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取材・執筆 : 長浜淳之介 2016年2月29日執筆
2015年後半から16年前半にかけて、東京を中心に新しい商業施設のオープン、レストラン街のリニューアルが相次いでいる。商業施設事業者は、2020年の東京オリンピックに向けて変化を遂げようとしている東京を、日本をどのように表現しようとしているのか。まとめてみた。(6回シリーズ)
JR海老名駅の駅前、再開発エリアにオープンした「ららぽーと海老名」。
三井不動産が展開している郊外型ショッピングモール「ららぽーと」は昨年終りに、神奈川県海老名市に「ららぽーと海老名」、東京都立川市に「ららぽーと立川立飛」をL相次ぎ出店。いずれも東京近郊の駅前に立地して交通の利便性が良く賑わっている。
三井不動産・広報では「弊社では立地に合わせてコンセプトを考えていく方式なので、駅前だから出店したわけではない」と言っているが、これから高齢化社会が進んでくると、車を自分で運転するより、公共交通を使って移動する人が増えてくる。ショッピングセンターの立地を考える上でも、示唆するものが多い施設ではないだろうか。
「ららぽーと海老名」のレストランは23時まで営業。
昨年10月29日、JR相模線・海老名駅に直結する「ららぽーと海老名」が開業した。敷地面積3万3000㎡で263店が集積している。
ブリッジで、小田急と相模鉄道の海老名駅にも連絡しており、3線が利用できる便利な立地にある。従来、神奈川県海老名市の中心部は、ずっと海老名駅の東口であり、イオン、丸井の入居するビナウォークなどの主要商業施設も東口にあった。
開発が遅れていた西口に、JRの駅ができたのは1987年で、それまでは小田急・相鉄の駅のすぐ近くを通っているにもかかわらず駅がなかった。
タリーズの「丸の内CAFE会」。日本茶など和のメニューも取り入れた業態。
今まで、開けていなかった場所ではあるが、JR海老名駅開業以来、オフィスビルができてきており、西口で働くビジネスマン、OLが食事をしたり、夜にちょっと飲んだりする場所がなかった。従って、「ららぽーと海老名」は従来のショッピングセンターの機能に加えて、ビジネスパーソンの飲みの需要にこたえるような設計になっている。レストラン、フードコートは基本、23時まで営業している
3階フードコートと4階レストラン街。
「ららぽーと海老名」の3階フードコート11店は、そのような理由で飲めるのが売りになっており、昼は普通にファミリー、主婦を集客しているが、夜には照明が暗めになって雰囲気が変わる。ランチは満席になるのに対して、夜は6、7割の入りという感じだが、普通の郊外型ショップングセンターのフードコートよりは入っている感がある。
フードコートのラインナップ。
お酒を提供しているのは、プロントコーポレーションが経営する「エ・プロント」で、店舗でお酒を売るだけではなく、ビアガールが客席を練り歩いてビールを売るサービスを行っている。
飲める「ららぽーと海老名」フードコート。
プロント・広報によれば、アルコールとカフェ利用の割合は4:6で、案外とお酒が売れている。最近は昼からもちょっと1杯飲む人が増えているのも、関係しているのかもしれない。人気商品は、「ザ・モルツ」と「ザ・プレミアム・モルツ」で、カフェのほうでは「チョコレートブラウニーラテ」が好評とのこと。フードは、天然酵母パンのホットドッグ、天然酵母チェダーチーズドッグ、ポップコーン(バター)が売れている。
お酒の提供を担う「エ・プロント」。
各テナントで、お酒のつまみになるような小皿料理を出しているのが、「ららぽーと海老名」のフードコートの特徴。たとえば、「エ・プロント」のすぐ隣にある、「博多めんたい やまや食堂」では、定評のある「やまや」の明太子をはじめ、一品ずつおかずが選べる方式なので、ごはんと汁物を注文せずおかずだけ頼めば、酒のつまみになる。
やまや食堂。
親子丼「鶏三和」では唐揚げを売っているし、「讃岐うどん 高松勅使」には天ぷらもある。「大阪グルメ てっぱん屋台」には串揚げや串かつもある。ピッツァなら「Salvatole Cuomo」、「仙臺たんや 利久」の牛たん、「京鼎楼小館」の小籠包など、充実したお酒の友が揃っている。
各店の小皿料理を集めて、一杯やれる。
締めも、前出讃岐うどん、つけ麺の名店六厘舎による「久臨」のつけ麺や中華そば、「キャンプ・エキスプレス」のカレー、海鮮丼「小田原港わらべ」のしらす茶漬けなどが選べるというわけだ。
キッズメニューを充実させた「カイルア・ウィークエンド」。ファミリーにも人気。
4階のレストラン街は、10店あるが、神奈川県で絶大な人気を誇るハンバーグ・ステーキの「ハングリータイガー」が入っている。ゼットンのハワイアン業態「カイルア・ウィークエンド」は、店内にキッズスペースを設けたり、キッズメニューを充実させたりと、ファミリーを意識した店になっている。
この両店のような食べ放題のビュッフェは商業施設には欠かせない業態だ。
パエリアを中心としたスペイン料理「リコテーブル」、餃子・中華「大連餃子基地DALIAN」、熟成豚かつ「だいち」、イタリアンバル「バル・ピローノ」、鉄板焼「寿々之助」といった専門業態。回転寿司「大起水産」に、あとの2店は食べ放題の「串家物語」と「ザ・ビュッフェ・ダイナー」だ。
個室和食「酒菜の隠れ家 月あかり」と炭火焼肉「輪火」。1階の路面にある。
1階のバスターミナルに面した部分には、地元厚木市に本社があるオーイズミダイニングの個室和食「酒菜の隠れ家 月あかり」と炭火焼肉「輪火」が路面の店のように軒を連ねており、ショッピングセンターの中からは入れない構造になっている。この2店に隣接して、タリーズコーヒージャパンの和のテイストを取り入れたカフェ「丸の内 CAFE 会」があり、お酒を飲んだ後にお茶を飲んでくつろげる。
行列が絶えないフレンチトースト専門店「アイボリッシュ」。
また、2階にあるフレンチトースト専門店で福岡から進出した「アイボリッシュ」は、いつも行列になっており、人気の高さが示されている。
「ららぽーと立川立飛」。多摩モノレールの立川立飛駅より、新しく設けられたブリッジで連絡している。
「ららぽーと立川立飛」は昨年12月10日、東京都立川市にオープン。西東京では初のららぽーとで、エリア最大級の約250店が集結している。元はゴルフ場だった場所で、キッズエリアを備えた芝生の公園から、晴れた日は富士山も望める。「音楽」、「文化」、「子育て」がキーワードになっており、ショッピングだけでなく、子育てや音楽活動へのサポート、地域の憩いの場の提供も重視している。延床面積は約15万4000㎡、駐車場は3100台が停められる。多摩モノレールの立川立飛駅より、新しく設けられたブリッジで連絡しており、改札から歩いて1分で2階の入口に到達できる。
カフェアミーゴ。ゼットンの提案する、カリフォルニア風メキシカンカフェ。
レストラン・カフェは17店。改札を出てブリッジを歩いていると、最初に右手に見えてくるのが、ゼットンの経営する新業態のメキシカンカフェ「CAFE AMIGO(カフェアミーゴ)」である。1店のみの隔離されたスペースに立地し、路面の個店のような佇まいとなっている。カリフォルニアのサーフカルチャー、ヘルシー志向をメニューや内装に取り入れており、純然たるメキシコ料理ではなく、和食、洋食、ハワイアンも取り入れたカルメックス(カリフォルニア・メキシカン)創作料理の店である。
「カフェアミーゴ」の一番人気、オリジナルタコライス。野菜のボリュームたっぷり。
一番人気のメニューは、野菜がふんだんに使われた「タコライス」。鉄板で提供するメキシカン風ナポリタン、全粒粉を使ってソイホイップクリームをトッピングしたヘルシーなパンケーキも味わえる。バナナ1本をまるごと使うなど、ボリューム感あるトルティーヤ生地を揚げて具材を包んだスイーツ、「チミチャンガ」も楽しめる。
カウンターで注文するセルフの店だが、従来のゼットンの店の客層である若い女性のみならず、家族、主婦、シニアにも人気で、幅広い顧客を集めている。「ららぽーと海老名」の店でも客層の広がりを感じられたが、「カフェアミーゴ」の場合は、三世代で楽しめるファミリーカフェの域に達しており、カフェの可能性を拓いた店と言えよう。夏期はテラスでビアガーデンを開催する。
公園と取り囲んでオープンカフェ風に店舗が並ぶ。
レストラン街は1階にあり、公園を取り囲むように配置された。店舗は、オムライス「ヒルトップ レイチェル カフェ」、中華ビュッフェ「九龍點心」、そば「越後叶家」、和食「大かまど飯 寅福」、回転すし「回転寿司 沼津 すし之助」、タイ料理「JASMINE THAI TERRACE」、ハンバーグ・ステーキ「グリル ドミ コスギ」、イタリアン「PIZZA SALVATORE CUOMO」、総合ビュッフェ「THE BUFFET DINER」、ベーカリー・カフェ「ドンク・ミニワン」、和カフェレストラン「神楽坂 茶寮」、ハワイアンカジュアルレストラン「Eggs'n Things(エッグスンシングス)」。といったラインナップ。
「エッグスンシングス」の行列の長さは別格。
なんといっても一番の人気店は、パンケーキで知られる「エッグスンシングス」で、いつも長い行列ができている。ファミリーやベビーカーを押した若いママも多く、原宿の店のように女学生ばかりが並んでいるわけではない。
カフェはハンバーガー「J.S.FOODIES」、「星乃珈琲店」、「スターバックスコーヒー」が出店。ファーストフードは「ミスタードーナツ」、「ケンタッキーフライドチキン」が入っている。
「ららぽーと立川立飛」フードコート。連日混み合っている。
3階にあるフードコートには10店が軒を連ねており、うどん「宮武讃岐うどん」、親子丼「博多華味鳥」、海鮮丼「つじ半」、カレー「野菜を食べるカレー camp express」、粉物「てっぱん屋台」、スイーツ「フレンチトースト・パラダイス」、焼肉丼「牛肉丼屋 和」、洋食「デリッシュウフ」、さらにラーメンは2店あって「鏡花」と「博多一幸舎」が入っている。
「牛肉丼屋 和」。
そのうち、「牛肉丼屋 和」と「鏡花」は地元の人気店だ。「牛肉丼屋 和」は立川駅北口の焼肉「和」が出店したもので、ステーキがご飯の上に乗っているかのような焼肉丼やロストビーフ丼などを提供。
「鏡花」。
「鏡花」は立川駅南口の薄暗い照明で幻想的な雰囲気のする店であるが、こちらはフードコートなのでファミリーを意識した店構え。「立飛(たっぴ)まぜそば」のような、立飛限定メニューも提供している。ランチの行列は日本橋の本店が「食べログTOP5000」に入っている「つじ半」が最も長い。次いで、「博多華味鳥」、「宮武讃岐うどん」あたりだ。
以上、「ららぽーと」両店は、ファミリーをベースにした部分は不変で同じような店が入っているが、それぞれ立地に合ったリーシングをしているものもある。特に夜の居酒屋ニーズ、ちょい飲みニーズを取り込もうとした「ららぽーと海老名」のチャレンジが、どこまで成功するか。興味深い。
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