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2015年2月09日(月)14:57 トレンド

ブルーボトルコーヒー開店初日の盛況から考察するサードウェイブコーヒーの未来。

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取材・執筆 : 高橋治人 2015年2月7日

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 先日のスナップショットでブルーボトルコーヒーのオープン初日の盛況ぶりをお伝えしたが、今回はさらに踏み込んだ詳細レポートをお届けしたい。またそれと併せて今後、サードウェイブコーヒーのトレンドはどうなっていくのかも考察していこう。

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店は清澄白河駅から徒歩で約10分の場所にある。大通り沿いではなく、近くにはアパートや一軒家も多い。

 今回、オープン初日の行列に並んで痛感したのは、予想以上の前評判の高さだ。はっきり言って、ここまでの行列になるとは思ってもみなかったし、それは並んでいたほかの人も同じであろう。なにしろ前日は雪の予報が出るほどの冷え込みで、この日の朝も相当な寒さだった。しかも平日の朝8:00である。筆者のように仕事の一環で来ているならまだしも、多くの人は会社に出勤しなければならない時間ではないだろうか。中には、出勤前に寄ってみようと考えていたのだろう。名残惜しい面持ちで諦め、列を抜けて立ち去るスーツ姿の人もちらほら見えた。

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店内に入ってすぐ左側にはハイテーブルとスツールが。外やレジ前の行列に比べるとこの席はそれほど込んでいなく、ゆったりくつろぐ姿も見えた。

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その隣にはパーテーションで区切られた小上がりのスペースがあり、そこに同様の8人掛けテーブルとスツールが2列並べられている。

 それにしても本当に不思議だった。誤解を恐れずに言わせていただくと、平日の早朝、清澄白河駅から徒歩10分のコーヒー屋に並べる暇な人がなぜ200~300人もいるのか。大学生ならまだわかる。確かに大学生らしき20歳前後の若者はいた。しかしそれはごくわずかである。筆者のようなメディア・マスコミ関係者も数名はいただろう。そして食品・外食関係の企業マンやマーケティング関係者、同業者の偵察も数組はいただろう。それを鑑みても、あの状況下で並ぶ時間と余裕があるというのは非常に不思議だった。

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せかせか、ギスギスした雰囲気で接客したくないという店側の気持ちは理解できる。15~20分おきに10人ずつ入店させるという規制のため、店内は圧迫されることのない平和な空間が保たれていた。

 長蛇の列になったもうひとつの理由は、思っていたよりもスムーズに回転しないという点だ。並んでいる間スタッフが定期的にアナウンスをしていたが、その概要はこうだ。「お客様においしいコーヒーを飲んでいただくため、一杯ずつ丁寧に淹れております。そのため、お時間がかかっておりますことをご了承ください」。たしかにそれは間違っていない。サードウェイブコーヒーに時間がかかることは、ここに並んでいる人なら理解できるはず。ただ、もしかしたら店側もここまで並ぶとは思っていなかったのかもしれない。ある程度の予想ができていれば、設備や人員を増やしたり、初日のメニューはブレンドコーヒーのみとしたりすることで、もっと早く回せたのではないかと思える。なぜなら、外の行列に反して中はゆとりがあったからだ。ゆったりとリラックスした空間もサービスの内という考えかもしれないが、このギャップは不思議でならないというのが正直な感想である。

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創業者のジェームス・フリーマン氏は、セカンドウェイブでもあるスターバックスなどのコーヒーチェーンをひどく嫌った。なぜなら味はうまいがあまりにもマニュアル化・効率化されており、一杯に対する心が込められていないと感じたからとか。ゆったりとした空間づくりは、同店にとって欠かせないテーマなのかもしれない。

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レジの奥はかなり広いスペースが確保されており、ラックには豆のストックなどが置かれていた。また、店内には数人の外国人スタッフがおり、おそらくアメリカ本国の従業員だと思われる。

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スペースに関しての情報といえばもうひとつ。この倉庫のような空間には2階があるが、ここはスタッフ専用で客席はない。聞けばここでペストリーを作っているのだそう。また、オフィスのような空間も用意されているのかもしれない。

 続いて商品の味をレポートしよう。メニューリストの詳細は前回のレポートを参照していただくとして、この日の豆はブレンドとシングルオリジンが各1種類用意されていた。前者はエチオピア産とスマトラ産を配合した「ベラ・ドノヴァン」で、後者はナイロビ南方にあるニエリという町の小自作農者組合による「ケニア・ニエリ・ガザイジ」。透明なグラスに注がれたドリップの「ブレンド」(450円)は浅煎りの繊細な味わいで、フルーティーな香りや心地良い酸味を感じられる奥深いおいしさだった。

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テーブルの奥のダストコーナーに置かれたさまざまなアメニティ。コーヒーカップが透明なのもひとつのポイントだ。

 エスプレッソドリンクは「カフェラテ」をセレクト。同じブレンドの豆で520円だったが、ドリップとエスプレッソでは焙煎の深さや引いた豆の粗さ、抽出方法も全く違う。当然ながら、全く違う味のコーヒーができ上がるのだ。さらにカフェラテはホットミルクも入っているため、やはりドリップとは違うが、ビター感はしっかりとありながら、マイルドな甘味とふくよかな香りが余韻として残る極上の一杯に仕上がっていた。

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ラテアートも描かれたカフェラテ。コーヒーのしっかりとした苦みはありながら、マイルドな口当たりで後味はスムース。真冬の寒空でも心温まる、至福の一杯だ。

 そしてこの日の午後には品切れとなったらしいペストリーも紹介。購入したのは「リエージュワッフル」(500円)と「ダブルチョコレートクッキー」(300円)だ。前者はカウンター内で一枚ずつ丁寧に焼かれており、できたてを楽しめる。少々値段は高いと思えるが、サイズも大きく食べ応えがあるので良しとするところであろうか。

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ペストリーはレジのガラスケースの中に置かれている。全部で9種類のはずなのに5種類しかないということは、この11:30時点で売り切れていたか、この日は最初から用意されていなかったか、あえてここに置いていなかったかのいずれかだろう。

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できたてというのもあって、表面はサクッとして中はふかふか。生地自体にほのかな甘みがあり、当然の如くコーヒーとベストマッチな味わいになっている。

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これがダブルチョコレートクッキー。ホームメイドのようにしっとりとしたソフトな食感と、チョコチップを思わせる塊がたくさん入っていて、かなり甘めだがおいしい。そしてこれもサイズは大きかった。

 昨年秋にオープン予定がずれて、2月のオープンとなったこのブルーボトルコーヒー。3月7日には2号店が青山に、続いて3号店が代官山にオープンするようだが、こちらはより都心ということもあって同様の行列が予想できる。昔から今も海外の飲食チェーン店が初上陸すると、決まって客が押しかけてニュースになるが、その理由はパンケーキやポップコーン、ハンバーガーなどのスイーツやファストフード、もしくはステーキハウス系のインパクトや話題性のある業態の出店だからだと思っていた。だからこそ、そのような業態は原宿や銀座、六本木といった派手な街を選んでいるとも。要するに、筆者はここまでサードウェイブコーヒーで行列になるとは思っていなかったし、さらに言えば、サードウェイブコーヒーは行列になってはいけないとまで思っている。

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店内入口スグのところでは、豆やグッズなどを購入できる。なお、商品に交じってモバイルレジ「Square」のPOPが見えるが、導入している証だろう。

 なぜならば、サードウェイブコーヒーはライフスタイルだという理想を思い描いているからである。この手のショップが多いのは、清澄白河も含むイースト東京のベイエリアと、世田谷区の中でも渋谷区と目黒区に隣接したエリア、そしてそれこそ渋谷駅から東急東横線にかけての渋谷区と目黒区にまたがる街。これらに共通するのはクリエイターやアパレル関係者、お洒落IT系の住まいやオフィスがあったり、またはそれ以外でも、比較的お金に余裕があってトレンドへの関心が高い30~40代が多く住んでいるということである。筆者の妄想かもしれないが、彼らの多くはミーハー的行為をかっこ悪いと思うため、行列に並んだりSNSに投稿して主張したりということはしない。近所にこだわりの豆を使ったおいしくてセンスの良いコーヒー屋があれば、ライフスタイルの一環としてそこに通い続けるのだ。一方もしそこが行列店であったならば、非日常の居心地悪い空間と判断し、行くことはない。

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なお、この行列のスペースを駐車場と書いているメディアもあるが、直接スタッフに聞いたところ車を停めてはいけないらしい。自転車やバイクはOKとのことなので、駐車場ではなく駐輪場である。ただ、大型車を3台ほどは余裕で停められそうなスペースがありながら、何に使うのだろうか。これも心に残った大きな疑問のひとつである。

 今回の行列は"コーヒー界のアップル"と呼ばれるブルーボトルコーヒーの上陸による例外だったのだろうか。はたまたこれはサードウェイブコーヒーの本格的ブームの幕開けであり、この成功例をモデルケースに、新たな有名サードウェイブコーヒーが一攫千金を狙って上陸してくるのだろうか。いずれにせよ、個人的にはサードウェイブコーヒーのトレンドはすぐに飽きられるような一過性のブームになってほしくないと願うばかりであり、ゆっくりとしたたかに根付いてほしいというのが心情である。真のコーヒー好きが増えるのは歓迎すべきことであるが、爆発的なヒットになると世間の熱が冷めたときの反動が大きい。ブルーボトルコーヒーの原点が、セカンドウェイブの効率化に対するカウンターカルチャーであったように、極端な商業主義に走るのではなくひたすらにおいしさを求めてコアなファンを生み出していくような、センスあふれる成長戦略であってほしい。未来の予想というか願望になってしまったが、ブルーボトルコーヒーのオープンで感じたいくつかの想いを述べさせてもらった。とにかくまずは来月の青山とそれに続く代官山店のオープン、そしてこの清澄白河店の今後しばらくの動向に注目していきたい。

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