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2016年10月28日(金)14:18

フレッシュネス前社長・紫関修氏、ウェンディーズ・ジャパン社長に引き抜かれる!?

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2016年10月16日執筆

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ウェンディーズ・ジャパンはファーストキッチンを買収。前フレッシュネス社長の紫関修氏を新社長に迎えて再建に挑む。

 日本マクドナルド出身で「フレッシュネスバーガー」チェーンを展開する、フレッシュネスの社長として、日本のハンバーガーの新しい形をつくろうと熱心に取り組まれてきた、紫関修氏が退社されました。

 紫関氏の新しい肩書は、ウェンディーズ・ジャパン社長。ファーストキッチンの社長も兼務されています。9月1日に就任しました。なんと同じハンバーガーチェーン、ライバル会社への移籍です。

 ファーストキッチンはサントリーホールディングスの100%子会社でしたが、今年6月1日にウェンディーズ・ジャパンに買収されています。両社の社長であった、アーネスト・M・比嘉氏は代表権のある会長に就任しました。

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東京都中央区新富のフレッシュネス本社。フレッシュネスは12月にコロワイドの子会社、レインズインターナショナルに買収される。

 この突然の人事に驚いていたら、そのフレッシュネスがレインズインターナショナルに買収されるというビッグニュースが発表されました。「牛角」、「しゃぶしゃぶ温野菜」、「土間土間」などのチェーンを展開するレインズは創業者の西山知義氏はすでに去り、2012年10月よりコロワイドの連結子会社となって傘下に入っています。従って、フレッシュネスはこれまでユニマットホールディングスの100%子会社であったのが、今後コロワイドの孫会社になるというわけです。

 正確に言うと、フレッシュネスが11月1日に同名のフレッシュネスという新会社を設立し、その新会社が事業を承継。12月1日付で、新会社の株式全部をレインズインターナショナルに譲渡する運びです。元からあったフレッシュネスは商号を変更します。

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「ウェンディーズ」を最初、日本に持ってきたのはダイエー創業者・中内功氏だった。

 さて、「ウェンディーズ」は、1980年にダイエー創業者の中内功氏の肝いりで米国より上陸。ダイエーが米国事業会社とフランチャイズ契約を結び、ウェンコ・ジャパンの社名で日本での事業を展開していました。ダイエーの業績悪化により、2002年12月「すき家」のゼンショーに売却。日本ウェンディーズに社名を変更して営業を継続していましたが、09年12月にフランチャイズ契約の更新を行わず、当時展開していた71店全店が閉店し、日本からいったん撤退します。

 しかし、米国側は諦め切れず、日本の米国大使館を通じて、かつて「ドミノ・ピザ」を日本で成功させた、ヒガ・インダストリーズのアーネスト・M・比嘉会長兼社長に接触。2011年4月に米国ウェンディーズ・アービーズグループとヒガ・インダストリーズの合弁で、ウェンディーズ・ジャパンが設立されています。

 比嘉氏はハワイ出身の日系3世で、日米のビジネス環境の違いに精通。1985年当時、日本でイタリアンもピザも流行っていなかった頃に、米国ドミノ・ピザとフランチャイズ契約。おしゃれな三輪バイクでアツアツのピザを配達する斬新なスタイルで、宅配なるビジネスを生み出しました。米国では車でピザを配達していましたが、道が狭い日本では実情に合わないと判断し、バイクを使ったとのこと。日本でこれだけピザが普及し、寿司などさまざまな宅配業態が花開いたのも、比嘉氏の功績です。

 なお、日本のドミノ・ピザ事業は、2010年に米国ドミノ・ピザの筆頭株主の米国投資会社ベインキャピタルに売却され、比嘉氏の手を離れて、ドミノ・ピザ ジャパンに商号が変わりました。ドミノ・ピザ ジャパンは13年、さらにオーストラリアとヨーロッパでドミノ・ピザのフランチャイズチェーンを経営する、ドミノ・ピザ・エンタープライズが株式の75%を取得し経営権が移りました。

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表参道にあった「ウエンディーズ」の再上陸1号店。既に閉店。

 再上陸した「ウェンディーズ」は11年12月、表参道に1号店を出店。フォアグラを使った高級感あるハンバーガーを打ち出すなど、ワンランク上の高質バーガーを売りとし、従来のハンバーガーチェーンにない居心地の良さを追求して、ファーストフードとファミレスの中間「ファストカジュアル」を開拓するとしていました。

 ファストカジュアルは米国では今、非常に伸びている分野です。日本で知られているところでは、昨年11月に明治神宮外苑内に日本1号店をオープンし、大行列となって話題をさらった「シェイク・シャック」はその代表例とされています。また、ニューヨークの「シャイク・シャック」に対して、ロサンゼルスで人気になった「UMAMIバーガー」もファストカジュアルの代表例で、近々日本で1号店がオープンする予定です。その他、日本未上陸ながら、ヘルシーさが受けている「チポトレ・メキシカン・グリル」、ベーカリカフェ「パネラ・ブレッド」、アジアンフード「ペイウェイ・アジアンフード」などがめぼしいチェーンです。

 「シャイク・シャック」は日本2号店のアトレ恵比寿店も集客好調で、9月22日には3号店を有楽町の東京国際フォーラム内にオープンしました。極めて順調です。

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日本のファストカジュアルの重い扉を開いた「シェイク・シャック」。

 一方で、新生「ウェンディーズ」は、表参道店がすでに閉店。単独の店舗は新宿区の曙町店のみと伸び悩んでいます。「ウェンディーズ」がファーストフードの殻を破れずもたついている間に、「シャイク・シャック」があっさりと日本のファストカジュアルの扉を開けたような感があります。

 しかしウェンディーズ・ジャパンも手をこまねいているのではなく、昨年3月にはなんと「ファーストキッチン」とのコラボ店舗、「ウェンディーズ ファーストキッチン」1号店を六本木にオープン。8月には、上野浅草口店を2号店としてオープンしています。

 ハンバーガー業界のみならず外食全体でも珍しい、同業種コラボ店として、ハンバーガーファンには注目されていましたが、両チェーンを一体的に運営する目途がついたのでしょう。ウェンディーズ・ジャパンは、投資会社ロングリーチの支援を受け、ファーストキッチンの買収に踏み切りました。今はウェンディーズ・ジャパンの筆頭株主は、ロングリーチとなって経営権を持っています。ロングリーチは過去に日本マクドナルドホールディングスの株式を買い取って24.98%保有したこともあります。創業者・藤田田氏の遺族が売却を希望した株式を引き受けたものでした。その経験から、ハンバーガービジネスを熟知しているはずです。

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基本、「ウェンディーズ」はハンバーガーを売り、「ファーストキッチン」はサイドメニューを売るコラボレーション。

 「ウェンディーズ」は世界28ヶ国で約6500店を有する、「マクドナルド」、「バーガーキング」に次ぐ米国ハンバーガー業界3位のビッグブランド。日本でも最盛期は100店を超えていました。「ファーストキッチン」は日本発のハンバーガーチェーンとして、全国に136店が展開されていますが、近年は店舗数が伸び悩んでいる感がありました。そこで、両者の強みを互いに活かす店づくりで、巻き返そうとしています。

 具体的には、「ウェンディーズ」はハンバーガーで強いブランド力を持つ一方で、アイドルタイムに弱く、カフェ需要を取り込めていませんでした。「ファーストキッチン」はハンバーガーがもうひとつ売上が上がらない一方で、パスタ、サラダ、デザートのようなサイドメニューに人気があり、アイドルタイムのカフェ需要と女性の集客には成功しています。そこで合体させて、「ウェンディーズ」のハンバーガーと、「ファーストキッチン」のパスタなどサイドメニューを売ると、両者の弱点が克服され、男性、女性、ファミリーと、全方位に強いスーパー・ハンバーガーチェーンができるとの発想なのです。

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ウェンディーズ・ジャパンとファーストキッチンの新社長に就任した、紫関修氏。フレッシュネス前社長でもある。

 そう青写真を描いたようにうまくいくかは疑問もあるのですが、そこに登場したのが、ハンバーガーに情熱を持つ、プロ経営者の紫関氏です。ユニマット代表の高橋洋二氏にしてみれば、「マクドナルド」や「モスバーガー」のはるか後塵を拝している「フレッシュネスバーガー」の現状は不満だったのかもしれませんが、店舗数159店は「ロッテリア」に次ぐ業界4位で、なかなか立派です。特に店舗の3分の2が集中する首都圏においては、目立つ場所にある店舗が近年増えて、存在感を増していました。

 「フレッシュネスバーガー」はほっかほっか亭創業者の一人、栗原幹雄氏が1992年に渋谷区富ヶ谷に1号店を出店、2007年にユニマットの傘下に入っています。09年の年商約46億円に対して現状約55億円で、期待したほどにはあまり伸びてないじゃないかといった見立てもできます。18年に250店を目標にしていましたものの、かなり達成が難しくなっていました。

 紫関氏は米国ボストン大学でMBA取得後、日本マクドナルドに入社。経営企画職で藤田田氏、八木康行氏、原田泳幸氏と3代の社長に仕え、中古ゴルフ用具チェーンのゴルフパートナー副社長に転じて、07年マザーズ上場に導きました。ゴルフパートナーが紳士服のゼビオに買収されると、12年ユニマットに転職。13年4月にフレッシュネス社長に就任しました。

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紫関氏は日本マクドナルドOB。バーガーキング・ジャパン社長の村尾泰幸氏も日本マクドナルドOB。

 もちろん、紫関氏は「マクドナルド」の良い面も悪い面も知り抜いていますし、ライバル会社の分析にも長けています。異業種のゴルフ用具業界で上場も経験されています。フレッシュネスの実績では、これまで2等、3等立地で30坪以下の小型店を展開していたのを、駅前やショッピングセンターの1等立地で40坪以上にできないかと店舗のスクラップ&ビルドを進めたり、野菜を全て国産に切り替えたりしています。

 そうした成果がこれから出てくる矢先に、親会社のユニマットがコロワイドの買収に応じてしまったのかもしれませんが、紫関氏が1等立地戦略や食材国産化で苦労した経験は、必ず「ウェンディーズ」、「ファーストキッチン」で生きると思います。

 ファストカジュアルの特徴としては、カウンターで注文して、料理は注文を受けてから作り始め、できあがったら店員が席まで届ける半セルフ方式。値段はファーストフードより高めで、6ドルから9ドル(1ドル=105円で換算すると、630円~945円)くらい。素材は有機・低農薬の野菜を使うなど、健康に配慮され、高品質。内装はおしゃれで、大人が楽しめる雰囲気があり、ファーストフードと違ってお酒も出す。などといった要素が挙げられますが、「フレッシュネスバーガー」はアーリー・アメリカンスタイルの大人が楽しめるバーガーカフェとして、注文を受けてから作るスタイルのみならず、初期よりビールを提供するなど、「モスバーガー」に比べてもよりファストカジュアル色が強いチェーンと言われてきました。

 米国ウェンディーズにしてみれば、フレッシュネスを率いて改革に取り組んだ紫関氏を社長に迎え、それでもブレイクしなければ諦めがつくというほどの切り札人事なのではないでしょうか。

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「フレッシュネスバーガー」は2等、3等立地で小さな店舗から、1等立地の大きな店舗へスクラップ&ビルドを進めてきた。

 レインズインターナショナルの傘下に入る、フレッシュネスはどうなるでしょうか。
レインズによれば、同社が形成してきたプラットフォームを活用して、「フレッシュネスバーガー」事業のエリア展開・出店を加速させるとしています。

 さらに親会社のコロワイドは、業態の有するポテンシャルに比べて「フレッシュネスバーガー」の首都圏を中心とする156店は、展開エリア、店舗数共に限定的にとどまっていると指摘しています。また、グループの購買機能を使えばコスト面の削減もでき、収益面が改善されるとしています。

 「牛角」、「温野菜」、「土間土間」のような完全滞在型のお酒で儲ける夜型ビジネスと違って、ハンバーガーショップはテイクアウトも多く、昼間の時間帯が中心となります。焼肉、しゃぶしゃぶ、居酒屋のプラットフォームで通用するのか。疑点もありますが、お手並み拝見というところでしょうか。

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フレッシュネス常務取締役・船曵睦雄氏。前ワイズテーブルコーポレーション専務取締役でもある。外食経験豊かなプロ経営者。

 フレッシュネスの社長には、紫関氏が抜けた後、ユニマットグループの高橋代表自らがつなぎとして就任していますが、実際に現場を率いているのは、常務取締役の船曵睦雄氏です。

 船曵氏は、ワイズテーブルコーポレーション専務取締役を経て、1年半ほど前にフレッシュネスに入社されています。ワイズテーブルでは主に経営企画、海外事業、店舗開発などを手掛けてきました。

 ワイズテーブルというと「サルバトーレ・クオモ」、「XEX」といったブランドを思い浮かべますが、フルサービスのレストランで、実績のある外食企業です。

 そういう経験があってのことでしょう。フレッシュネスが昨年10月、吉祥寺にオープンしたハンバーガーをメインとしたフルサービスのレストラン「クラウンハウス」は、船曵氏が中心となって開発した新業態でした。今年6月に、横浜の関内に2号店がオープンしています。

 今年9月9日には、モダンなデザインの「フレッシュネスバーガー」次世代店舗が、日比谷にオープンしました。日比谷店ではエスプレッソマシンとオリジナルのクラフトビール3種を導入しており、カフェとアルコールタイムの充実が図られています。

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10月5日発売「フレッシュネスバーガー」の「フォアグラバーガー」。本格的にディナー需要を狙った味付けで1000円は、食べてみるとむしろお得感がある。

 10月5日から3万食限定で販売している「フォアグラバーガー」(1000円、税別)は、100%ビーフのパティの上に、ハンガリー産フォアグラ50gを乗せたロッシーニ風ハンバーガーで、ボリュームがあり、ワインで仕上げたマデラ風ソースが濃厚。本物のロッシーニ・ステーキの盛り付けに倣いマッシュポテトをパティの下に敷いたり、最後にトリュフオイルを掛けて香り付けをしたり、といったように随所にこだわりが見られる、ディナー向けの大人のハンバーガーです。ビールとの相性もとても良いです。

 再上陸した新生「ウェンディーズ」はフォアグラバーガーから始まった印象が強いですが、このたびコロワイドグループ入りする新生「フレッシュネスバーガー」もフォアグラバーガーから始まるようで、因縁めいたものを感じます。

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フレッシュネスの新業態、フルサービスのハンバーガーレストラン「クラウンハウス」の吉祥寺1号店。

 「シェイク・シャック」上陸によって拓けてきた日本のハンバーガー業界のファストカジュアル市場をめぐって、新たな競争が起こっています。今回のウェンディーズ・ジャパンのファーストキッチン買収、コロワイドグループによるフレッシュネス買収は、この文脈で理解される一連の出来事なのでしょう。

 ニューヨークでは"マクドナルド・キラー"と呼ばれる「シェイク・シャック」ですから、その仲間が増える傾向は、当然「マクドナルド」にとって好ましくはありません。改装効果と「ポケモンGO」のポケストップやジムになっていることで、売上が下げ止まりそこそこ戻して一息ついている「マクドナルド」ですが、楽観視できません。

 しかも、これでバーガーキング・ジャパン社長の村尾泰幸氏も、ウェンディーズ・ジャパン社長の紫関氏も、日本マクドナルドOBになりました。米国ハンバーガー業界2位、3位のバーガーキングとウェンディーズが、日本でマクドナルドの独走を許している現状に、いかに納得していないかがわかります。この2社がマクドナルド包囲網を築いていくのか。日本マクドナルド社長のサラ・カサノバ氏がどう応戦するか。ハンバーガー業界に地殻変動の予感が漂います。

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■長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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