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取材・執筆 : 西尾明彦 2015年6月5日
2011年9月の創業以来、焼き鳥店密集エリアの大阪・東心斎橋でドミナント展開をしている株式会社笑道の「WA鶏BAR(ワトリバル)」。洋食や中華、かき小屋、マグロ業態など多業態での展開を経て、今年4月から全店を「WA鶏BAR」業態に転換。単一業態での店舗展開へと舵を切った。
不動の看板メニュー「鶏BAR八寸」(1280円)
東心斎橋エリアは焼き鳥店激戦区。焼き鳥を食べたいお客様は焼き鳥店が密集しているエリアに来られるはず。その中で一番になれば、お客様に来ていただける、と「WA鶏BAR」を創業したのは2011年9月。現在、東心斎橋で3店舗を展開する。
提供するのは、割烹仕込みの料理を居酒屋に落とし込んだ鶏を中心とした創作料理。それに合わせるワインがベース。店によりスタッフの裁量で、日本酒や焼酎も充実させている。
串打ちせず岩塩の上で焼く、名物の岩塩焼き「大山がいな鶏もも」(980円)
「ムネポン、レア唐揚げ」680円。造りで食べられる朝びき鶏をレアで仕上げた、食感も楽しめる唐揚げ。
柔らかくジューシー、ピリ辛ソースで酒もすすむ「よだれ鶏」530円。
本店は今も予約で満席になる繁盛店。人気に火が付いたのは、オープン早々に有名ブロガーが食べログに書き込んだのがきっかけという。以降、食べログからの新規来店が途絶えない一方で、常連率が高く、女性同士のお客様も多い。深夜からは仕事終わりの同業者で朝まで賑わう。
10坪少々の本店。1階はカウンターのみ。スタッフとの距離も近い。
本店2階は予約のみのテーブル席。
「店内は明るく、いわゆる赤ちょうちんの焼き鳥屋の雰囲気ではないこと、鶏料理なのでヘルシー。そして、料理の見た目も華やかなことが評価されたのかと思います」と、株式会社笑道の共同代表の一人、広瀬和彦氏。
4月1日に「かき小屋フィーバー」のFC店から業態転換した「WA鶏BAR三休橋店」はビル2階。系列で唯一個室もある、大人な隠れ家といった雰囲気。
三休橋店のカウンター席。
料理は「鶏BAR八寸」、「岩塩焼き」「名物 丸ごとコンフィ」といった、全店共通の人気メニューに加え、4割ほどは各店独自のメニュー構成になっている。三休橋店では、パスタや、懇意にしている貝塚の中出農園の水ナスなどが楽しめる。
合わせるワインはグラス提供で12種類。赤・白各5種に、泡2種類。ボトルワインは本店より多く20種類以上。
有名スポーツ選手や人気芸人がお忍びで訪れるという、三休橋店の個室。
現在、同店を取り仕切るのは、取締役部長でもある村上恭亮氏。
「飲食店は美味しくて当たり前、ニーズに合ったコストパフォーマンスも求められます。でも、それだけでは評価されない。弊社の強みはスタッフの人間力だと思っています。お客様も店に行くというより、スタッフに会いに行くという感覚でしょうか。」
「今後の店舗展開も考えると、人より、各店にお客様がつくような店舗づくりも必要だと感じています。そのためにも、これまでの名物料理にプラスして、各店独自の武器となる料理が必要になってくるかと思います。そのためにも、まずは、『WA鶏BAR』としての認知度をもっと上げたいですね」と村上氏。
取締役部長の村上恭亮氏。「社内で誰よりも現場に立っている自信があります」と、現場感覚と、経営者目線を持ち合わせている。
本店オープンから1年未満の2012年8月に洋食業態の「YO鶏BAR」、同年12月に中華バルの「CHU鶏BAR」と、オープンから1年少々でハイペースで店舗展開を進めた。
「マグロ業態や、かき小屋業態にも挑戦しました。ビジネスとして利益は出ていたし、あと数年はいけるかもしれませんが、ミナミ界隈にもかき小屋業態が増えました。社員からの意見もあって、一番お客様に愛されている業態に集中することを決断しました」と、一時的な利益より、長く残る店舗を目指して、業態を「WA鶏BAR」に統一した。
創業の地は、心斎橋駅から徒歩5分で、繁華街の通りから1本入った路地裏立地。10数軒物件を見た中で、唯一ふたりが良いと思ったという物件。
「目指しているのは、料理もサービスも、居酒屋以上、割烹未満」。株式会社笑道は、ミシュラン4年連続2つ星の心斎橋の名店「懐石料理 桝田」で修業した広瀬氏と、イタリアン出身の西村氏という、料理人ふたりが共同で代表を務めている。
「考え方は全然違いますが、向いている方向は一緒。お互いを尊重、尊敬しています」と西村氏。
「お互いが違う形の歯車。できること、できないことを補い合っています。独立して4年になりますが、一緒にいて居心地が良いんです」と広瀬氏も続く。
細やかな性格で数値管理に強い広瀬氏と、スタッフの管理や指導を担当する西村氏、得意分野は違う。社員を口説き集めてきたのは西村氏。料理人同士が共同経営する場合も、なるべく得意分野が異なり、お互いを補う存在でパートナーシップを組むのがベターなようだ。
共同代表を務める、左から西村氏と広瀬氏。
そんな西村氏の人材採用の基準が独特。「過去にヤンチャしていても良いんです。見るのは親を大切にしているかどうか。自分の親を大切にできない人は、お客様も大切にできないんじゃないかと思っています」。
「これまで名物料理で評価をいただいてきましたが、もっと進化させたい。『WA鶏BAR』でもっとお客様に笑顔になっていただきたいです」。
「接客も得意だし、一番売上をあげられる自信はありますが、結局は一馬力でしかない。会社を大きくするためにいろいろな経験を積んで、会社に還元していくことを選びました」と、現場に未練を感じつつ、両代表は基本的に経営に専念している。店舗運営は、人件費や減価コントロールまで、基本的に店長に一任しているという。
本店(手前)と、全店でも最もカジュアルな雰囲気の「WA鶏BAR ひよこ店」(奥)。13席とコンパクト。
「これまで年中無休の5時~5時(三休橋店のみ6時~6時)の『いつ行っても開いている楽しい店』としてやってきましたが、数字さえきちんと上げてくれれば、営業時間の変更や定休日を設けても構いません」と、現場の権限は大きい。
「なるべく従業員にお金をかけたい。結果に対して報いたいです。今後は、社員6名と同じ6店舗までは出店したいです」。
和洋中に加え、専門業態も経験した上で、得意な業態に特化することを決めた笑道を率いる両代表。激戦区のマーケットで、オープン以来支持され続けている「WA鶏BAR」が、近い将来老舗と呼ばれる日が来るのは間違いないだろう。
■株式会社笑道
住所:大阪府大阪市東心斎橋2-5-7
TEL.06-4708-9040(本店内)
■WA鶏BAR 本店
住所:大阪府大阪市東心斎橋2-5-7
TEL. 06-4708-9040
■WA鶏BAR ひよこ店
住所:大阪府大阪市東心斎橋2-5-7
TEL. 06-4708-4806
■WA鶏BAR 三休橋店
住所:大阪府大阪市東心斎橋1-13-21 和田由ビル2F
TEL.06-4963-8977
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