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飲食店経営者レポート

飲食店経営者レポート

2018年3月09日(金)15:59

「養老牛丼」復活など、老舗企業が攻める企画の根幹とは。

長島一誉氏 養老乃瀧株式会社 企画部 部長

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取材・執筆 : 中山秀明 2018年3月9日

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 今、養老乃瀧グループが面白い! 2017年を見ても、「肉山」や「賛否両論」など予約が取れない店とのコラボ、伝説メニュー「養老牛丼」の復活、「映像居酒屋 ロボ基地」のオープンなど、枚挙に暇はない。FC先も多い老舗企業だが、若々しい発想やチャレンジ精神の背景には何があり、何が狙いなのか。同社の企画を手掛ける、長島一誉部長にたずねた。

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企画部 部長の長島一誉氏。

 「養老乃瀧」をはじめ、「一軒め酒場」に「だんまや水産」など、さまざまな居酒屋ブランドを運営する同社。そのなかでも、特に「養老乃瀧」ではバラエティに富んだキャンペーンやコラボレーションを行っており、特に近年はその動きが活発だ。ニュースリースでも、2017年は例年以上の本数を発信している。実施理由を大きく締めるのは、来店動機を促すため。ただ、そこには同店ならではの事情もあった。

「全体としては年に2~3回、メニュー替えのタイミングと併せるような形で行っています。コアターゲットは、まだ弊社のお店を利用したことのない方々。あるいは、久しく訪れていなかったお客様ですね。ただ、ゲームアプリ『モンスターストライク』とのコラボなどは、ご家族で長くご利用いただいているお客様にも好評です」(長島氏)

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モンスターストライク コラボレーションキャンペーン。ゲーム内で行われるガチャを居酒屋で再現し、1回324円で販売した。

これらを実施するかどうかは、基本的に各店に任せている。というのも、同社はFCオーナーが多いからだ。長いところでは50年以上の付き合いというケースも。そういった店舗では、家族三代で常連になることも珍しくはない。それは同社と各オーナーが、地域住民との絆を大切にしているからにほかならない。

「その町や商店街のコミュニティスポットとして愛されている加盟店様が非常に多いんです。駅前はもちろん、住宅街やベッドタウンでの立地もありますし、特に『養老乃瀧』は地域の顔としての魅力が強みかもしれませんね。とはいえ、地方だけでなく都心の駅前立地でも地域密着という理念は同じです。そこで働いている方にとっては、1日の多くの時間をそこで過ごすわけですから。ただ都会ですとお店も人も多いですし、年齢層も幅広いですからね。その中で来店動機につなげるための施策が、多様な企画やキャンペーンです」(長島氏)

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キャンペーンのほか、個性的な業態の開発も大きな話題となった。それが2017年11月にオープンした「映像居酒屋 ロボ基地 池袋南口店」だ。

 消費動向や外食シーンが大きく変わっていく中、今は大衆酒場がトレンドの時代。チェーン店としてその先駆けといえるのが、ご存知「一軒め酒場」だ。改めて「養老乃瀧」との違いや現状などを聞いてみた。

「2008年12月オープンの神田南口店が1号店ですから、今年で10周年ですね。立地はオフィス街とは限りませんが、基本的に人通りの多い駅前が多いです。お客様単価は約1500円。中には朝から営業している店舗や24時間営業のお店もありますが、その町に合わせてケースバイケースです。レギュラーメニューは350円を超えない設定にするなどのお手ごろ価格が強みですが、『養老乃瀧』との違いとしてはメニュー数が半分以下で少ないという点もありますね」(長島氏)

 当初の「一軒め酒場」は養老乃瀧グループであることをあえて公表しておらず、ある時うっかり知られてしまったのだという。また販促に関していえば、広告宣伝費はオープン時のチラシ程度しかかけない。クーポンなども配布せず、エブリデイロープライスというスタンスを10年間貫き続けている。

「長年『養老乃瀧』をやってきた文化からの、古典居酒屋の精神とでもいいましょうか。チェーンとしては珍しいかもしれませんが、広告費をかけるなら価格に反映してお客様に還元したいんです。メニュー数が少ないのも、廃棄ロスとオペレーションの負担を減らすためですね。気軽に飲めて、使い勝手もいいという業態を突き詰めた結果が『一軒め酒場』といえるでしょう。関西での認知はまだまだこれからですが、東京近郊ではようやく知られる存在になってきたと思います。今後も積極的に出店していきたいですね」(長島氏)

 「一軒め酒場」が大衆居酒屋の原点回帰であるならば、「養老乃瀧」にも往年のファンを喜ばせた面白い取り組みがある。「養老牛丼」の復活だ。これは1977年に誕生し、同店名物として愛されていたものの、2000年代初頭に居酒屋業態に集中する目的で終了していたメニュー。伝説の逸品が復活ということで、新たなファンも獲得する機会となった。

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2017年10月11日に完全復活を遂げた「養老乃瀧」(356円)。かつては専門店もあったほどで、その味は他の牛丼チェーンにも負けないクオリティだ。

「『養老牛丼』の復活は、2016年にグループ60周年の企画として池袋南口店で限定開催したことがきっかけでした。瞬く間に予定数が完売し、お客様からも大変ご好評いただくとともに懐かしむ声や復活を望む声が想像以上に多かったんです。そこで1年をかけて準備を進め、再販売を実現させたというストーリーですね。味わいは、居酒屋の〆に楽しんでいただくメニューとしてサイズについても変更を行いながら、『養老牛丼』の特徴である、食べ飽きない和風テイストに仕上げました」(長島氏)

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2017年7月に上梓された『居酒屋ダイエット』。料理やドリンクの再現などは「養老乃瀧」が手掛けている。

 そのほか、居酒屋業界のイノベーションをテーマにしたIoT × 居酒屋の「養老乃瀧ハッカソン」を開催したり、『居酒屋ダイエット』という書籍制作に全面協力したりと、若い世代や女性に向けたアプローチも積極的に取り組んでいる。伝統と革新の両輪で、これからの居酒屋の姿を模索し続ける同社。2018年もアクセル全開で攻めていくとのことで、一層目が離せない存在である。

■養老乃瀧株式会社
https://www.yoronotaki.co.jp/

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