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2014年12月29日(月)17:07 トレンド

W杯でシュラスコがブレイク。商業施設は虎ノ門ヒルズとキラリトギンザが突出した。

2014年、外食産業を振り返る(5-5)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2014年4月28日執筆

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 2014年も間もなく暮れようとしている。4月に3%引き上げられた消費税や天候不順の影響もあり、全般に前半は好調、後半失速した外食業界だったと思う。しかしそのような中で、空前の牛肉ブーム、ちょい飲みの浸透、ビアガーデンの拡大などといった話題があり、サッカーのワールドカップ・ブラジル大会の開催もあって、中南米の料理が注目された年でもあった。また、団塊世代の退職により、3世代で楽しめる店としてファミレスが年間を通して好調で、居酒屋の不振と明暗を分けた。(5回シリーズ)


空前の牛肉ブーム到来!熟成肉から格安ステーキ、牛すき鍋とヒット続出。焼肉も好調。 

2014年、外食産業を振り返る(5-1)


吉呑み、ファミレス呑み、日高屋呑み...。非居酒屋大衆チェーンで「ちょい飲み」がブレイク。

2014年、外食産業を振り返る(5-2)


流行に敏感な女性をターゲットにしたビアガーデンが急増。スイーツではプレミアムかき氷が話題をさらった。 

2014年、外食産業を振り返る(5-3)


2014年、外食産業を振り返る(5-4)


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W杯期間中賑わった「バルバッコア」の勢いは、その後も衰えず、年末に六本木ヒルズ、来春に大阪梅田に新規オープンする。


 2014年は6月から7月にかけて、ブラジルでサッカーのFIFAワールドカップが開催された。残念ながら日本チームはあまり活躍できなかったが、外食のほうはブラジル料理が盛り上がった。また、ブラジル料理だけではなく、メキシコ料理、ペルー料理なども一緒に浮上し、中南米ラテンアメリカ料理が全般にブームになった。この傾向は来年も継続するだろう。ラテンアメリカは中国に代わって、世界の工場と言われるようになってきており、東南アジア、インドと同様に工業化で近年注目されている。ニューヨークやマイアミでは、日本よりもずっと気軽に中南米の料理が楽しまれており、それを知る少数の日本人の経営者が、次には中南米料理が切るだろうと読んで、ずっと仕掛けてきた一面もある。


 ブラジル料理の中でも、シュラスコ専門店は、今年の牛肉料理の勢いもあって活性化した。シュラスコは決してビーフばかりではなく、豚肉も鶏肉も焼パイナップルもあるが、メインはやはりピッカーニャ、サーロインなどのビーフだ。ワンダーテーブルの「バルバッコア」はワールドカップ終了後も勢いは衰えず、今年12月に、「六本木ヒルズ」に新店をオープンした。来春には大阪・梅田「ハービスプラザエント」がオープンの予定。これで国内7店目。本国のブラジル国内7店なので並んだことになる。


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丸の内のモダンメキシカン「ムーチョ」。


 メキシコ料理は今年に入って人気を高めており、ヒュージの経営する丸の内「ムーチョ」は、毎晩エントランスゾーンの立ち飲みスペースが、あふれるほどの賑わいを見せる。唐辛子の使い方一つで料理の味が変わっていくので、メキシコ料理の奥深さにはまる人が多い。「ムーチョ」が巧みなのは、中南米のいろんな国の料理のエッセンスを組み込んでいることで、ペルー料理の生魚と野菜を使ったマリネ「セビーチェ」が売りの1つである。「セビーチェ」はそれぞれの家庭、店によっても味が近い、今も進化中の料理だ。そういった中南米料理の現在を日本にあって最も研究している店の数少ない1つと言えるだろう。


 11月には、ゼットンが池袋に「アロハアミーゴ」という、ハワイアンとメキシカンの融合を試みた店を出店。全く異質なものを合わせようとしているみたいで仰天したが、冷静に考えれば昼はパンケーキやアサイーで引っ張って、夜はセビーチェで酒という顧客を取り込めば、成功するだろう。



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「冷たい肉そば」(870円)。牛丼のような丼鉢に2人前以上あろうかというそばの量。つゆにはラー油がたっぷり入った独特のスタイル。


 麺料理では、つけめんブームが、うどんやそばに波及して、従来なかったような工夫を凝らした麺や汁で、つけうどんやつけそばを味わう文化が広がってきた。東京の多摩地区では、豚肉の入った甘辛い汁に、地粉で打ったごわっとした麺を浸して食べる武蔵野うどんの店が増殖している。中でも「国分寺甚五郎」は豚肉のみならず、鴨、ラム、田舎、ごまダレなどつけ汁を多様化させて、グルメファンを喜ばせている。そばとの合盛も可能だ。


 「虎ノ門ヒルズ」近くに店舗を構える「港屋」は、十割そばを思わせるような硬めの麺で、ラー油の入ったつけ汁で食べる、冷たい汁の肉そば、温かい汁の鶏そばを創始した。今やこのスタイルを真似る大手も出現しており、存在の大きさが日々高まっている。鍋は昨年同様に、牛肉や高級魚を使った鍋が流行る傾向にあるが、牛すき鍋の類で一人鍋が定着してきている。「吉野家」が出し続ける限り、一人鍋の一般化は今後も進むだろう。


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「虎ノ門ヒルズ」。屋内にあってもオープンエア感覚の店舗が並ぶ。


 商業施設は「虎ノ門ヒルズ」と「キラリトギンザ」が大きな話題となった。「虎ノ門ヒルズ」は東日本大震災以来、節電志向でオープンエアの店舗を消費者が好み出した状況をよく考慮して設計されており、1階の店だけでなく、上階に行ってもオープンエアを意識したスペース取りが意図的になされていてさすがのものを感じる。入っている店も、「熟成肉専門 但馬屋」、「創作うどん あんぷく」、渡邉明シェフによるお箸でつまむ無国籍的料理を出す「アバーヴ グリル&バー」など、流行に敏感な女性をキャッチし、観光ニーズもつかまえ、ビジネスにも使える練熟したリーシングと見受けられた。合わせて注目された、舛添都知事が打ち出した、東京の主要な道路をシャンゼリゼのように整備する「東京シャンゼリゼプロジェクト」であるが、その第1弾として新虎通り沿いにオープンした、バルニバービ経営の「グッドモーニングカフェ」が大きな反響を呼んだ。しかし、プロジェクトの指定地域が狭過ぎ、舛添氏の発表は大言壮語に終わる公算が強い。


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「キラリトギンザ」内「マーサーブランチ ギンザテラス」ではブリオッシュフレンチトーストのブランチが人気。


 「キラリトギンザ」は銀座のきらきら感を再びといったような施設で、ビルの上のほうが王冠のようにデザインされている。飲食は、勢いある「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」が地下1階に入居。新宿の人気焼肉「牛の達人」、原宿で長蛇の列ができるパンケーキ「エッグスン・シングス」、六本木のフレンチトーストでブレイクの「マーサー・ブランチ」、台湾ナンバーワン点心の呼び声高い「ティンタイフォン」など、オールスターで集客をはかっている。また、「イケア立川」は東京・多摩地区における立川の優位性をますます際立たせている。来秋には、多摩都市モノレール・立飛駅直結で「ららぽーと立川立飛」が開業予定。立川市内でも郊外になるが、中心部との間のロードサイド開発が面白くなりそうだ。


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ニッカ「竹鶴17年ピュアモルト」が、「ワールド・ウィスキー・アワード2014」で「ワールド・ベスト・ブランデッドモルト(ピュアモルト)」受賞。


 ドリンクの面ではNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」で2014年は「ニッカ」、「サントリー」という国産ウィスキーにスポットが当たった。今年「ニッカ」は「竹鶴17年ピュアモルト」が、「ワールド・ウィスキー・アワード2014」で「ワールド・ベスト・ブランデッドモルト(ピュアモルト)」受賞。「サントリー」もウィスキーガイドブック「2015ワールド・ウィスキー・バイブル」によって、「山崎シェリーカスク2013」が最高賞に選出されている。日本のウィスキーは品質的に世界最高レベルと認められており、ハイボールにするだけでは非常にもったいないと、見直される切っ掛けになったと将来言われれば良かったと思う。


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これはすごい快挙だ。


 ビールでも日本の技術は、評価が高く、2年に1度アメリカで開かれる「ワールドビアカップ2014」で、「アサヒスーパードライ」が「インターナショナルスタイル・ラガー」部門で金賞をさらっている。これは凄いことだ。58ヶ国4754製品がエントリーされて、90以上の部門それぞれから、優れたビールのベスト3が、プロパネリストたちによって選ばれる、いわばビールのオリンピック。「ワールドビアカップ」で優勝するということは、世界のプロの舌で判断して一番旨いということなのだ。アサヒビールと契約しているレストランは、自信を持って勧めていい。あと、日本勢は「COEDO伽羅」が「アメリカンスタイル・アンバーラガー」部門で銀賞、「富士桜高原麦酒ヴァイツェン」が「サウスジャーマンスタイル・ヘーフェヴァイツェン」部門で銀賞を受賞している。

 

 このように、小規模のクラフトビールの醸造所も、世界で戦えるレベルに達しており、クラフトビールを自ら醸造して顧客にも提供するブルワリーも増えている。直近では北区の埼京線十条駅近くに、1213日、ブリューパブ「ビアプラスプラスプラス」がオープンした。立地から見ても、もうかなり都内ではポピュラーなものになってきたということだ。ティー・ワイ・エクスプレスのように自家醸造したビールが飲めるレストランを、都内に5店も出店している会社もある。


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キリンビールのクラフトビールプロジェクト「スプリングバレーブルワリー」。


 驚いたことに、大手がこのクラフトビールの市場に侵攻してきた。まさか、ビールのコンテストでもうアサヒに勝てないと思ったわけではないだろうが、キリンビールがクラフトビールプロジェクト「スプリングバレーブルワリー」の開始を7月に宣言。今まで第6弾の商品までが出ている。数量を絞ってネットで予約販売し、顧客の意見を聞きながら次を出すといったように、ここまでは慎重に運営している。売れ行きは好調と伝えられている。


 12月にはスプリングバレーブルワリーというブランド名と同一のクラフトビール事業専門の会社を設立。来年春には、東京・代官山とキリンビール横浜工場内に、ブルワリー併設のパブレストランがオープンする予定だ。コーヒーでも、自家焙煎して顧客に提供する、「サードウエイブコーヒー」の流れが加速している。街角にコーヒーを自家焙煎して売る店が、最近増えてきて、その一角でコーヒーをいれて飲めるような一種の角打ちスタイルのスペースをつくったというようなところから、広がってきた。アメリカ西海岸の農場、栽培方法にこだわった豆を、その豆に合った焙煎をしてハンドドリップで入れるというニューアンスも、当然流れ込んでいる。


 この「サードウエイブコーヒー」にも大手資本が進出している。たとえば、ロイヤルグループのアールアンドケーフードサービスは、昨年3月、永田町の山王パークタワーに「スタンダードコーヒー」を出店。今年6月には、「虎ノ門ヒルズ」に2号店を出店している。


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金沢カレーを広めた「ゴーゴーカレー」。来年は金沢ブームと共にカレーブームも来るかもしれない。


 来年は315日に北陸新幹線がいよいよ金沢まで開通する。注目エリアはもちろん、金沢である。金沢の旨いもの、旨い酒、にチャンスがある。加賀野菜という地場のブランド力ある野菜もある。知名度ある郷土料理に「治部煮」、「かぶら寿司」など。金沢は、回転寿司とカレーのメッカでもあるので、そちらの分野も燃えるかもしれない。また、意外にも金沢市はアイス(アイスクリーム、シャーベット)の1人当たり消費量全国1位の都市でもある。回転寿司店とカレー店とアイスの店の映像がテレビを通じて大量に流れるのは間違いない。お隣の富山県も合わせ、日本海の海の幸に注目が集まることになるだろう。


 観光に影響を与えるNHK朝の連続テレビ小説は、4月から「まれ」に切り替わる。舞台は石川県の能登地方で北陸新幹線で行ける場所。能登は魚だけでなくて、牛、豚、鴨など畜産物も魅力。酒の〆にもなる麺類に、輪島市の「輪島素麺」、隣の富山県に入るが能登半島の付け根に位置する氷見市の「氷見うどん」などがある。「まれ」のヒロイン、津村希は横浜に出てフランス帰りのパティシエのもと、修業に励むので、フレンチスイーツ、横浜の洋食、パティシエという職業も注目されるだろう。


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金沢で人気のアイスの店の1つ。金沢は日本一アイス消費量の多い都市である。


 NHK大河ドラマは激動の幕末を女性目線で描く「花燃ゆ」で、主人公は吉田松陰の妹、杉文という人物。特に前半は山口県萩市が主たる舞台である。地理的に西に寄っているがこちらも日本海側だ。名産は「瀬付きアジ」、「剣先イカ」、「真ふぐ」、「焼抜蒲鉾」など。政府も東京一極集中から人口を分散させたい意向なので、「日本海」を意識した業態やメニューの開発が盛んになる可能性がある。


 また、萩市の松下村塾、恵美須ヶ鼻造船場跡などは、来年政府がユネスコ世界文化遺産への登録を目指している「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の構成資産でもある。この構成資産は、あとは北九州市、長崎市、鹿児島市、佐賀市など九州各地に分散している。


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長崎県五島列島中通島のリゾートホテル「マルゲリータ」。運営は際コーポレーション。


 翌2016年には「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」のユネスコへの世界文化遺産推薦が決定。構成資産は長崎県内と一部熊本県内の天草にある。九州、長崎はチェックすべきキーワードで、九州料理の需要は来年も衰えないだろう。実際に、長崎県に進出した東京の外食企業もある。際コーポレーションは、十字架の形をした五島列島の中通島という人口2万人の島の国民宿舎を改装。「マルゲリータ」というリゾートホテルを運営している。新上五島町との共同事業。


 五島の魚介と野菜でつくるイタリアンが大きな売りの1つ。世界遺産候補の教会を含め、今教会巡りツアーが盛んになっている島だ。長崎、佐世保からフェリーが出ていて、高速船で早ければ1時間20分くらいで着いてしまう。ハウステンボスや長崎市街を観光する合間に、ちょっと1日離島観光も可能である。121日付「西日本新聞」によれば、従業員の大半は島出身者。島の観光客はホテルオープンから2万人増えて24万人になった。地方創生という観点で、インバンドと同様に、外食に出番が来たということを先駆けて示した成功事例ではないだろうか。



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