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2015年10月28日(水)17:26 トレンド

中国人にオムライスがヒット?高級志向で神戸牛、フグも爆食!

訪日爆買い中国人観光客の“爆食”を狙え!(5-3)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年10月27日執筆

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 今年8月に起こった上海株式市場の大暴落、いわゆる"チャイナショク"も何のその。10月1日~7日、中華人民共和国の建国記念日にあたる国慶節の大型連休には、大挙して中国人が日本を訪れ、東京、大阪など日本の主要都市の目抜き通りが中国人観光客で占拠された。家電製品、薬品などを買い漁る中国人の"爆買い"は目を見張るが、レストランを団体客があたかもジャックして嵐のように食べていく"爆食"にも注目が集まる。外食がどのように中国人の"爆食"に対処しているのか。また、"爆食"に引き込むにはどうすればいいのか。(5回シリーズ)

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中国でもヒットしたドラマ「ウロボロス」の影響で、オムライスの人気が急上昇。元祖・オムライス「北極星」心斎橋本店には、「ウロボロス」ファンの中国人が押し寄せている。

 訪日中国人観光客には、3つのタイプがある。

 第1のタイプは、旅行会社のツアーに参加する人で、外食はツアーが指定した飲食店で食事をするのが基本で、食事に対するこだわりがない。フリータイムもあるが、なんとなく日本に来たからには和食が食べたいというのはある。しかし、ツアーで連れて行かれるレストランではさんざん和食を出されるので、フリーの時くらいは洋食、アジアン、さらには中華でいいとも思っている。

 外食の側としては、旅行会社とタイアップして団体客を受け入れる。または「ラオックス」や「マツモトキヨシ」のような免税店の近くに出店して、食品サンプルを大々的に掲げてどんなものを提供しているのか一目瞭然の店づくりを行い、フリータイムの顧客を狙うといったやり方があることを述べてきた。

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旅行代理店と飲食店のマッチングサービス「団タメ!」。旅行会社との接点をつくれるサービスだ。

 次に、第2のタイプは、個人で自由旅行をする人で、海外旅行ができるくらいの余裕はあるが、決してお金持ちとまでは言えない中産階級の人である。3年以内に訪日歴がなければ年収20万元(約380万円)以上、3年以内に訪日歴があれば年収10万元(約190万円)以上で、自動車または不動産を持っている人が、個人旅行用ビザを取得できる。

 中進国で、貧富の差が日本よりはるかに大きい中国では、格差が広がったとはいえ1億総中流意識がありフリーターでもちょっと頑張れば海外旅行できる日本とは、国の事情が違う。しかし、上海、北京、広州のような大都会ばかりでなく、内陸部の主要都市でも厚みとして物足りないものの中産階級も育っていて、中国の統計は各省から上がってくるデータが不正確で中国政府も困っているが、日本の人口くらいはいるのではないかと言われている。

 日本に親戚、友人、知人がいる人が家族などグループで旅行をしているイメージだ。この人たちも、旅行会社のツアー客と同じく、東京~富士山~大阪を結ぶ、ゴールデンルートを1週間くらいかけて周遊するのを好むという。訪日目的のメインは買物であり、食事に対するこだわりが薄く、そのあたりのチェーン店で十分だと思っている。

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秋葉原の「松屋」では中国語も交えて、中国人観光客にアピール。

 従って高価格帯を除くすべての外食にチャンスがあるが、安価で特に言葉が通じなくても手軽に食事が済ませられるラーメン、牛丼などはチャンスが大きいと言えるだろう。

 または、免税店のすぐ近くの店ならチャンスが広がる。秋葉原「ヨドバシAkiba」の飲食街にある、際コーポレーション経営の和食「たつみ屋」は、浅草にある店の2号店として10月2日にオープンしたばかりだが、顧客の3~4割が外国人で中国人がメイン。すき焼き、天ぷら、おでんと、人気メニューは日本人とほぼ変わらないが、日本人と異なるのは生のサーモンが好きなようで「サーモンいくら丼」などが売れている。

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爆買い用商品を揃える秋葉原「マツモトキヨシ」。ここで買っている中国人観光客をいかに飲食店に連れてくるかが課題。

 ミーハーな若い女性の間では、オムライスが人気だ。というのは、テレビドラマ「ウロボロス ~この愛こそ、正義。」が中国でもネット配信されており、中国でも人気がある生田斗真さん、小栗旬さんが出演していることもあって、話題になっていた。その「ウロボロス」の劇中でオムライスが何度も登場している。

 中国ではちょっとしたオムライスブームが起こっていて、料理番組で紹介されるなど、日本のオムライスに興味深々なのである。ただし、ネットの書き込みを見ていると、中を割って半生の卵がとろっと出てくるタイプのオムライスは、生卵を食べない中国人からは「キモチ悪い」との反応もあるようだ。

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元祖オムライスの店、心斎橋「北極星」。中国人観光客に人気沸騰。

 この中国のオムライスブームの恩恵を受けているのが、大阪・心斎橋の大正11年創業、元祖オムライスの店「北極星」。大阪と京都に10店舗あるが、「特に心斎橋の本店は、中国人観光客が多くて、行列になっています。国慶節の時は特に中国人に占拠されていました」と、経営する北極星産業では「ウロボロス」の思わぬ影響に驚いていた。心斎橋と道頓堀は、中国人観光客であふれているが、爆買いスポットに近く、建物も純和風で情緒があり、オムライスを食べるなら「北極星」と決めて行く人も多い。

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「銀座ライオン」秋葉原ラジオ会館店のホリデーランチより「ローストビーフ&オムライスプレート」。中国人観光客にオムライスが受けている。

 サッポロライオンの「銀座ライオン」秋葉原ラジオ会館店では、顧客の約2割が外国人でその半分がアジア圏、中国人が多い。この店でもアジア圏の人は、炊飯器などたくさんの買物をした後に立ち寄るケースがほとんどで、ステーキと共にオムライスがよく出るそうだ。彼らはビールを飲まず、お湯の提供を求められる。

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「磯丸水産」は海外観光客の集客にも積極的に取り組んでいるが、アジア各国の「深夜食堂」人気に居酒屋は乗れるのだろうか。

 こういうミーハーな話では、中国ではドラマ、映画「深夜食堂」が人気になっている。実は、「深夜食堂」は韓国、台湾などアジア圏で非常に人気があり、そこで出てくる「めしや」のようなコの字型カウンターの庶民的な食堂に行きたいという旅行者が増えていると聞く。

 そこで、一番近いイメージがあるのが巷の居酒屋だ。しかし、歌舞伎町では昼間、中国人観光客がぞろぞろと歩いているのに、空いている居酒屋は24時間営業の「磯丸水産」くらい。店員は仕込みをしながら、ぼんやり見ているだけである。残念だ。
飲食店からしてみれば、お店で人件費が安いからと重宝している中国人留学生。その留学生の家族、親類、友人、知人こそ、日本で個人旅行をしている人ということになる。ただ安くこき使えるから便利だと思っている経営者、店長は売り逃がしている。

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新宿「かに道楽」。中国人個人旅行客に人気の店。

 第3のタイプの中国人の金持ち。こちらは個人旅行を楽しんでいて、グルメにもこだわる層だ。日本企業とビジネスをしている人が主流で、日本に多くの知人、友人を持っている。ぐるなび広報によると、「中国人観光客には、神戸牛、フグの人気が高まっていて、高級志向が出ている」とのこと。この背景には、習近平政権のぜいたく禁止令で、中国国内でおおっぴらにぜいたくができないため、日本で思いっきりグルメを満喫したいという願望もある。

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重量制限がないクルーズ船で訪日する中国人は、爆買いもより凄みを帯びる(イメージ)。

 中国人でも、爆買いに気合が入っているのは、クルーズ船で優雅に旅をしている人だ。クルーズ船は飛行機と違って重量持ち込み制限がないので、思いっきり買物ができる。そのクルーズ船で人気の寄港地の1つが神戸である。中国では、神戸牛は和牛の代名詞で、「神戸でビーフを食べること」に意味がある。

 しかし、神戸牛も和牛も意味がよくわかっておらず、日本で牛肉を食べれば、アメリカの牛肉であろうが、オーストラリアの牛肉であろうが、神戸牛を食べた気分になっている人も多数いると推測される。中国人に、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキがやたら売れるのはそのためだろう。

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神戸・三宮「ステーキランド」。神戸牛ステーキランチ(150g、3180円)など、庶民の手の届く範囲の価格で神戸牛を提供。連日、中国人など外国人観光客で行列になる。

 それはさておき、神戸牛と神戸観光地の紹介を行う任意団体、神戸牛観光倶楽部によれば、神戸では中国人観光客を乗せたクルーズ船が港に着くと、神戸市街の神戸牛専門店が小一時間もたたないうちに、中国人に占拠される現象が起こるという。神戸牛のステーキは高価なので、店の前で値段を見て諦めて帰る人もいるが、お金持ちは金に糸目を付けない。

 この人気に注目して、神戸では本物の神戸牛を出しているのか、ちょっと怪しいような神戸牛の店が増えていて、ブランドが毀損されないかと神戸牛観光倶楽部は心配している。

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「づぼらや」道頓堀店では昨年くらいから中国人の個人旅行客が急増している。

 フグは美味ではあるが毒魚でもある、この魚をさばく職人が中国にいないので、中国人は日本でぜひ食べてみたいと思うようだ。大阪のづぼらやでは、「特に道頓堀の店は中国人が多いです。国慶節の時などは、中国人であふれかえっていましたね。団体でなく、家族連れなど個人旅行の人です。普段から台湾、香港から来られる人が多いのですが、昨年くらいから中国が急に増えました」と、最近になって中国人観光客に人気が急速に高まったと証言している。

 その他、「かに道楽」が国慶節の期間中、道頓堀、銀座、新宿、渋谷の店で3時間待ちになるなど、かにの人気も高い。

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ぐるなび中国語版では、中国人観光客に向けて国慶節特集を行った。

 ぐるなびでは最近のリニューアルで、ホームページを英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語に自動翻訳できる機能を搭載しており、中国語でもメニューを表記することを推奨している。「中国はSNS文化なので、誰か一人が発信してくれると、路地の奥の店でも人気が出ます。まずは、ネットに情報をアップすることから始めませんか」と、ぐるなび・広報では提案している。

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観光バスに乗り込む前にスマホに見入る中国人。

 最後に、今の典型的な都市の中国人とはどんな感じなのか。中国市場戦略研究所・徐向東代表の『「爆買い」中国人に売る方法』(日本経済新聞出版社)124~125ページより、上海のOLの1日の生活を抜き出してみよう。

 「7時に起床して、まず微信(注:中国版LINE)で友人がアップした情報をざっとみてから慌てて洗顔、化粧、着替えます。地下鉄で通勤している間も微信を見ています。朝食は会社近くのコンビニで買った肉まんや豆乳で済ませ、午前は仕事に没頭。昼にはデリバリーの中華定食を口にしながら、オフィスのデスクトップパソコンで好きなドラマや漫画をみて一休み。時には通販サイトやSNSで気になる化粧品やファッション情報もチェックしています。午後は仕事の処理が終わらなければ少し残業します。20時に地下鉄で帰宅する間は、スマホで家族や友人とチャットしています。帰宅しても夕食が終わればまた友人とチャットしたり、ネット経由で好きな映像をみたり歌を聞いたり、そして最後に就寝する時も、また布団の中でスマホをみているのです。」。

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中国ではモバイルEコマースの「アリペイ」が普及。スマホで決済できる「アリペイ」活用の自動販売機も開発されている(北京思元軟件有限公司ホームページより)。

 いかがだろうか。朝から晩までスマホばかり見ている、日本人よりも極度なスマホ中毒が、中国人には多いのだ。スマホで情報を得てスマホで交流している。中国人観光客を実際に観察しても、目に付いたお店を見たらすぐスマホ、商品を見たらすぐスマホ、閲覧したり、撮ってアップしたり、何でもいちいちスマホである。

 そこで、徐氏は、アリババグループ「アリペイ(支付宝)」によるオンライン決済サービスの導入(日本ではソフトバンク・ペイメント・サービスやGMOペイメントゲートウェイが取り扱っている)、Wi-Fiの整備を、中国語メニューの作成、中国語ができる店員の雇用、銀聯カード導入などとともに推奨している。

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