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お店を知る

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2015年7月29日(水)16:08

東京でワインを醸造。 レストラン併設の都市型ワイナリー「清澄白河フジマル醸造所」 (東京・清澄白河/ワインレストラン)

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取材・執筆 : 石村紀子 2015年7月20日執筆

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 6月25日、東京・清澄白河に、レストラン併設の都市型ワイナリー「清澄白河フジマル醸造所」がオープンした。運営するのは、ワインショップやワイン卸業のほか、ワインレストランを複数店舗手掛ける株式会社パピーユ(大阪府大阪市中央区 代表取締役 藤丸智史氏)。2013年に誕生した大阪・松屋町の「島之内フジマル醸造所」に次ぎ、同社で2つ目の都市型ワイナリーとなる。

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東京メトロ・清澄白河駅から徒歩約5分。住宅街の中に佇む「清澄白河フジマル醸造所」。1Fは醸造所、2Fがワインレストランとテイスティングルームとなっている。醸造所は8月下旬から稼働予定。

 東京でのワイナリーを清澄白河に作ることに決めたのは、職人の街であったことが大きいと、同店の亀山小絵子氏。「職人の街に息づく、ひとつひとつ丁寧な手仕事でもの作りをする姿勢や想いは、私たちのワイン造りに通じるものがあると思ったからです。川に囲まれた地形が大阪のワイナリーがある島之内と似ていたことも理由のひとつです」(亀山氏)

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元は鉄工所だったという建物を改築した店内は、"ボッテガ(イタリア語で工房の意味)"をイメージしたという。レストランの席数はテーブル12席、カウンター7席。

 同社は2010年から大阪で委託醸造という形でワイン造りに取り組んでいたが、ぶどうの生産者から「畑を借りてくれないか」という話がもたらされたことをきっかけに、大阪・松屋町に自社醸造のためのワイナリー「島之内フジマル醸造所」を設立した。2013年3月21日のことである。

 「大阪はかつてぶどう栽培全国一位だったこともあるほどの一大ぶどう生産地です。大阪市内にはワイナリーが6つもあり、中には100年以上の歴史あるワイナリーもあります。ですが近年の高齢化や農業従事者の減少に伴い、耕作放棄地が増加しているのが実情です。ぶどうは長い年数をかけてやっと収穫される手間のかかる作物で、1年でも手入れを怠れば二度と同じ姿には戻りません。ワインに関わる者として、歴史あるぶどう畑を存続させること。地元で採れたぶどうを使ってワインを造ること。そのワインをお客様に味わっていただくこと。そうした役割を担うことは、"ワインを日常にしたい"という私たちの夢を実現することにつながるはず。そうした思いから、耕作放棄地のぶどうを使ったワインを自社醸造することに決めたのです」(亀山氏)

 「畑」と「ワイナリー」だけでなく、そこに「人」をつなげるために、ワイナリーは訪れやすい大阪市内に設立することに決定。日常的にワインに触れ合わない人にも来てもらえるように、レストランを併設した。そうして生まれたのが、都市型ワイナリー「島之内フジマル醸造所」だった。

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清澄白河フジマル醸造所の入り口にある看板。この看板がなければ見過ごしてしまいそうなほど、店は住宅街に馴染むように建っている。

 それから2年後の今年、東京へ同様のレストラン併設ワイナリーを出店することになったのは、知り合いのご縁で、山形のぶどうを使ったワインを造ることになったから。当初は大阪のワイナリーで造ろうと考えていたそうだが、「大阪と山形は遠すぎて、ぶどうの世話をしに行くことが難しいのです。さらに大阪のワイナリーで扱うぶどうの量が増えたため(現在、自社管理畑は2ha弱にもなるという)、数年後にはキャパシティがいっぱいになる可能性も考えられます。東京ならば距離も近いし、人が多く、食文化も豊か。ワインを造り、ワインの素晴らしさを発信していくにはうってつけの場所だと考えたのです」(亀山氏)

 取り扱うワインは約300種類。そのうち約70種類が国産ものだ。「国産のワインはとても人気がありますよ。また、海外でワイン造りに情熱を燃やしている日本人醸造家の方が手掛けた上質なワインも揃えております。メニューブックにはワインの紹介とともに、彼らのご紹介も載せさせていただいておりますが、熱心に読み込んでくださるお客様も多いんですよ。ワインを知っていただくために、こうした情報もどんどん発信していけたらと思います」(亀山氏)ボトル単価は3500~28000円までと幅広い。最多価格帯は4000~5000円台。

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自社醸造のワインたち。右から「メルロー」「カベルネ・ソーヴィニョン」「深緋色」「キュヴェ・パピーユDSL2014」「デラキング」。いずれもフレッシュな状態を味わうタイプのワインなので、あえてコルクではなく王冠で栓をしているそう。どれも人気で在庫がなくなってしまうことも多い。

 グラスワインは白、赤、ロゼ、泡、合わせて12~14種類(500~1400円、税抜、以下同)と豊富。中でも人気なのはサーバーから注がれる自社醸造の「生樽ワイン」(赤・白、各500円)。島之内の醸造所で造られたワインを樽から直接詰めたもので、口当たりのよい爽やかな味わいだ。

 シェフを務めるのはイタリア人のニコラス・カピッツィ氏。アメリカ・ポートランドで経験を積んだ彼の料理はイタリアンでもフレンチでもない。強いて言うなら流派にこだわらず素材の味をベストな調理法で引き出した"ニコラス風"。芸術的な美しさと味の奥深さを五感で感じられる料理となっている。

 「全部を召し上がっていただくことで完結するように作っておりますので、できればシェアではなく、お一人様で一皿を召し上がっていただけるとうれしいです」(亀山氏)

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「たまねぎのクレマ」(800円)はファンの多い一皿。大阪・泉州産たまねぎの素晴らしい甘さを存分に味わえるよう、冷製のスープに仕立てた逸品。なめらかな食感と口の中に広がる濃厚な甘さは驚くほど。ところどころに置かれたアンチョビの塩気とポレンタ粉の香ばしい食感が絶妙なアクセントとなって最後まで飽きさせない。"一皿すべて味わうことで完成する味"という意味がよくわかる。

 平均単価は7000~8000円ほど。シェフのおすすめが味わえるコース(前菜2皿、パスタかリゾットのいずれか、メイン、デザートで6500円)もある(予約不要)。土日祝日はランチも営業しており、ディナーと同じメニューが楽しめる。

 また、レストランに併設されたテイスティングルームでは、13:00から(ラストイン21:00)いつでもライトミールとワインを楽しむことができる。

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レストランの奥にあるテイスティングルーム。アペロタイムに、または仕事帰りの1杯を楽しむ隠れ家として活用したい。

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テイスティングルームで注文できる「ブッラータ・トマト」(1000円 *レストランでも注文可。1800円。ポーションが異なる)。イタリア・プーリア州から直送されたブッラータ(モッツァレラの中に生クリームを入れたフレッシュチーズ)と色とりどりのトマトに熟成バルサミコ酢をあわせた一皿。見た目華やか、味わいの異なるトマトとクリーミーなチーズのバランスが絶妙だ。

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「ひとくちパニーノ」(500円)は、外側カリッ、内側モチッのパニーノの中に、サラミとマリネした茄子の旨みがぎゅっと詰まった食べ応えのある一品。サラミの塩気と上質な脂が、小麦粉の甘みとハーモニーを奏で、噛みしめるほどに深い余韻をもたらす。たこ焼きにインスパイアされたという丸いフォルムがなんとも可愛らしい。

 客層は老若男女問わず、幅広い層が訪れているという。子供向けのメニューはないが、「お子様も大歓迎です」と亀山氏。

 "美味しいレストランがあって、そこでは自分たちでワインを造っている。しかも、ここ東京で。試してみたら美味しかったから、今度は他のワインも飲んでみたい"ワインに馴染みのない人にワインを好きになってもらうには、こうしたきっかけが何より大切かもしれない。8月末から稼働予定の醸造所で、どんなワインが造られるのか。実に楽しみだ。

■清澄白河フジマル醸造所
住所:東京都江東区三好2-5-3-2F
TEL:03-3641-7115
営業時間:<レストラン>
               ディナー 17:00~23:00(21:00ラストイン)
         ランチ(土日祝日のみ)11:30~14:00
      <テイスティングルーム>
        13:00~(21:00ラストイン)
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は営業、翌日火曜日休み)


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