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ぶっちゃけどうよ!

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2014年12月15日(月)17:52

狙うは"パクチーファン"!?流行のパクチーは、外食の武器になりえるのか。

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取材・執筆 : 小原愛里 2014年12月15日

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 パクチー料理専門店の先駆け、「パクチーハウス東京」(東京・経堂)がオープンして早7年。巷では、エスニック料理の人気も手伝って、パクチーにハマる"パクチー女子"が増殖。今年に入り、パクチーに特化した店が首都圏や大阪に相次ぎ開業し、料理やドリンクにパクチーを取り入れる業態も増えている。独特な香りと味わいゆえ、好き嫌いが大きく分かれるパクチーだが、果たしてパクチーは、外食店の強力な武器となりうるのか。

 今期から"パクチー鍋"の提供を始めた、際コーポレーションの鍋専門店「ゆるり屋」。ジャックポットプランニングが10月にオープンした、ラム肉とパクチー料理の専門店「ラム&パクチー Salad Days」。そして、東京・池袋の人気店「アガリコ」の大林芳彰氏がプロデュースを務めた、10月末開業のパクチー料理専門店「パクチーファン 東京」。以上3店を訪れ、パクチーブームの実態に迫ってみる事とした。

 まず足を運んだのは、一年を通して鍋料理を提供する、際コーポレーションの鍋専門店「ゆるり屋」(東京・渋谷)。

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鍋の種類は、昨年の101種から、今年は48種に厳選。中でもイチオシなのが "8種のパクチー鍋"だ。

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メニュー表。パクチー鍋は、鶏ハリハリ鍋、肉ミックスカレー鍋、鶏トマト鍋、豚バラしゃぶしゃぶ、羊肉大陸鍋、ホルモン塩鍋、ホルモン麻辣鍋、水炊き餃子鍋の全8種が揃う。おすすめという、鶏ハリハリ鍋をオーダーした。

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鍋料理以外のメニューも充実している同店。パクチーを使った料理は、天ぷらとサラダ3種が用意されていた。写真は"パクチーと青唐辛子のサラダ"(780円)。
 
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水菜の代わりに、フレッシュなパクチーが鍋の中央に山盛りにのった"パクチー 鶏ハリハリ鍋"(1人前2300円)。パクチーは、生産量トップの静岡県産だ。

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具材はパクチーのほか、白菜、じゃがいも、玉ネギ、鶏モモ肉、手羽元、焦がしネギ、ニンニク。塩ベースのスープには、ペースト状のパクチーだれとオリーブオイルがたっぷり。パクチー版ジェノベーゼとでもいうべきか。

 ハリハリ鍋というネーミングから、あっさりとした味わいの鍋をイメージしていたが、パクチーのジェノベーゼ鍋とは、いきなり予想を裏切られた。

 ただ、多くのお客様が抱きそうな"パクチー=エスニック料理=香辛料が利いていてなんとなくヘルシー"というイメージとは正反対で、ヘルシー感を期待してしまう分、少々胃もたれするようにも感じた。

 スープのパクチーはほのかに香るほどで、山盛りのパクチーは食べ進めるうちに火が通ってかさが減り、パクチー嫌いの人にも食べやすそうだ。そもそもパクチー嫌いのお客様は、48種もの鍋の中からパクチー鍋を選ばないとは思うが...。

 同店では、昨年まで100種以上の鍋料理を提供していたが、今期は48種に絞った。その中になぜパクチー鍋を取り入れたのか聞いてみると、「社長の提案で」とのこと。競合の激しい鍋料理で他店との差別化を図るため、女性を中心に人気の高まっているパクチーを新作のメイン食材に据えたようだ。実際、ほとんどが女性からのオーダーだという。

 しかし、男性店員によくよく話を聞いてみると、「実は僕、パクチー、ダメなんです」と打ち明けてくれた。好き嫌いが極端に分かれる食材なので、提供を考える際は、パクチー嫌いのスタッフがある程度いるのは覚悟の上で、ということになるだろう。

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鍋の〆は、うどんかラーメンがおすすめとのことだったので、ラーメン(1人前300円)をオーダーした。

 パクチー好きとしては追加のパクチーが欲しいところだと思うが、メニューには「追加パクチー」の記載はなかった。試しに追加パクチーができるか聞いてみたところ、最初に鍋に盛られていた程度の量のパクチーが750円で追加できるという。〆のラーメンの倍以上の金額となると、手を伸ばしにくいように感じた。

 平日19時頃の店内では、5~6組のお客様が鍋を囲んでおり、通りがかりに鍋の中をチェックしてみたが、緑色のパクチー鍋は見受けられず。とろろを使った鍋や、メレンゲを豆乳スープに浮かべた人気メニューの"極楽鍋"なのか、白っぽい色合いの鍋が目立っていた。

 パクチーには、体内にたまった毒素を排出するデトックス効果があるとされ、香りも強いため、体によいものを食べていると実感しやすい。この日はカップルの来店がほとんどだったが、美容に効果的な点などを訴求し、ヘルシー感のあるパクチー鍋とパクチー料理を提案できれば、"パクチー女子"の女子会需要も見込めそうだ。

 続いて訪れたのは、ジャックポットプランニングが世田谷区太子堂に開いた「ラム&パクチー Salad Days」。

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三軒茶屋駅から徒歩約7分。民家を改装した2階建ての店舗で、入り口に大きく描かれた"羊"のイラストが特徴的。店内にも、"羊"が"パクチー"をくわえた可愛らしい絵があちこちにあり、店のウリが一目瞭然だ。

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カウンター上には、お客様のリクエストで登場したという"裏メニュー"がずらり。きんぴらや塩焼きそばなど、馴染みのあるメニューにパクチーをプラスしてアレンジした料理が目立つ。

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ドリンクメニュー。パクチーを使ったメニューはモヒートのみ。このほかには、ワインのラインアップが充実していた。

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イラストを駆使して分かりやすく書かれたメニュー表。料理名の前にあるパクチーのイラストで"パクチー度"が分かるようになっている。

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充実のラム料理。ラムとパクチーを組み合わせた料理も多数揃う。

 メインは、ラムチョップやモモ肉のローストなどを勧められたが、パクチーを使った鍋料理ということで"ラムしゃぶしゃぶ"をオーダーした。

 なぜラムとパクチーという、どちらもかなり好き嫌いの多い食材をメインに据えたのかお店の方に尋ねると、「ラムとパクチーの素晴らしい相性を1人でも多くの人に知ってほしかった。パクチーをありきたりに牛肉や豚肉と合わせたって面白くないでしょう」とのこと。

 クセのある食材同士のラムとパクチー。ハマる人にはとことんハマるし、エスニック料理とパクチーの組み合わせには慣れたパクチー女子にも新鮮な組み合わせだ。

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"パクチーミントモヒート"(700円)は、女性に人気が高いメイソンジャー入り。パクチーの産地は、こちらも静岡県だ。
 
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おすすめの"パク根とはすのきんぴら"(400円)。葉や茎と違い、パクチーの根は火を通しても香りが強い。

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"パクチーサラダ・デラックス"(900円)。ブルーベリーやラズベリーを使ったフルーティーなベリードレッシングと、クセのあるパクチーがよく合う。

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バゲットは、特製のパクチーオリーブオイルとソルト&ペッパーでいただく。「押すとびっくりしますよ」と言われたプジョーの電動ペッパーミルは、押すと「メ〜」と羊の声のような音が...。お客様を楽しませる仕掛けが満載だ。

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"ラムしゃぶしゃぶ"(1人前1500円)。ラムの肩ロースの下には、たっぷりの白菜と、ねぎ、エリンギ、しめじなど。別皿のパクチーと水菜は、鍋に加えても、生のまま食べる時に加えてもOK。好きなタイミングで入れられるので、生のまま香りを楽しみたいパクチー好きにも嬉しい。

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しょうがの利いたあっさりとしただしに、たっぷりの野菜、きのこ、ラム肉と、ヘルシー感のある鍋。お好みでこしょうの利いた塩だれと、ゆずこしょう、大根おろしと一緒にいただく。

 訪問した平日の19時頃には、地元の方と思われるファミリーのお客様が1組だけで、その後21時近くまでほかのお客様の来店はなかった。お店の方に話を聞くと、土日などには女子会などの需要が高く、"パクチー女子会"が目立つという。

 最後に訪れたのは、東京・池袋の人気店「アガリコ」の大林芳彰氏がプロデュースする「パクチーファン 東京」(東京・港)。

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新橋西口通りに10月末にオープン。居酒屋や焼肉店が乱立する中、「パクチーファン」の文字が目立つ。

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ビル自体は新橋駅から徒歩3分程度の好立地だが、店舗は狭い階段を上がった3階に位置する。エレベーターはなし。ふらりとは入りにくい場所にあり、告知もほぼフェイスブックのみながら、ネットで見て来店するお客様が多いそうだ。

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中華料理からタイ料理まで、幅広いメニューをラインアップ。ほぼすべてにパクチーが入っている。目玉は、激辛・コク旨白湯のWスープ火鍋。
  
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ドリンクもパクチーを使ったものが多数。右側の枠内はすべて、パクチー入りのドリンクだ。

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珍しい"パクチー酒"は、梅酒ベースにパクチーの香りがほんのりと香り、クセになる味わい。

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パクチーモヒート(手前・600円)に、パクチーハイボール(奥・550円)。同店も、使用しているパクチーは主に静岡県産だ。日本では水耕栽培が多いが、水耕栽培のものは香りが弱いため、土壌栽培のものにこだわっているという。

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スナックの居抜きで出店したという店内だが、カウンターにはタイルが敷かれているほか、キャンドルや缶詰が置かれ、"どこを撮ってもかわいい"内装に。個性派食材はSNSにアップされることも多く、この点も女性から支持を集めるポイントだ。
 
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シュウマイにもフレッシュなパクチーがたっぷり。ニンニクの利いたパクチーのつけだれ付き。

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ナツメや龍眼など漢方食材がふんだんに入った、本格的な味わいの火鍋。辛さは調節可能だ。たれはタイスキソース、ごまだれ、パクチーだれの3種類。トッピングにも、葉よりも香りの強い茎を細かく刻んだパクチーが用意されており、どこまでも"パクチー感"を追求できる。

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肉は鶏肉、豚肉、ラムの3種類。生卵をからめて鍋に投入する。生卵を殻のまま盛り付け、"写真が撮りたくなる"ように見せている。

 パクチー食べ放題を謳う店も多い中、同店も食べ放題を謳うことを検討したというが、通常のメニューの価格を安く抑えるため、現在は食べ放題にはしていないという。

 普段はパクチー女子が集う女子会が多いほか、新橋という場所柄か、平日は意外にもパクチーにハマッたおじさま方、"パクチー男子"の来店も多いとのこと。
特に金曜日の夜は満席状態が続き、リピーターのお客様をお断りせざるをえない日もあるという。

 訪問した土曜日の夜には、カップルや女性グループ、ファミリーのお客様のほか、男性のおひとり様の姿もあり、幅広い客層を集客していることが窺えた。

 以上、パクチーを主役に据えつつも、それぞれアプローチの異なる3店についてレポートしてきたが、改めて、外食にとってのパクチーの魅力とは一体何だろうか。

 タイ語ではパクチー、中国語ではシャンツァイ(香菜)、英語ではコリアンダー、スペイン語ではシラントロ、アラビア語ではクズバラ...と、世界中で親しまれていることからも分かるように、パクチーはタイ料理やベトナム料理、中華料理はもちろん、インド料理にポルトガル料理と守備範囲が非常に幅広く、もちろん和食にもよく合う。

 サラダや鍋、揚げ物などどんな料理にもアレンジでき、実はどんな業態にとっても取り入れやすく、しかも目立たせやすい食材であると言える。

 お客様が外食に、家庭では食べられないような食材や料理を求め、SNSにアップして楽しむ時代。口コミはSNSであっという間に広まり、個性派食材のパクチーでは特に「パクチー好きがパクチー好きを呼ぶ」という構図が生まれる。

 また、「実はパクチーがあまり好きじゃなかった」というお客様が来店後、すっかりパクチー好きになった、という例もよく聞かれる。「ゆるり屋」のように、通常メニューにパクチーをプラスし、目玉として新しい客層を呼び込むのか。あるいは、珍しさから馴染みのお客様に注文してもらって、客単価アップを狙うのか。

 もしくは「パクチーファン東京」や「ラム&パクチー」のように、パクチーに特化した新業態で、遠くからでも"探して来てもらえる店"を目指すのか。万能選手だからこそ、パクチーは目的に応じて使い分けることで強力な武器になるだろう。

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