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フードリンクレポート

2015年5月21日(木)18:00 トレンド

モンテローザが注力するのは、「九州熱中屋」の模造業態!? その名も「九州料理かば屋」!

パクリのボーダーライン。繁盛店の知的財産はどこまで守られるか。(5-3)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年5月20日執筆

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 フードリンクニュースによる、「鳥貴族」に極めて酷似した「鳥二郎」の仁義なきパクリ疑惑報道(2014年12月11日付)は大きな反響を呼び、「鳥貴族」が「鳥二郎」を不正競争防止法違反で訴える訴訟にまで発展。各種メディアでも独自取材により報道合戦が繰り広げられ、情報が拡散されて、「いくらなんでも、ここまで似るとはあり得ない」という驚きの声が読者、視聴者の間で広まっている。新業態、新商品、新サービスが生まれ、それがヒットすると真似る行為は古今東西で行われてきているが、似ていることはどこまで許されるのか。過去の模造業態を振り返るとともに、不正競争防止法のポイントに踏み込んでみた。(5回シリーズ)

パクリのボーダーライン。繁盛店の知的財産はどこまで守られるか。(5-1)

パクリのボーダーライン。繁盛店の知的財産はどこまで守られるか。(5-2)

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モンテローザの新業態の1つ「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」。外観からは感じないが、ゴールデンマジックのヒット業態「九州熱中屋」に似ているとの噂が絶えない。

 流行の繁盛店を徹底してベンチマーキング。次々に紛らわしい店を出店して、居酒屋業界最大手とも言われる一大企業にのし上がったのが、モンテローザ(本社・東京都武蔵野市)。

 法的にはともかく、一般目線で見て、看板ばかりでなく内容も、「和民」に似ている「魚民」、「月の雫」に似ている「月の宴」は、商標使用をめぐって、それぞれワタミフードサービス、三光マーケティングフーズと訴訟になり、いずれも和解に持ち込んでいる。

 その後も、現在は閉店してしまったが、エムグラントフードサービス「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」のメニュー、料理共に見分けがつかないほど奇跡的に酷似した「ステーキハンバーグ&サラダバー テル」が、浦安駅前に登場した時には驚かされた。そればかりでなく、ダイヤモンドダイニングでかつて存在した和風居酒屋「竹取百物語」に対して「竹取酒物語」を出店したり、喜代村の「すしざんまい」に対して「すしざむらい」、エー・ピーカンパニーの「塚田農場」に対して「山内農場」を出すといったように、法的にはセーフかもしれないが、どれも系列店と間違って入りかねないほど、よく似た感じの店を確信的かつ常習的に出しまくっている。

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「九州料理かば屋」は「九州のうまかもん」を目一杯集めた店だという。

 変則バージョンとしては、「kocoroya」のロゴの書体と色使いは、「kichiri」にそっくりである。TPP(徹底的にパクる)の大御所として君臨するモンテローザであるが、法の抜け穴に乗じた訴訟上手で知られており、鮮魚を柱とした和食居酒屋「目利きの銀次」にいたっては、沖縄の那覇市にある同名店「目利きの銀次」の店名丸パクリである。外観の雰囲気もよく似ていて系列店に見えてしまう。

 沖縄の「目利きの銀次」を経営する、みたのクリエイト(本社・沖縄県中城村)では、「本土で沖縄料理が流行っていたので、その逆を行って、沖縄で日本全国、本土の料理が楽しめる店として、平成21年10月にオープンした。東京などにあるのは、ウチとは関係ない別の会社が経営しています」と説明している。みたのクリエイトでは商標登録をしておらず、後出しの平成22年8月にモンテローザのほうが、「目利きの銀次」の商標を既に取ってしまっているという事情があるらしい。法的にはモンテローザに問題はないということになるが、ブランド乗っ取りとも取られかねない恐ろしい行為だ。

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錦糸町駅前の商業施設「LIVIN」。この裏側にあるからLIVIN裏通り店。

 そこまでやるモンテローザだが、一方で最近は単純なTTPではなく、合わせ技を使ってくる進化形が増えてきた。「俺の串かつ 黒田」は、ノートの「名物串カツ田中」に類似しているが、"俺の"の部分は「俺のフレンチ」などを展開する、俺の株式会社の店名の付け方に倣っている。

 2月から展開し始めた「九州料理かば屋」は、豊後鯖を売りにするなど、ゴールデンマジックの「九州料理熱中屋」にコアとなるメニューが酷似している。しかし、店名とカバっぽい顔のおやじのイメージキャラクターは、「山陰海鮮炉端かば」に倣っているようだ。

 5月11日、三鷹駅北口にオープンしたばかりのしゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶ食べ」は、ニラックス「しゃぶしゃぶブッフェ しゃぶ葉」に相当似ているが、「今日は、しゃぶしゃぶ日和り。」のキャッチコピーは、ダイヤモンドダイニングの「今日はしゃぶしゃぶ!!」という店名より拝借してきた模様。

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「九州熱中屋」。このチェーンは店名に必ず"LIVE"を付ける。写真は「猪名寺LIVE」。

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「山陰海鮮炉端かば」浜松町店。

 モンテローザの進化した姿はどのようなものか。「九州料理かば屋」1号店の「錦糸町南口LIVIN裏通り店」を訪ねてみた。
ベンチマーキング元と思われる「九州熱中屋」では、店名にLIVEを付ける形式になっていて「新宿LIVE」、「新橋LIVE」、「新大阪LIVE」といったような表記を行っているが、「九州料理かば屋」は単にLIVINという西友の商業施設のすぐ裏側にあるので、「LIVIN裏通り店」と付けている。

 錦糸町の駅から歩いて3分くらいと近いのだが、意外と人通りが少ない通りに面している。周囲はややさびれてきている飲食街で、かなり古いビルの1階にある。飲食店の出店場所としては適しているが、家賃に割安感は果たしてあるのか。業態転換する前は「白木屋」だったようだ。デカデカと店名が掲げられているので遠めにも目立つが、デザイナーの趣味なのか、外壁の色使いがお水っぽいような...。

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「九州料理かば屋」のイメージキャラクター「かばお」。

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「山陰海鮮炉端かば」のイメージキャラクター。

 エントランス付近には、料理写真が展示されていて親切である。「九州のうまかもんを目一杯集めました!!」とのキャッチコピーで、福岡、長崎、佐賀、熊本、大分、宮崎、鹿児島、各県のご当地料理が、あれこれ味わえることをアピールしている。元々、モンテローザは鹿児島郷土料理の「山内農場」を267店と大々的に全国展開しているので、それの九州全エリアへの拡大バージョンとも、とらえられるだろう。「山内農場」は鹿児島市内に不敵にも天文館本店を有してもいる。

 店内に入ってすぐの場所、レジの近くには風呂桶くらいのサイズの水槽が設置されてあった。周囲をゴザのようなもので囲っているので、何が入っているのかよくわからない。上からのぞき込んでいると、深いところで魚が泳いでいるようで、時折、ピチャと魚が跳ねるような音がする。豊後鯖の写真パネルが立てかけてあるし、少なくとも、鯉、金魚の類ではないと思うのだが、鯖なのか、確認はできなかった。
水槽の横には、九州の加工食品がディスプレイされてあって、九州料理専門店であることが示されていた。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」エントランス付近。水槽の中にはサバらしき魚が泳いでいるのだが、上からのぞき込んでも底の方にいて、よく見えなかった。

 店員に案内されて座席を確保。連休明けで夜も深まっていたこともあって、店内は空いていて、20代から30代くらいの2~4名のグループが、4、5組いる感じだった。「白木屋」の頃からの顧客もいると思うので、普段はビジネスマンなどもっと入っていると思うが、居酒屋とはいえ、お酒より料理が中心になっているので、どちらかというと大人数で行って騒ぐ店ではない感じだ。

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「九州料理かば屋」グランドメニュー。本物って何だろう。偽物って何だろう。

 店内には提灯がいっぱいぶら下がっているが、提灯を取り払ってしまうと、内装の感じは「白木屋」でもいいようにも見える。何で、九州料理というと提灯で表現するのだろう。席にテレビがあったり、モバイルの無料充電用コンセントが付いているのは嬉しいが、これは「白木屋」の頃からあったもので、そのまま使っているのだろう。

 メニューブックは、旅行会社のパンフレット風で、九州各地の名物料理をあれこれと取ってきているので、料理の種類が極めて多く、正直迷ってしまう。これだけのものを仕入れるのも、保管する方法も大変だろう。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」では、「キリン一番搾り フローズン(生)」、、「キリン一番搾り フローズン(黒)」が飲めるのはポイントが高い(520円)。

 お店の側でも懸命に取り組んでいるようで、店員はブザーを押してないのに呼ばれたと勘違いして来たり、オーダーが入っていなかったりと、苦戦していたが、接客は丁寧で感じがよく、突然の業態転換に戸惑いながらも、慣れていっている段階と見受けられた。お酒は、「キリン一番搾り フローズン(生)」が飲めるのが売りで、ご当地の果物を使ったサワー、ご当地の焼酎などがメニューブックに載っている。お通しは4種類の小鉢から選べるシステムだ。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」のカッコよく盛りつけられた豊後サバ。ハーフサイズ。「活豊後サバの刺身」1尾3880円、半身1960円。大分県ひろせ水産より直送。魚臭くなくコリっとした食感があって鮮度の高さは感じたが、淡白でサバらしい風味はあまりしなかた。美味しくはあるのだが豊後サバの味はこんなものかな。

 人気メニューは、なんと言っても「活豊後さばの刺身」、次に「呼子の剣先烏賊刺し」、「五島直送刺身の盛り合せ」だという。何かから何まで、「九州熱中屋」に似ているわけではないが、「活豊後さばの刺身」、「呼子イカの刺身」、「博多風鉄鍋餃子」、「五島うどん」などといった、中心的なメニューが酷似している。「活豊後さばの刺身」や「博多風鉄鍋餃子」にいたっては、味はともかく、見た目からして「九州熱中屋」の当該料理にそっくりだ。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」の手作り感、ボリューム感ある餃子。「店仕込み博多鉄鍋餃子」(680円)。

 そもそも、五島列島は最近こそ「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が、ユネスコ世界文化遺産への登録を目指して準備を進められていることもあって注目度が上がっているが、日本列島のどこにあるのかも一般にあまりよく知られていない島だ。五島近海の海は、九州では玄界灘などとともに絶好の漁場ではあるが、五島は長崎より沖合い100㎞ほど離れた離島であって、東京や大阪からの飛行機の直行便がないのである。

 従って輸送に時間がかかり、東京の居酒屋では鮮度となると、どうしても三陸、房総、遠州灘などの魚に見劣りしてしまう。エー・ピーカンパニーでは、宮崎県延岡市の離島、島野浦から朝に水揚げされた魚が夕方に届くシステムを構築しているが、延岡市浦城港から約6㎞と近く、同じ離島といっても事情が全然違う。

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「九州熱中屋」の料理イメージ。

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「九州熱中屋」は「九州の活気溢れる繁盛店を東京に再現」というコンセプトで展開中。

 「九州熱中屋」のメニューに五島産品が多く取り入れられているのは、経営するゴールデンマジックの山本勇太社長が五島出身だからでもある。五島の事情を熟知する山本氏が、なぜ旨い魚と知りながら、五島の鮮魚をあえて出そうとしないのか。答えはそこにある。五島漁協に問い合わせると、東京なら翌日には魚が届けられる体制になっているとのことだが、当日というわけにはいかない。「九州料理かば屋」がうたっている、毎日五島から届く鮮魚とは、前日に獲れた魚が毎日送られてくるということだろう。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」の人気の刺身メニュー。ダイヤモンドダイニングの十八番、かつおの藁焼も。

 「九州料理かば屋」のイメージキャラクター「かばお」は、嫌いなものは偽りの料理とお世辞。「九州にはこんなに美味しい料理がたくさんあるのかと、感動を覚え、みんなにも知ってほしい。そんな想いから誕生したお店」と、「かばお」の熱い想いがあるのだと記されている。TTPに対する熱い想いなど感じないでもないが、果たしてこの「かばお」の想いが貫徹していくのか。注目していきたい。

 繰り返すが店員は誠意を持って働いていることが伝わってくる。店内に貼り出されたアンケートを見ていると、「ヒガさんの接客に感動した」との書き込みが幾つかあった。ヒガさんというのは、「白木屋」当時から何年も働いているベテランの女性サーバーだそうだ。次回は、ぜひ直接、接客を受けてみたいと思った。

 逆に言うと、これほどの人材を抱えながら、モンテローザはなぜTTPに走らなければならないのか。そんなに自信がないのか。本当に不思議だ。「九州熱中屋」は今年関東から関西にも進出し、66店にまで増えている。100店舗体制をにらむ勢いで、今最も伸びている居酒屋チェーンの1つだ。そのパワーに乗りたい気持もわからないでもないが。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」店内。

 今後の展開としては、「山内農場」で鹿児島に本店をつくったのなら、「九州料理かば屋」でも福岡の繁華街に本店と称して店舗を構えてくるのではないかと思う。狙いは出張族や観光客で、九州で見た看板と同じものが地元にあれば、ついフラフラと入る人も出てくる。そして、全国に200~300店くらいは店舗をつくるつもりではないだろうか。池袋駅東口、静岡市葵区、千葉県銚子市、群馬県太田市と、続々とオープンしており、瞬く間に5店になった。

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「九州料理かば屋 錦糸町南口LIVIN裏通り店」ではテレビも見れる。また、モバイル電源無料席もある。

 集客好調の「九州熱中屋」、「山陰炉端かば」もうかうかできなくなった。というのは、東京都心部はともかく、ちょっと郊外のほうに行けば郷土料理店はまだまだ珍しく、東京の流行りものということで人目を引くからだ。とは言っても、「白木屋」や「笑笑」が急に九州料理専門店になったからといって、所詮、本家のクオリティーを出せるわけではなく、現状のクオリティーを保っていれば、「塚田農場」と同様に同一エリア内の競争で敗北することはあり得ないだろう。

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どこにでもあるような制服と言われれば、そうかもしれない。

 また、「山内農場」の場合は、女性店員の和装の衣装が華やかで、それでポイントを稼いでいる面もあるが、「九州料理かば屋」の場合はもっと純粋に料理での勝負になるし、料理数が多くてオペレーションもより複雑と思われ、そう簡単にはいかないかもしれない。

 それにしても、「九州料理かば屋」は魚の流通、管理は大丈夫なのか。魚は輸送による酸欠、移し替えといったストレスを与えただけでも、霜降りが飛んでしまって、生簀の中で泳いでいても、風味が損なわれているケースが多々あるという。錦糸町南口LIVIN裏通り店では、店員の話によるとストレスを与えないように大事に飼っていたようだが、どの店でも徹底できるだろうか。

 豊後鯖や呼子いか、五島列島の旬の魚の真のおいしさが顧客に届くのか。下手を打ってしまえば、地魚の旨い地域では、九州の魚はこんなものかと評判を落としてしまいかねない。老婆心ながら、不安感が胸中に充満してくるのを抑え切れなかった。



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