストは、技術の進化でデンモク(電子目次本)が現代の主流。以前は冊子を参照して手動入力というのが一般的だった。とはいえ機器は変わってもスナックで歌い継がれる曲はそう変わらない。

 カラオケのあるスナックでしばらく飲んでいたり通うようになったりすれば、己に歌う気がなくてもそのうち歌う機会に出くわすだろう。強く意識する必要はないが、場の空気を読むことはスナックにおいて大切なエチケットだ。自分はもちろん周りの人たちが気持ちよく飲めるように、歌の準備はしておいたほうが賢明である。

 ということで、ひと通りのスナックの楽しみ方を伝えさせてもらった。が、スナックの最も肝心な魅力である「出会い」や「会話」はラストとなる次回に、全日本スナック連盟の会長・玉袋筋太郎氏のインタビューとともに述べさせてもらいたい。会長として、またひとりのスナック愛好家として日本全国のスナックを渡り歩く玉袋氏は、スナックについて何を考え、私たちに何を教えてくれるのか。こうご期待だ!

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