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フードリンクレポート

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2015年7月17日(金)10:24

おじいちゃん店主が揚げるアツアツの天ぷらが自慢!水道橋の癒されそば屋「とんがらし」。

繁盛する立ち食いそば屋、行列の先にあるヒット現場!

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取材・執筆 : 須田萌子 2015年7月16日

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 立ち食い寿司、立ち食いステーキ、立ち食い焼肉、立ち食いフレンチに、イタリアン...飲食業界でブーム真っ只中の「立ち食いグルメ」。かつては「立ち食い」と言えば「時間のない時のサクッとランチ」「サラリーマンの昼メシ」「安くて早いが、味はそれなり」というイメージが強かったが、近年は、立ち食いならではの高回転率を活かし、クオリティの高い料理を低価格で提供し、お客様に行列してまでも食べたいと思わせる店が増えている。その立ち食いブームの渦中で特に増えているのが「そば屋」だ。今回は昼夜問わず行列をなし、お客様の心を掴み続けている「立ち食いそば屋」を訪問。各店の特徴をレポートしながら、人気のヒミツに迫る。

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老夫婦が2人きりで切り盛りする、水道橋の「とんがらし」。そば屋にして揚げたての天ぷらが名物だ。

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「とんがらし」はJR水道橋駅西口から神保町方面に向かって徒歩5分。個人店やチェーン店、あらゆるジャンルの飲食店がずらりと並ぶ「食べるところには困らない」ランチ激戦エリアに店舗を構える。

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入り口にマジックで書かれた手書きのメニューが貼られ、はじめて入るのにはちょっと勇気がいる田舎の食堂のような雰囲気が印象的だ。

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11:15の開店と同時にお客様が次々と訪れ、12:00には店の外まで行列ができる。水道橋はビジネスマンと学生が行き交う街、近隣企業に勤めるスーツ、作業服姿のビジネスマン、時折学生の姿も見られる。お客様は全員男性だ。
 
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店内に貼られているメニューはすべてマジックによる手書き。ところどころに剥がした後が残り、この地で長年そば屋を営んできたということがわかる。まるで昭和初期にでもタイムスリップした気分だ。メニューは、名物の天ぷら系を中心に、たぬき、きつね、山菜などの定番を揃え、麺の種類は、そば・うどん・ひもかわ(平たいきしめんのような麺)の3つから、つゆは温・冷のいずれかを選べる。単品でちくわ天、玉ねぎ天などのトッピングも可能だ。

 席数は、店内両サイドに壁向きのカウンターがそれぞれ3席ほど。中央には、立てば6名ほどが食事できるテーブルがひとつ。椅子に座って食べる人もいれば、空いたスペースを見つけて立ち食いする人もいる。

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厨房は店内の奥に構え、客席部分と同じくらいのスペースを擁しかなり広い。
 
 「とんがらし」を経営するのは80歳前後と思われる老夫婦。少し腰の曲がったご主人が天ぷら担当、女将さんが麺ゆで担当と注文・会計を担っている。お客様の注文はグループ客であっても時間差で一人ずつ伺い、ひとつずつ提供。注文が入ってから1人前ずつ丁寧に天ぷらを揚げているので、料理提供時間は7〜10分。ガンコオヤジが揚げているというより、おじいちゃんがマイペースに揚げているという感じ。どんなに行列していても、決して急くことなく、焦ることもなく、夫婦のペースで店を回転させている。天ぷらが揚がる頃合いをご主人が伝えれば、女将さんがそばを盛りはじめるという夫婦のコンビネーションは眺めていてほほえましい。立ち食いそば屋にして、ほのぼのとした気分になれる。

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一番人気の「もりあわせそば」、通称「なすもり」は、天ぷらがてんこ盛りで550円。なんて太っ腹!目の前で天ぷらが揚がり、次々に盛りつけられる様子を見ていても「そんなにのせていいの?」とツッコミたくなるほど。

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メニューを見ると、「もりあわせ」は、なす半分、いか1つ、えび3つと書かれているが、このときはなぜかなすは3切、えびは6つ...サービス!?店主の気っ風のよさがひしひしと伝わってくる。「トクした気分で、お腹もいっぱい」これを求めてお客様は「とんがらし」を訪れているのだ。

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そばはやわらかい食感。つゆは濃いめの関東風で天つゆ代わりにもちょうどいい。

 店内にごま油の香ばしい香りが漂っているとおり、天ぷらはからりとごま油で揚げられている。注文を受けてから一人前ずつ揚げるため、サクサクかつ火傷するくらいにアツアツ。自分のためだけに揚げられた天ぷらと思うと、味わいも格別だ。天ぷらがつゆに浸り、食べているうちに衣がはがれてしまうので、ランチの混雑ピークが一段落する13:00以降に限っては別皿盛りが可能。あえて時間をずらして来店し、天ぷらを塩で楽しむお客様も多いようだ。

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天丼などのご飯ものメニューもあるが、提供は14:15から。そばではなく、天丼目当てに午後遅い時間に来店するお客様もいる。

 営業時間は月曜から木曜11:15〜15:45、17:10〜19:00、金曜、土曜はランチのみ。無理をしない、夫婦2人のペースを崩さない営業スタイルだ。

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テープをはがした後が残る壁、ガムテープで補強されたテーブル、客席の下にダンボールが積み上げられ、店内はどこを見渡しても飾りっ気がない。店主の飾らない生き方が映し出されているともいうべきか。それがむしろ「とんがらし」の魅力にもなっている。都心の飲食店ではなかなかお目にかかれない年季の入りぶりは、この街で長年愛されてきた証だ。

 歴史が刻まれた古めかしいしつらえ、気前のいい大盛りの天ぷら、おしどり夫婦の厨房でのやりとりは、都会の真ん中で慌ただしく働く人たちの気持ちを穏やかにしてくれる。いつまでも残っていてほしい、古き、良き、愛すべきそば屋である。

■とんがらし
03-3234-1610
東京都千代田区三崎町3-2-10

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