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2015年9月08日(火)17:58 スナップショット

クラウドファンディング「Makuake」で資金調達に成功した開業者を交えたセミナー開催。集客にも効果!

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年9月8日

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 クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を提供するサイバーエージェント・クラウドファンディングと、無料POSレジアプリ「Airレジ(エアレジ)」を展開するリクルートライフスタイルは共同で、9月7日、渋谷マークウエスト13階のサイバーエージェント渋谷オフィスで、約100名の参加者を集めて、「店舗開業支援プログラム第3弾」というクラウドファンディングによる、「Makuake」と「Airレジ」の活用によって、店舗開業・店舗経営者を支援するセミナーを開催した。

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約100名の参加者を集めた「店舗開業支援プログラム第3弾」。クラウドファンディングによる店舗開業希望者向けセミナー。

 この「店舗開業支援プログラム」は過去2回、今年2月と5月に、東京と大阪で開催されており、今回が3回目。「Makuake」を活用して、店舗を開業するプロジェクトが増えていて、特に飲食店の成功例が目立っていることを背景に開催している。セミナーの内容は、3部構成になっており、最初に「クラウドファンディングの効果的な活用法について」と題する講演があり、続いて「クラウドファンディング実行者トークセッション」、最後に「「Airレジ」の効果的な活用方法について」のレクチャーが行われた。

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資金調達だけがクラウドファンディングの目的ではない。

 第1部の「クラウドファンディングの効果的な活用法について」においては、サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈氏より、クラウドファンディングの基本的な仕組みについて、「インターネット上で完結する資金調達の仕組み。一般の消費者から資金を集めることに特徴があり、支援可能な金額は500円などの低価格の支援から何十万の高価格の支援まで幅はあるが、基本的には一人一人の出す金額は小さくてもチリも積もれば山となるで、何千万まで行くケースもある」と解説がなされた。

 また、「Makuake」の場合は、プロジェクト実行者が投資した人に対して、モノや権利でリターンを返していく「購入型」と呼ばれる、クラウドファンディングであることが示された。

 クラウドファンディングには、投資した人に対してお金で返していく「投資型」、リターンが発生しない「寄付型」も存在しているが、世界的にも今注目度が高いのは「購入型」であり、アメリカの「キック・スターター」、日本でも「レディー・フォー」、「キャンプ・ファイヤー」といった有名どころは、全て「Makuake」と同じく「購入型」であると、坊垣氏は指摘した。

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「Makuake」の2つの実施パターン。キュレーターと呼ばれるスタッフと相談のうえ決める。

 日本では、東日本大震災を機に、クラウドファンディングが注目された面があり、社会貢献性あるいは起業のための資金調達として見られがちである。しかし「Makuake」の場合は、「2年前のスタートと後発ではあるが、個人ばかりでなく、たとえばソニー、デンソーのような大企業が、新しい商品、サービスを生み出す場として活用されるケースもあって、幅広く使われている」と坊垣氏。直近では、業界で一番多額の資金調達を行っているサービスになっているとのことだ。

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「Makuake」サイトへのプロジェクト掲載条件。

 さらに、坊垣氏はクラウドファンディングが、消費者から資金を集めるので同時にマーケティングになり、かつ飲食店ならばリターンの設計で飲食チケット、会員権などを設定するので、顧客開拓にもつながることが検証されてきたと、クラウドファンディングによる店舗開業のメリットを強調。実際、コンセプトの優れた店は各種メディアからの注目度も高く、取材も数多く入っている事実を明かした。

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サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈氏。

 第2部の「クラウドファンディング実行者トークセッション」では、リカー・イノベーション・東寛人氏、Knot代表・遠藤弘満氏、エル・ディー・アンド・ケイ アウトプット戦略室室長・齋藤哲也氏の3名が登壇した。飲食店では、エル・ディー・アンド・ケイは「幻のジビエ「穴熊=ムジナ」すき焼き専門店を世界初「渋谷」にOPENします!」というプロジェクトで、441人のサポーターから561万600円を集めて、7月17日にオープンしている。募集期間は約1ヶ月で目標150万円のところ、374%の達成率と高い支持が集まった。

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世界初のムジナ肉専門店はクラウドファンディングに成功して、完全会員制でオープン。

 同社は、渋谷「宇田川カフェ」など20店のカフェ、バー、ライブハウスの事業を行っており、飲食店は全く未経験というわけではないが、本格的なレストランは初挑戦。しかも、シカやイノシシよりも10倍旨いと猟師の間では知られながら、流通ルートがないために幻のジビエと言われてきた、ムジナ肉専門店をつくるミッションを掲げた。九州の林業、農業ではムジナを含めた害獣の処理にかかる莫大なコストに悩まされており、一方でジビエの食肉流通が確立されていないために、大分県の場合には駆除される鳥獣の5%未満しか買い手がない状況にある。

 エル・ディー・アンド・ケイでは、事前にムジナ肉に対する取り組みを知ってもらい、安定的なムジナ肉供給のために、クラウドファンディングを活用した。

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ムジナ肉プロジェクトのリターン例。開業した「むじなや」はリターンに設定された会員証を持つ会員と、会員に連れられて行った人しか、お店に入れない。住所、電話は非公開。

 「そもそも、ムジナってどういう生き物なの?という説明から入らなければ、理解していただけない事業だった。クラウドファンディングなら、ページづくりの中で、なぜムジナ肉なのか、しっかり説明していけると考えた」と齋藤氏。このプロジェクトは「Makuake」で支援してくれた人のみが、最初の1年は会員となってレストランを利用できるという完全会員制のリターンを設定しており、同じ「Makuake」を使って開業した馬肉専門店「ローストホース」と同様なシステムになっている。

 齋藤氏によれば、席数30席で坪単価はどのくらいあれば店舗を回せるのか、シビアにシミュレーションして、400~500人の会員数は必要と考えていたとのことで、想定通り集まったということになる。

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参加者には店舗開業を準備している人もいたが、クラウドファンディングの仕組みをよく知らない人もかなり多かった。

 「Makuake」上の目標は低めの150万円に設定していたが、これは早めに目標に到達して達成記念として別のプロモーション、すなわち同社代表の大谷秀政氏と、ミュージシャン「水曜日のカンパネラ」の鹿の解体が趣味でジビエと害獣に詳しい"コムアイ"氏との対談を設定していたからだった。なので、真の目標はさらに先にあったわけである。

 同社はもともと音楽プロダクションを経営しており、楽曲制作、ダンススクールなどにも事業を広げ飲食にも進出と、音楽事業が柱となっている。代表や齋藤氏が音楽仲間に声掛けをし、実際に音楽仲間からのサポートが多く集まり、グルメ媒体ばかりでなく音楽媒体からの取材も多かったのも、成功要因として挙げられる。

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セルフで日本酒100銘柄飲み放題の立ち飲み店「KURAND SAKE MARKET(クランドサケマーケット)」リターン例。

 リカー・イノベーションに関しては、最初に受付で3000円を払えば、セルフで日本酒100銘柄飲み放題の立ち飲み店「KURAND SAKE MARKET(クランドサケマーケット)」を、今年3月、池袋にオープンしている。日本酒好きの間では、かなり知名度が上がっており、9月2日には浅草に2号店を出店している。「Makuake」では60万円を目標としたが、617人のサポーターから292万9300万円が集まった。達成率は実に488%。

 オンラインマーケティング、アライアンス統括を担当する東氏は、「雑居ビルの4階にあるようなお店では、ぷらっと立ち寄る雰囲気にない。そこで事前にネット上での話題性が必要になってくると考えた」と、店のプロモーションのためにクラウドファンディングが有効と考えたとのこと。一般に言われる資金調達を目的にはしていなかった。

 実際、店舗での来店動機のアンケートによれば、ツイッターなどネット経由が90%以上となっているので、成果は十分に出ていると認識している。

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カスタムオーダー時計「Knot」は、2度のクラウドファンディングで、500万円、1000万円超をそれぞれ調達した。

 Knotの場合は、腕時計のカスタムオーダーブランドを新たに立ち上げた事業なので非飲食ではあるが、昨年の3月のECサイトを運営する会社の設立、今年3月の吉祥寺のリアルショップ出店と、2回にわたる「Makuake」の活用で事業を軌道に乗せた。
このように何回か、クラウドファンディングを活用して、事業を大きくしていく手法もあるということだ。

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実行者トークセッションに登壇した、リカー・イノベーション・東寛人氏(右)、Knot代表・遠藤弘満氏(中)、エル・ディー・アンド・ケイ アウトプット戦略室室長・齋藤哲也氏(左)。

 さらに第3部の「「Airレジ」の効果的な活用方法について」では、リクルートライフスタイル営業統括本部リアルマーケット推進部エアレジ・ウォレットグループの伊藤拓哉氏より、店舗を開業した後に、ローコストで導入できる、無料POSレジアプリ「Airレジ」のメリットについて説明があった。アプリが無料で使えるのであって、周辺機器などには費用がかかる。

 スマートホン、タブレットで注文が取れ、会計が行える、クレジットカードも使える。クラウドにデータが保存されるので、ネットにつながる環境ならば、遠隔地からでも売上が確認でき、顧客のデータ分析なども可能と、機動的でスマートなアプリとなっている。

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無料POSレジアプリ「Airレジ」の体験ブースが設置された。

 セミナー後に参加者数人に感想を聞いたところ、「クラウドファンディングというと資金調達のイメージが強かったが、マーケティング、顧客獲得などの用途があると知って意外だった」という声も。「近々、「Makuake」を使ってワインバーを立ち上げる予定」といったチャレンジャーもいて、飲食店によるクラウドファンディング活用が広がっている実状があぶり出された。

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