スマートフォン版のフードリンクニュースを見る

RSSフィード

ぶっちゃけどうよ!

ぶっちゃけどうよ!

2014年12月17日(水)14:56

すた丼もちょい飲み参入で競争激化、一人鍋の影響はいかに!?

記事への評価

  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
0.0

取材・執筆 : 中山秀明 2014年12月17日

キーワード :     

 「ちょい飲み」。ニュースでもしばしば取りあげられ、耳にすることも多い昨今の外食トレンドのひとつだ。対象は主にファーストフード店やファミリーレストランに回転寿司、また「日高屋」や「山田うどん」などの麺と定食をウリにするジャンルでは特に「ちょい飲み需要」は高いようである。

 そんななか冬になり、前シーズンで何かと話題になった丼チェーン店の鍋フェアがスタート。ここでの注目ポイントはふたつある。ひとつは「ワンオペ」騒動で物議を醸した「すき家」が、環境を整えて復活させたという点。もうひとつは、どの企業も価格を若干値上げしているということだ。

 この値上げは必ずしも増税だけが要因ではなく、「ちょい飲み」をするユーザーが増加傾向にあることを受けて、「一人鍋」を訴求しての売り上げアップが目論みではないかとうかがえる。そこで今回はいくつかの丼チェーンに行き、各店の特徴を比較しつつレポートしていきたい。

DSC_0204.png
ブランド名に泥を塗ったといえるほどの「すき家」の鍋。果たしてどのような改善策がなされたのか。

 まずは「すき家」。今年2月14日に、先行の吉野家を追随する形で3つの鍋メニュー(「牛すき鍋定食」(並盛580円)、「とろ~りチーズカレー鍋定食」(並盛650円)、「野菜たっぷり牛ちり鍋定食」(並盛650円)をスタートしたが、オペレーション難の無理がたたって臨時閉店に追い込まれたり、深夜営業を中止する店舗があったりしたが、この11月27日から改めて鍋メニューを投入した。

DSC_0206.png
「牛すき鍋定食」を「ごはんミニ」(30円引き)でオーダー。なお「すき家」の定食は+30円で大盛り、+60円で特盛りにできるが、ちょい飲み派のために「ごはんなし」も検討すべきであると強く思った。また、ビールは中瓶(500ml)で410円と比較的安めではあるが、一人鍋の需要で考えると中ジョッキや小瓶をより安価で用意しても良いのではないだろうか。

 前シーズンと比べると、やはりいくつかのポイントで改善がされている。ひとつはメニューを3種から1種の「牛すき鍋定食」だけに絞り、減ったメニューの代替策としてトッピングのチーズやおろしポン酢でアレンジすることを提案。また肉を生の状態で出すことで、客側にトングを使いながら最終調理させるというスタイルにした。要するに"本来のすき焼きスタイル"である。これはオペレーション負担を軽減するためだが、さらに調べてみると、工場で肉以外の食材1食分を袋詰めしているそう。そして、牛肉の価格の上昇なども踏まえ価格は並盛580円から734円へと値上げし、その分容量は3割増したとか。

DSC_0208.png
肉は生で提供されるが、トングや調理法も用意されるので問題はないし、自分の加減でレア~ミディアムレアにできるのはうれしい。そしてボリューム感も厚みもあり、純粋においしい、おいしくなったと感じた。ただ、肉に比べて火の通りにくい野菜もほぼ生の状態なので、もっと調理してほしいと思う。

 次は昨年12月5日から冬~春限定で鍋を発売し、今回は早めの10月29日から開始した「吉野家」。前回の結果でいえば今年5月末までの累計で1400万食が売れたようで、業績改善の立役者とも噂されている同社の鍋だが、こちらは基本的に同じメニューで「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」のふたつ。ただし価格は前回の並盛590円から40円アップの630円となった。

DSC_0220.png
「牛チゲ鍋膳」のライスなしバージョン「牛チゲ鍋(卵付)」(並盛530円)。ビールはグラスもあるが、ジョッキをオーダー(380円がキャンペーン中で300円に。グラスは280円が250円だった)。「ポテトサラダ」は130円だ。オペレーションのミスで取り皿がなく、非常に食べづらかったのが残念。

DSC_0224.png
「すき家」との違いでいえば、こちらのほうが最初からしっかりと煮込まれているため野菜はしっとり。だが逆に肉は固くなっている感も否めないし、薄い。また「すき家」の豆腐は焼き豆腐なのに対し、「吉野家」は絹豆腐。肉の量を含めてボリュームは「すき家」のほうが多く、これが約100円の差なのかもしれないが、それでも食べ比べてみると「すき家」のほうが値ごろ感はあると思える。

DSC_0217.png 
だが、「ちょい飲み」という観点でいえば、「吉野家」はライスなしの単品で上記2メニューが530円で用意されており、さらにいえば「牛すき鍋にビールはいかがですか。」とお品書きに書くことで「ちょい飲み」を提案している。これは「吉呑み」がヒットになっている同社だけに、さすがのアピール手法だと感じた。

 丼チェーンの2大ブランド以外も見てみよう。すき家と同じくゼンショーグループである「なか卯」では、実は「すき家」よりも早い11月19日から鍋をスタートさせている。しかも、「牛うどんすき鍋膳」(並盛690円)、「牛うどんチゲ鍋膳」(並盛730円)、「鶏担々うどん鍋膳」(並盛690円)の3メニューでの展開だ。

DSC_0258.png
どれもご飯大盛りが無料なのはありがたいが、ちょい飲み客にとっては不要なサービスであるといえる。むしろ、「吉野家」のようにライスなしの低価格バージョンがほしい。

DSC_0263.png
「鶏担々うどん鍋膳」。ビールは中ジョッキのみだが、キンキンの凍った状態で出てきたのは評価できる。またうどんをひとつのウリにしているだけあって麺も美味で、一貫して使用している「こだわり卵」という卵も濃厚でおいしかった。

 とはいえ、いくつかもったいないと感じた部分がある。筆者が訪れたのは阿佐ヶ谷店なので他店は違うのかもしれないが、せっかくビールを期間限定で400円から320円に割引しているにも関わらず、店内のお品書きにビールが載っていないためオーダーしづらいのだ。これは同店が券売機制だからかもしれないが、「なか卯」には「唐揚」という非常に強力な武器がある(自家製の味付けでおいしく、さらに価格が3個100円、5個150円、10個300円とコストパフォーマンスが高い)ので、酒の同時オーダーを訴求すれば、より売り上げを見込めるはずだと感じた。

 最後は、濃厚な味と豪快な量で他のチェーンと一線を画す「伝説のすた丼屋」がはじめた鍋メニューを紹介しよう。しかも本八幡店では12月1日から2階を「すたのみ」という居酒屋業態にしてオープンさせたということで、ここでは「すたのみ」についてのレポートも含めて鍋を紹介する。

DSC_0232.png 
「伝説のすた丼屋 本八幡店」の入口。店舗が独立しているわけではなく、店内1階から2階に上がったフロアが「すたのみ」というわけだ。

DSC_0240.png
メニューは豊富で、かつ料理も95~278円と安く、生中ビールも一杯278円で居酒屋チェーンと比べても安価であり、「吉呑み」の300円と比べても勝っている。店のイチオシは"すた丼屋特製"と銘打たれた「餃子(235円)」、「から揚げ(235円)」、「豚の串揚げ(235円)」、「モツ煮(278円)」の4品のようであるが、1階で提供されている通常のすた丼メニューもオーダーできるとあって自由度は高い。

DSC_0245.png
モツ煮とビールとから揚げ。モツ煮は比較的量が少なめと感じた。また、ボリューム自慢の「すた丼屋」の店であるが、丼以外のメニューの量は普通である。

DSC_0247.png
餃子は5個で235円。「餃子の王将」の「餃子」が6個259円(関東)なので、それに比べれば少々割高といえる。

DSC_0249.png
豚の串揚げは2本なので1本117.5円だ。奥の酒はハイボールで、325円とビールよりもやや高い。

DSC_0250.png
「牛のすた鍋~特選すき焼き仕立て~(ライス、玉子付き930円)」。鍋はほかに「豚肉と水餃子のキムチ鍋(ライス、温玉別添え880円)」、この2種類が用意されている。

 豊富なメニューとリーズナブルな価格は素晴らしい。だが、なにかひとつ物足りない気がしないでもないのだ。あえて改善点を挙げさせてもらえば、すた丼の具の部分だけを別皿で提供しても良いのではないだろうか。鍋についても同様で、これは「すき家」と「なか卯」にもいえるが、ライスなしバージョンが欲しい。というのも、鍋をつまみに酒を飲みたい人にとってライスは不要であり、そうでなくても鍋にはうどんが入っているので、炭水化物は余計に感じてしまうのだ。

DSC_0251.png
「伝説のすた丼屋」の鍋は他の牛丼チェーンに比べて割高感が否めない(これは同店の価格自体が比較的高価なので当然かもしれないが)し、実際食べた感想は普通の鍋の味でボリュームも普通。「伝説のすた丼屋」らしさを感じられなかったというのが正直なところである。

 一連の調査を通してすべての店に感じたことは、一人鍋を利用してのちょい飲み派を呼び込む対策が不十分であるというもったいなさ。先述した、ライスなしの鍋メニューを置くことや、よりアルコールとのペアリングを訴求すること。さらには、ビールが苦手な人のためにハイボールやチューハイなどを置くことも検討すべきだと思う。

DSC_0242.png
オープン初日の12月1日、21:30ごろ訪れて筆者以外はノーゲストの「すたのみ」。ネットをはじめ、まだあまり周知されていないようなので今後に期待したい。

 また今回行った4つの店は、すべてにテーブル席が用意されていた。このゾーニングも工夫すれば、複数名でのちょい飲み客を呼び込むこともできるはず。ちょい飲みの需要はまだまだ伸び盛りであろうし、これを逃す手はない。もうすぐ迎える2015年。新しいサービス、メニュー、業態など、各社の展開に期待したい。

読者の感想

興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

この記事をどう思いますか?(★をクリックして送信ボタンを押してください)

興味深い
役に立つ
送信する
誰かに教えたい
  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

( 興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

Page Top