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お店を知る

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2015年4月13日(月)17:48

120種にもカスタマイズ可能!国産蕎麦粉を使った十割蕎麦で 世界を目指す「十割蕎麦製麺所 名代 天晴酒場」 (東京・東中野/蕎麦居酒屋)

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取材・執筆 : 石村紀子 2015年3月28日執筆

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 新宿まで約3kmの超都会でありながら、あまり発展していないJR東中野駅周辺。飲食店もまばらなこの地に2月20日、国産の蕎麦粉を使った十割蕎麦を提供する『十割蕎麦製麺所 名代 天晴酒場』がオープンした。蕎麦粉は3種類、細麺・太麺、温・冷が選べ、つけ汁6種、トッピング10種と、120種もの組み合わせが可能な上、おつまみも取り揃えている"呑める"蕎麦屋だ。積極的な宣伝は一切行っていないにも関わらず、開店以来コンスタントに1日100名もの来客があるという人気店になっている。

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JR東中野駅 東口から徒歩1分。店内が見渡せるガラス張りの窓が明るい印象。大きな石臼が通行人の目をひく。

 経営しているのは「ねじべえ」や「赤ちり亭」を運営する株式会社天晴(東京都港区)。もともとベンチャー支援のコンサルティングを専門としていた会社だが、3年半ほど前、ねじべえと赤ちり亭のFC本部を買い取ったことを機に飲食店運営へと参入した。蕎麦屋の業態での出店は今回が初となる。

 「日本はこれから超高齢化社会を迎えます。そうなったとき、繁華街というものは存在しなくなると思うのです。地方・住宅街と外国で勝負できる店を今から模索する必要がある。未来への投資という意味で、蕎麦という業態に注目し挑戦することを決めました。年配の方はもちろん、年齢・性別を問わず、蕎麦は毎日でも食べられる日本人にとっての"主食"であること。うどんのマーケットは広がっていて、売り上げは伸びているのに、蕎麦業界は保守的な考えで市場が活性化されていない。その現状に、逆に活路を見出したんです」

 そう語るのは、経営者であり、同店舗の店長として自ら現場に立つ大場心樹氏。コンサルタントだった大場氏みずからが陣頭指揮を取って、業態の開発とさらなるブラッシュアップをしている。

 「うどん業界はセルフ式チェーン店などの登場もありマーケットが広がりましたが、蕎麦業界は旧態依然としています。老舗の蕎麦屋は日常的に食べるには高級だし、立ち食い蕎麦では美味しい蕎麦が食べられない。中間の、美味しい蕎麦がリーズナブルに食べられる店が少ないんですね。これは職人気質の"暖簾を守る"という意識が強いことも関係しているかもしれません。"広げる"という方向に意識が向かないんですね。それは逆に見れば、未開発のマーケットがあることを意味しています。職人の技に頼らず、蕎麦の美味しさを保ったまま、新たな蕎麦の魅力を発見していただける店ができたら、新境地が開けるのではないかと考えました」(大場氏)

 最も大切にしたのは「蕎麦の美味しさ」。

 「蕎麦の美味しさは、粉で決まるといっても過言ではありません。質のよい蕎麦粉で打った十割蕎麦が一番美味しいのは周知の事実ですが、世の中にあまり出回らないのは、十割蕎麦は技術的に扱いが難しく、保存も利かないためです。コストの問題もあるでしょう、小麦粉を混ぜたほうが価格も安く、賞味期限も長く在庫コントロールも安定しますので。でも、うちはとにかく国産の蕎麦粉を使った十割蕎麦として提供することにこだわりました。十割蕎麦がこんなに美味しいのだということを、お客様に知っていただきたいからです。うちには蕎麦職人はいませんが、蕎麦職人と同等のオペレーションと蕎麦職人が憧れる蕎麦作りを目指しています」(大場氏)

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店主が惚れた最高の蕎麦粉を使った「十割蕎麦 石臼挽き 茨城産 玄粉」(680円)。ほか、「旬な国産蕎麦粉の十割蕎麦」は580円、「オリジナルブレンド蕎麦粉の十割蕎麦」(480円)も。いずれも十割蕎麦としては破格の値段である。

 使用する蕎麦粉は、茨城県産、その時期の旬のもの(現在は北海道産を使用)、店主が配合したオリジナルブレンドの3種類。太さは細麺、太麺の2種類から、温・冷が選べる。

 「利き酒ならぬ利き蕎麦で、粉の種類や太さによる味の違いを楽しんでいただきたいですね。実際、複数名でご来店いただいた場合、ひとりひとり違う種類の蕎麦を注文して食べ比べされるお客様がほとんどなんですよ。みなさん"こんなに味が変わるんだ!"と驚かれます」(大場氏)

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ホシと呼ばれる黒点が残る十割蕎麦。香り高く、風味が強いのが特徴だ。

 十割蕎麦は、粉を挽いてから数時間のうちに食べないと、風味が落ちてしまう難しい食べ物である。

 「うちは、毎日朝10時から、店内にある石臼で粉を挽いています。石臼で挽くのは時間がかかりますが、やはり挽きたてが一番味がいいんです。1時間に2kg程度しか挽けないので生産量が限られてしまうのが難点ではありますが、ゆっくり丁寧に挽かないと味が落ちてしまうので、やり方は変えません。"挽き立て""打ち立て""茹でたて"にこだわっていきたいと思っています。うちは"蕎麦がある居酒屋"ではなく、"蕎麦屋の居酒屋"がコンセプトなので、蕎麦が売り切れになったら営業時間内でも店を閉めてしまうんですよ」(大場氏)

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店内、窓際に置かれた大きな石臼。粉を挽く様子に見入る通行人も多いそう。

 蕎麦には鰹だしと胡麻の2種類のつけ汁が基本セットとしてついてくるが、プラス100円でおかわりや他の味の追加が可能だ。

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つけ汁は鰹つけ汁、胡麻汁、梅しそ汁、坦々汁、カレー汁、赤味噌汁の6種類を用意。このほか、トッピングとして温泉卵・生卵(80円)、きつね(100円)、とろろ芋(120円)、浜名湖産生海苔(150円)、特大鶏の唐揚げ(1個180円)、馬力セット(めかぶ納豆、とろろ、温泉卵のセット、240円)、特大海老かき揚(320円)、炒め盛り豚肉(380円)、厚切り牛タン3枚(680円)を用意。オリジナルの蕎麦が楽しめるように工夫されている。

 つけ汁やトッピングを豊富に取り揃えた理由について「蕎麦職人の方には邪道だと思われるかもしれませんが、蕎麦の好みは人それぞれなので、楽しみ方もいろいろでいいと思うんです。"この食べ方で食べろ"ではなく、自分なりのお好みを見つけてもらえたら、より蕎麦が身近な存在になるはずです。お客様の要望に応えながら、蕎麦の新しい切り口を模索していければと考えています」と大場氏は語る。

 蕎麦がメインではあるものの、蕎麦以外のつまみも充実。蕎麦屋なのでご飯物は置いておらず、蕎麦を待つあいだに飲みながらちょっとつまむといった感じのメニューが各種揃っている。価格帯も280円から680円までとリーズナブル。中でも三崎港のマグロと青森産シャモロックは絶品と評判だ。

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分厚いマグロが3切れも盛られた「三崎港 厚切りマグロ赤身刺」はなんと380円!中トロも3切れで580円と格安だ。

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「青森産シャモロック3点盛り」680円。しなやかな肉質で味が濃厚な地鶏、青森シャモロックの異なる部位を一度に味わえると好評。

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ゴロッと入った牛タンが贅沢な「牛タン煮込み」380円。

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カリッとした食感と旨味がお酒に合う「国産手長エビの唐揚げ」480円。

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滋養強壮にバッチリ「揚げにんにくの旨辛味噌」280円。

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にんにくがガツンと効いた「鶏のから揚げ2個」380円。

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味噌の香ばしい香りが口の中に広がる「しゃもじ蕎麦味噌焼き」380円

 店内は38席(禁煙席はカウンター5席を含む19席と喫煙席19席)で、エリアで分煙している。窓が大きく解放的で入りやすいためか、女性や高齢者のおひとり様も多いという。

 「弊社の他業態の店舗は、若者や50代のサラリーマンなど、客層が限定される傾向にあるんですが、この店は老若男女問わず、幅広い層に利用していただいているのが特徴です。お酒は飲まずに夕食として、飲み会で、また飲み会帰りのシメの一杯として、さまざまに活用していただいています。蕎麦は日本人にとって主食ですから。ごはんやパンはおかずが欲しくなるけれど、蕎麦は単体で成立するし、ラーメンのように毎日食べるのが難しいものでもない。それだけで成立するという点が蕎麦の魅力だと思います。今よりもっと日常的に食べる頻度が高くなっていい食べ物だと思いますね。そのためには"味変"できることも必要だと思うんです」(大場氏)

 この後の展開としては、フランチャイズ化して国内に広げていくと同時に、海外への進出も考えているという。

 「ラーメンやうどんは海外にも進出していますが、蕎麦はまだあまりないんです。和食が注目を浴びている今、蕎麦は海外でも十分通用する最後のコンテンツだと思います。それも見据えた上で職人の技に頼らない製品作り、オペレーション作りができるように構築したのです」(大場氏)

 海外はまず、ベトナムへの出店を考えているそうだ。

 「国内第一号店を東中野にした理由は、実は、この場所が外食産業にとって非常に難しい場所だったからなんです。フランチャイズを広げていくときに、本来の飲食店の原点に立ち返り、広告宣伝費を0円で商いし、ご来店頂いたお客様を大切にして、コストパフォーマンスを高めていけば、自然と口コミで繁盛店ができることを立証し、この場所で成功したんだからどこででも通用するとFC本部胸を張って言えると考えています。開店以来、予想以上にお客様に来ていただいていて安心しています。名指しで来てくださるお客様も多いんですよ。手ごたえを実感しています」(大場氏)

 唯一とも言える気がかりは、TPPや異常気象の影響で、蕎麦粉の仕入れが難しくなることが予想されることだそう。

 「日本国内で消費される蕎麦粉の85%は中国やロシア等の輸入物ですが、最近輸入物の値段が上がったり、輸入量が減ったりしたことで国産蕎麦粉の取り合いが起こっています。実際、原価はじわじわ上がってきています。美味しい蕎麦粉を確保するために、近いうちに自社農園を作りたいと考えています。そのためにも、多店舗展開をスピーディに進めていくと同時に、更なる商品開発とオペレーションの改善をして原石を磨いていきたいですね」(大場氏)
 
 固定概念に囚われず、あくまでも柔軟に、消費者目線かつ多角的に蕎麦という世界を見つめることで発見できた新たな蕎麦の楽しみ方。世界中で自分好みの蕎麦を楽しむ消費者の姿が見られるのは、そう遠くないかもしれない。東中野から発信される蕎麦のニューワールド。今後の動向から目が離せない。

■十割蕎麦製麺所 名代 天晴酒場
住所:東京都中野区東中野5-3-6 東中野トーシンビル1F
TEL:03-6908-8835
営業時間:11:30~13:30 *ランチ営業は月・水・木・金のみ
16:30~23:30(L.O.23:00)
定休日:火曜

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