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フードリンクレポート

2015年10月02日(金)18:49 トレンド

サードウェーブコーヒーを支えるパン、代々木上原の愛されパン屋「カタネベーカリー」。

進撃のパン!急増するパン屋の進化系スタイルと未来を探る。

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取材・執筆 : 須田萌子 2015年10月2日

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 ここ数年、世の中のパン熱が上がっている。街に一軒しかなかったパン屋が、二軒、三軒と徐々に増え、テイクアウト専門だけではなく店内に飲食スペースを併設する「ベーカリーカフェ」「ベーカリーレストラン」も増え、天然酵母や国産小麦、無添加、オーガニックを謳う「こだわり派ベーカリー」も見かけることが多くなった。パン好き同士が集まって人気のパン屋を行脚する「パン屋めぐり」が流行り、日本各地のパン屋を求めてわざわざ旅に出パンマニアも続出。数十軒のパン屋が一堂に会す「パンまつり」なるイベントも開催されている。今回は、フード業界の中で快進撃を続ける「パン屋」にスポットを当て、さまざまなタイプのパン屋を訪問。進化するパン屋のスタイルや今後の可能性についてレポートする。

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代々木上原の「カタネベーカリー」。

 パン好きならば知らない人はいない、といってもいいほど名の通ったパン屋だ。オープンは2002年11月、今年14年目を迎える。
 
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「カタネベーカリー」があるのは、戸建てやアパートが軒を連ねる代々木上原の住宅街のなか。一階がパン屋、地下がカフェ、2階から上はオーナー片根一家の住居となっている。

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営業時間は7時から18時30分。朝から焼きたてのパンを買える地元の人思いの店。

 「カタネベーカリー」は、小田急線代々木上原駅、京王新線幡ヶ谷駅、いずれの最寄り駅からも徒歩約10分の決してアクセスがいいとは言えない立地ながら、常に店内はお客様で大にぎわい。週末となれば店の外まで大行列ができ、地元の人々だけではなく、遠方からも「カタネベーカリー」のパンを求めてお客様がやってくる。

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「カタネベーカリー」のオーナー、片根大輔氏、41歳。

 「パン屋になったのは22歳のとき。仕事を探していたときに妻から「パン屋になれば」と言われたのがきっかけ」(片根氏)。バイト時代を含めればパン職人歴20年以上だ。

 22歳でパン屋の世界に飛び込んだときから28歳で自分の店を持つと決めていたという片根氏は、大手パン屋「ドンク」で6年の修業を経たのち独立。代々木上原の地でパン屋を開業した理由は、「たまたま近所に住んでいて、この場所にサラ地を見つけたのと、当時近所にパン屋さんがなくて、この街のパン屋さんになりたかった」から。今でこそ代々木上原は「パン屋激戦区」だが、「カタネベーカリー」は、パンの街、代々木上原の先駆者的存在だ。

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店内に入ると、何十種類ものパンが並ぶショーケースがお出迎え。
 
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食パンだけでも3〜4種類。そのほか、バゲット、クロワッサン、菓子パン、惣菜パン、サンドウィッチなど目移り必至の種類の多さ。パンの種類はトータル100以上あるといい、タルトなどの焼き菓子やプリン、シュトーレンやガレットデロワなどの季節商品も含めれば150種類にのぼるそうだ。

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パンには国産小麦を使い、ときには自家製酵母も使用。小倉餡やカスタードなどのフィリングもほぼ手作りとこだわりながら、ほとんどのパンが100円台〜200円台という買いやすい価格もうれしい。
 
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営業時間内も片根氏を筆頭にスタッフはフル稼働。パンは次から次へとひっきりなしに焼き上がる。片根氏のこだわりは「常に自分が現場にいること」。毎日深夜2時半にパンの仕込みに入り、お店が開店してからも常に現場でパンと向き合っている。

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店先には配達用の自転車も。
 
 「カタネベーカリー」は、パンの店頭販売だけではなくケータリングも行い、近所の保育園に届けることもあるそうだ。また、界隈のコーヒーショップやイタリアン・フレンチレストラン約10軒と提携しバゲットやオリジナルのパンを提供。さらに2015年3月から「ブルーボトルコーヒー」と提携をはじめたことで、より注目が集まっている。

 ブルーボトルコーヒーから提携の話があったのは2014年冬。日本に上陸する際に店舗で提供するコーヒーと好相性なパンを探すため、創始者のジェームス・フリーマン氏が日本の人気ベーカリーのパンをいくつも食べ比べ。ブラインドテイスティングによって「カタネベーカリー」の食パンとバゲットを選んだ。現在はブルーボトルコーヒー青山店にパンを1日1回(夏季は2日に1回)納品。毎朝、配送業者がパンをピックアップしにやってくるそうだ。

 ブルーボトルコーヒー青山店で味わえる「カタネベーカリー」のパンは「食パン」「バゲット」「カンパーニュBIO」「イングリッシュマフィン」の4種類。ブルーボトルコーヒーのアメリカ人シェフ、クリス氏監修のレシピによってそれぞれのパンに合った4種4様の調理が施されている。

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アボカド、えんどうとハーブのタルティーヌ(800円)。

 噛みごたえのある「カンパーニュBIO」に、ミントなどのハーブでマリネしたアボカドとスナップえんどうをトッピング。カンパーニュのやさしい酸味と濃厚なアボカドがマッチした、食感も楽しいひと品。
 
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ローストチキン、アスパラのタルティーヌ(850円)。こちらはバゲットを使用。

 パンメニューは注文を受けてから丁寧に調理され、盛り付けも美しい。レストランで提供されるオードブルのようで、ひとつの料理として完成している。

 ブルーボトルコーヒーの日本上陸とともに、一気にブームに火がついたサードウェーブコーヒー。コーヒー豆の産地やトレーサビリティに配慮し、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れられた「こだわりのコーヒー」だからこそ、「こだわりのフード」でお客様をおもてなししたいというブルーボトルコーヒーの姿勢が感じられる。コーヒーだけではなくフードメニューにも注力すること、そして日本のパン屋界に名を馳せる「カタネベーカリー」のパンを提供していることは「ブルーボトルコーヒー」の価値を高めているといえよう。カフェにおいしいフードメニューがあれば、お客様はお茶をするだけではなく朝食やランチなど食事のシーンにも利用できるので来店してもらえるきっかけが増える。

 ブルーボトルコーヒーの担当者によると、パンの評判も上々でお客様から「どこのパンですか?」という問い合わせもあるそうだ。ブルーボトルコーヒーとの提携がはじまり、パンの製造業務が増えたことに関して片根氏は「はじめは大変だなと思っていたが、案外やってみたらこんなに大量のパンを自分たちが作れるということがわかった」と前向き。また、「提携したことで圧倒的にお客様が増えました。ブルーボトルコーヒーがうちを選んでくれたことで、カタネベーカリーは材料にこだわってきちんとしたパンを作っている、と近所のお客様にも再認識してもらえたようです」と以前からの人気にさらに拍車がかかっている様子。カフェとパン屋が提携することで、互いに新しい魅力が引き出されている。

 飲食店との提携について片根氏は、「自分たちのできる範囲であればこれからも応えていきたい。うちの店を使ってもらうことで、提携先がいい感じになるなら、やれることはやる」という。今後の展望は「特になく地道にこのままやっていきたい...でも毎回そう言っていても結局仕事が広がっていくんですよね」(片根氏)。街に愛され、日本に愛され、さらには世界に愛され、常に前進する「カタネベーカリー」。これからも代々木上原の小さな店を拠点に、新しい挑戦を続けるのだろう。

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