台湾のソウルフード「牛肉麺」の最大チェーン、 「三商巧福」が日本初上陸! (東京・赤坂/台湾料理)

 タピオカドリンクやパイナップルケーキ、マンゴーかき氷など、台湾グルメの日本上陸が目立った2014年。その締めくくりは台湾の国民食ともいえる「牛肉麺(ニューロウメン)」のファストフードチェーン「三商巧福」の日本上陸だ。11月13日、東京・赤坂に直営第1号店がオープンし、話題を呼んでいる。

sansyo1.JPG
東京メトロ・赤坂駅から溜池山王駅に向かう通り沿いに位置する直営第1号店。台湾の店舗と同じオレンジの看板がひときわ目を引く。

 創業30年になる「三商巧福」は、現在、台湾国内に150店舗を構え、年間1500万食を売り上げる台湾最大級のファストフード店だ。台湾の人口が約2300万人ということを考えれば、いかに多くの人に日常的に食べられているかがわかるだろう。

 「日本でいうところの牛丼チェーンや立ち食い蕎麦のような感じですね。台湾では200mの間に3店舗くらいあるほどポピュラーな存在です。時間がないときや、何を食べるか迷ったときに"じゃあ、あそこへ行くか"と立ち寄るような、普段使いのお店です」(日本三商フードサービス株式会社 代表取締役 陳 光弘氏)

sansyo2.JPG
テイクアウトメニューもある。タピオカドリンクは女性に大人気。漏れないように封がしてあるため持ち帰りやすいのがうれしい。

 日本へ出店する構想自体は5年ほど前からあったという。「牛肉麺の甘めのスープやうどんに似た麺は、日本人の口にも合うのではないかと思ったのです。実際に動き出したのは昨年から。1年間リサーチをした後、2014年2月に日本法人を設立、11月にオープンとなりました。赤坂は、物件自体は大満足とはいかないのですが、テストマーケティングするにはいい場所だと感じています。昼間はサラリーマンやOLのランチ、夜はちょい飲みニーズがある。土日は観光客や在日台湾人で賑わいます。今のところ、予想通りの結果が得られていますよ」(陳氏)

sansyo3.jpg
一番人気は、創業以来30年間愛され続けてきた原汁の「牛肉麺」630円(税別。以下同)。スープは牛・豚骨・鶏がらがベースで一見濃そうだが実はあっさり。牛肉麺の特徴である八角(スターアニス)はほんのり香る程度できつすぎず、するすると食が進む。ほかに、肉なしの「湯麺(たんめん)」360円や肉の量が1.5倍の「肉盛り」820円、すじ肉が追加された「牛肉&すじ麺」780円も用意されている。

sansyo4.jpg
原汁の牛肉麺にトマトをトッピングした「トマト麺」820円。フレッシュな酸味が女性に人気。

 麺は、特製の平白麺を使用。ラーメンとうどんの中間のような太さで少し平べったい形をしており、スープによく絡む。とろけるほど柔らかく煮込んだ牛肉は中落ちカルビのかたまり肉を使用。中心までしっかり味が染み込んでおり、肉の旨味が凝縮されている。

 「日本向けの味の調整はまったくせず、台湾の店とすべて同じレシピで作っています。同じ味を再現するために、厨房のスタッフは全員、台湾からベテランを連れてきているんですよ。ゆくゆくは日本人スタッフも増やしていくつもりです」(陳氏)

sansyo5.jpg
薬膳&塩味バージョンの「牛肉麺」。730円。原汁よりあっさり味。原汁、薬膳&塩味ともに、無料で麺を春さめに変更が可能で、カロリーが気になる人にはうれしい。

 台湾では、店ごとにスープや具材など味が異なる牛肉麺。職人の技に頼る部分が多く、肉の扱いやスープのとり方が難しい部分もあるため、多店舗展開はしにくい料理といわれていたという。それが個性にもなっているわけだが、

 「当社は、多店舗展開を目指すために、職人の腕に頼ることをある時期からやめました。徹底的に味や工程を分析・数値化し、均一化したレシピを採用することで、100店舗以上のチェーン展開に成功したのです。当社の経営方針は"美味しいものを安く、誰でも食べられるように提供する"ことです。そのためには尖りすぎた個性は必要ありません。うちの牛肉麺は斬新でもなければ、前衛的な味でもない。"特別に美味しかったね"と話題になるようなものでもありません。いわゆる"普通の味"なんですね(笑)。でも、毎日食べても食べ飽きない味だという自信はあります。日本人にとっての味噌汁のような、日常食であることを目指しているんです」(陳氏)

sansyo6.JPG
お水やおはし、高菜や豆板醤などの調味料は台湾と同じセルフサービスで。

sansyo7.jpg
高菜はなんと食べ放題!そのままおつまみに、ご飯の友にとお好み次第。麺の中に入れてスープの変化を楽しんでも。隠れた「看板メニュー」として人気だ。

 また、日本では台湾の店にはない「ちょい飲みメニュー」があるのが特徴。17時~の提供で、小皿のおつまみが充実している。
 
sansyo8.jpg
全18種類のおつまみは260円~630円までと充実。ビール280円、ハイボール260円とドリンクもリーズナブルで、仕事帰りにちょっとつまんで帰りたい人には非常に使い勝手がよい。

 「台湾では牛肉麺だけで成り立つので、その他のメニューは必要ないんですが、日本ではニーズがあるだろうと思い、メニューに加えました。おつまみはすべて台湾の家庭で食べられているごく一般的なものを揃えています。おつまみを何皿かとビールを1~2杯。シメに牛肉麺という形で食べていかれるお客様が多いですね。お酒を置いていることは積極的に宣伝していないのですが、1日にビール40杯程度は出ています。業者さんのお話では、宣伝していないのにその数なら悪くないといわれています(笑)」(陳氏)

sansyo9.jpg
おつまみの一番人気「台湾風オムレツ」360円。天干し大根とネギ入りで、ダシの効いたシンプルな庶民の味。塩味の大根がしゃきしゃきしていて食べ応えがある。

sansyo10.jpg
二番人気の「とんロース」360円。甘辛しょうゆ味に煮込んだ豚ロースは、見た目はこってりだが意外にあっさり。柔らかくてジューシーな味わい。このとんロースがごはんの上に乗った「とんロース飯」630円も大人気。お弁当でテイクアウトする人も多いそう。

sansyo11.jpg
3番人気の「モツの盛り合わせ」並:480円、大盛:630円。お酒のつまみにぴったり。

sansyo12.jpg
「うま味きゅうり」260円。さっぱり味でお新香感覚でポリポリ食べられて4番人気。

sansyo13.jpg
にんにくのパンチが効いた「スタミナインゲン」260円。「出るときと出ないときの差が大きい謎の一皿なんですよ」(陳氏)。出るときには20時頃に売切れてしまうこともあるという。

 「牛丼チェーンや立ち食い蕎麦などの他のファストフード店に比べて、女性客が多いのは予想外でしたね。男女比は2:1で、おひとりで来店される方も多いです。通りがかりでふらっと入店される方が多いですね」(陳氏)

sansyo14.JPG
シンプルで清潔な店内。女性も入りやすい雰囲気だ。

 今後、日本ではどのような展開を予定しているのだろうか。「ファストフードですから、いずれは店舗を拡大していきたいと思っています。ただ、まずはこの第一号店で"日本の三商巧福"としての文化を構築し、確立させることに注力したいと思っています。開店してから1ヵ月半ほど経ち、さまざまな問題が見えてきています。ほとんどが文化の違いによる衝突ですね。台湾人と日本人スタッフ両方がいますから、ある意味仕方のないことだと思っています。これからお互いの文化や考え方を学び、情報交換する中で、納得のいくやり方を見つけていきたいです。足元を固めて、日本の方がまだ食べたことのない味を心を込めて提供し、受け入れてもらえたら次の展開を考えます。台湾風に急がず、臨機応変にやっていきたいと思っています」

sansyo15.JPG
メニューに載っている会社の紹介文。誠実さと一生懸命さを感じるメッセージだ。

 日本人はプレミアム感のあるものが大好きだ。何かしら付加価値をつけて高く売るのが日本流。しかし台湾では逆に、"無駄を削って安く売る"という意識が強い、と陳氏。

 「特に当社はその意識が強いですね。無駄を徹底的に省いたローコストオペレーションで、"美味しさ"と"安さ"にこだわって料理を提供するのが三商巧福流のやり方です。その方針を守りつつ、日本の方に台湾の本当に美味しい料理を安くご提供していきたいと思っています」(陳氏)美味しくて安ければ、それに越したことはない。牛丼や蕎麦と並ぶ食の選択肢が 増えることは、この街で働く人たちにとって心強い味方になるはずだ。

 扉をくぐればそこは「台湾」。日本にいながらにして味わえる本場のソウルフードをぜひ楽しんでほしい。

■三商巧福(さんしょうこうふく)
東京都港区赤坂3-12-11
TEL:045-909-6833

取材・執筆 : 石村紀子 2014年12月30日執筆

記事ランキング

もっと読む

トップページへ戻る

ページトップへ