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フードリンクレポート

2015年10月27日(火)17:20 トレンド

訪日中国人の圧倒的多数がツアー客。旅行会社と提携して団体客で荒稼ぎするバイキング店も!

訪日爆買い中国人観光客の“爆食”を狙え!(5-2)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年10月26日執筆

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 今年8月に起こった上海株式市場の大暴落、いわゆる"チャイナショク"も何のその。10月1日~7日、中華人民共和国の建国記念日にあたる国慶節の大型連休には、大挙して中国人が日本を訪れ、東京、大阪など日本の主要都市の目抜き通りが中国人観光客で占拠された。家電製品、薬品などを買い漁る中国人の"爆買い"は目を見張るが、レストランを団体客があたかもジャックして嵐のように食べていく"爆食"にも注目が集まる。外食がどのように中国人の"爆食"に対処しているのか。また、"爆食"に引き込むにはどうすればいいのか。(5回シリーズ)

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新宿の焼肉バイキング「味仙荘」の前に停まる観光バス。中国人観光客が連日大型バスで食べに来る。隣の中国料理「林園」は中国人観光客用の専門店。

 一口に中国人といっても、なんせ13億7000万人、日本の10倍以上もの人口を有する国である。共産主義国家で全体主義をやっていたのも事実であるが、たとえば辛いスパイシーな四川料理と、甘いたいがいの料理に砂糖が入っている上海料理は、全く異なる食べ物だ。皆、一緒というわけではあるまい。中国政府の統計は、李国強首相も認めるとおり当てにならないものの、国全体としてみれば世界第2の経済大国は間違いないだろう。一方で国民一人あたりのGDP(名目)は、世界190ヶ国くらいある中で、80位あたりに位置していて、いまだ中進国と言えるだろう。13億、14億もの巨大な市場があるというのは幻想で、貧富の差が大きく、海外旅行ができる余裕ある人は、せいぜい10人に1人、1億数千万人程度と考えておいたほうがいい。上位10%の人に国の総資産の3分の2が集中しているという、中国メディアの報道もある。しかし、それでも大きい。日本の人口と同じくらいの潜在的に日本の外食のお客様になってくれるターゲットが、中国大陸にいる。

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レストランに関する記述はないが、訪日中国人のリアルがわかる本だ。

 中国人インバウンドに詳しい、中国市場戦略研究所代表で多摩大学大学院客員教授の徐向東氏は、著書『「爆買い」中国人に売る方法』(日本経済新聞出版社、2015年6月24日・1版1刷)の中で、「中国では、テレビや新聞はあまり見られていません。そもそも中国の新聞やテレビ番組は、民間会社が自由に作ることはできません。国の規制がかかっているわけです」、「いざとなると、中国人が頼っているのはこうした親戚や友人、知人の情報で、テレビや新聞ではないのです」と指摘する(67~68ページ)。
そして、「本当に自社商品を中国人に買ってもらいたいなら、まず一人でもよいから、その商品を体験してその良さを知った中国人を増やしていきましょう」(66ページ)と、顧客に体験してもらう重要さを強調。体験して良さを知った人たちの口コミが広がることで成功できると、中国人観光客の攻略法を解説している。

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新宿、花園神社前より観光バスに乗り込む中国人。

 つまり、大陸の中国人は、台湾、香港、シンガポールなど東南アジアの華僑、華人と違って、英語ができない人が多いから、中国語簡体字のメニュー表記、中国語を話せる店員の雇用は望ましい。また、決済手段として中国で普及している「銀聯」カードの導入も行った方がいい。が、それよりも大事なことはまず一人にでも体験してもらうことで、体験から広がる口コミこそ、日本人よりもまして集客の肝だと言うのである。残念ながらこの本には、レストランの集客法についての言及はないのだが、直接、徐代表に聞いてみた。

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新宿、花園神社に隣接する中国人観光客ツアーの待合所。中国人にとって東京観光の拠点の1つとなっている。

 徐氏によれば、訪日中国人観光客には3つのタイプがある。第1のタイプが、大型バスで移動するツアーに参加する人で、これが圧倒的多数。東京~富士山~大阪を中心に、予め組まれた日程に従って1週間ほどかけて周遊する、ゴールデンルートが人気。中国人は旅行社が契約したレストランで食事をしていて、外食の自由度が少ない。また、外食に関して、特に何が食べたいというこだわりもない。

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歌舞伎町を観光中の中国人観光客。歌舞伎町の昼は中国人だらけ。

 第2のタイプが、個人の自由旅行で、日本国内に親戚、知人、友人がいる人が行っている。これもゴールデンルートが人気だが、買物がメインで、そんなに食べ物にはこだわらない。そのあたりのチェーン店で食事をすれば、十分と思っている。

 第3のタイプが、お金持ちの自由旅行。日本企業とビジネスをしている人が多く、日本のグルメをよく知っている。北海道のカニ、絶品の寿司など、食にこだわり、日本にいる友人、知人と食べに行く。中国では習近平政権になってから、綱紀粛正、腐敗撲滅の一環としてぜいたくな接待が禁止されており、接待でなくてもぜいたくなことがしにくい情勢になっている。そこで、日本に来て普段できないぜいたくをしている側面もある。富裕層は、中国の人口の3%と言われており、これだけでも3000~4000万人の市場がある。

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「モーモーパラダイス」南池袋牧場。「モーモーパラダイス」と「鍋ぞう」は、旅行会社と提携して中国人のディナー団体客を集めている。

 これら、第1、第2、第3のタイプによって、攻略法が異なる。第1のタイプ、圧倒的多数の団体ツアー客を取り込むには、旅行社と組むのが最善の策だ。これで成功しているのが、ワンダーテーブル。外国人が日本で食べたいメニューで、しゃぶしゃぶやすき焼きが上位に来ることから、ツアー会社、フリーのガイドとタイアップ。「鍋ぞう」、「モーモーパラダイス」にてディナータイムの訪日外国人を積極的に受け入れていて、中国人が圧倒的多数を占める。20~30名の団体が主流となっていて、食べ放題であり、ぜいたくな気分にもなれるので中国人観光客に喜ばれている。

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新宿の老舗焼肉1976年創業「味仙荘」は、中国人インバウンドに活路を見出した。

 新宿の個店で、焼肉食べ放題「味仙荘」の前には連日、大小のバスが泊っていて、中国人観光客の食事処となっている。さまざまな部位の肉をバイキング形式で楽しめる店。もちろん日本人も普通に入れるが、店員も中国人で、店内は中国語が飛び交い、なんだか肩身が狭い思いがする。その隣にある中華料理店「林園」は、中国人団体客専門の店になっている模様だ。

 新宿は花園神社のすぐ横に、中国人観光バスの待合所があり、ツアー客が集結する場所の1つである。歌舞伎町は昼の時間帯、中国人ツアー客がガイドに引き連れられて闊歩しており、日本人は朝、昼勤務のキャバクラ嬢、ホスト、呼び込み、風俗店員をポツポツ見掛けるくらいで、中国人ばかりが歩いているという状況になっている。

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「新宿ライオン会館」。全般に来客数の3割が外国人。4階の「ジンギスカンビアホール」は特に中国人観光客の比率が高いという。

 そうでなければ、銀座の中央通りの各店のように、免税店のすぐ近くの繁華街に店舗を構えて昼間のフリータイムの食事を狙うやり方もある。

 サッポロライオンの「新宿ライオン会館」でも、4階の「ジンギスカンビアホール」は多い時で7~8割の顧客が外国人、その中でも中国人の比率が目立っている。新宿ライオン会館では、3階のイタリアン「ワイン食堂 ブルマーレ」、5階の和食「安具楽」も外国人、特に中国人などアジア圏の顧客に人気という。
 
 サッポロライオンでは、インバウンド対策として、「かこいや」、「安具楽」など主に和食の業態で訪日外国人向け宴会プランを作成し、国内旅行会社経由で送客。全店で、外国人送客サイト「団タメ!」に加入、全店でWI-FI導入を進めるという積極的な取り組みを行っていて、それが実を結んでいる。

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和の空間でイタリアンを提供する「スコルピオーネ祇園」。中華系でもシンガポール人に人気。米国、英国を含め、英語を話す英語圏の顧客が多い。

 なお、際コーポレーションの京都のアッパーなイタリアン「スコルピオーネ祇園」では、外国人顧客が5割だが、欧米人とともに、中華系でもシンガポール人が多い。中華系で同じような顔をしていても、中国本土の人とシンガポール人では、レストランの好みが異なるようだ。

 第2、第3のタイプについては、項を改めて記述したい。

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