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2013年4月30日(火)14:56 トレンド

ハイボールは品質を求める時代へ。メーカー側のさまざまな提案。

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取材・執筆 : 酒井慎平 2013年4月23日執筆

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 2月に特集した『飲食店で提供されるドリンク品質について考える』について、掲載後に読者様から多くの反響を頂いた。ハイボールの品質にこだわらずウイスキーと炭酸水の比率を計らずに目分量で作っていた店舗や、実際に注文したハイボールが美味しくなかったというお客様の経験など、些細なオペレーションの手間を省くことで店舗のイメージを下げ、結果としてお客様の入りが少なくなっていく現状が浮き彫りになった。フードとドリンクの品質については、どの店舗も重要視していると思われるが、アルバイトスタッフが多くを占める実際の現場まで意識を徹底することは容易ではない。今では、どのアルコール提供店でも目にするようになったハイボール。ビールメーカー各社では、このような悩みを解決すべく、様々なハイボールの品質改善に取り組んでいる。今回はビールメーカー各社のハイボール飲用時品質に対する対策ついてレポートする。

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 ●ハイボールブームを牽引したサントリー酒類では。

 サントリー酒類株式会社は、ハイボールブームの火付け役となった「角ハイボール」に対して、販売店舗数の拡大ではなく、お客様に対して提供する際の品質向上を目出している。安定した品質の角ハイボールが提供できるハイボールタワーの開発や、ビールディスペンサーで注出できる10リットル樽詰、角瓶で提供する店舗用に、専用ハイボールジョッキに適した30ミリリットルが正確に注げるポアラー(瓶に取り付ける注ぎ口)、店舗スタッフの為の作り方マニュアルなど様々だ。現在飲食店から好評を受けているのが、氷をぎっしり入れたジョッキに注ぐだけの角ハイボール缶(160ml)である。これを使用する事で、オペレーションが簡略化され、炭酸水のロスが一切なくなる。もちろん味や炭酸も完璧な品質で提供することができる。

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 「角ハイボール」は驚異的な店舗導入によって、今では多くの飲食店でこの「角ハイボール」は親しまれるようになった。しかし、導入店舗数が増加する一方で、その分だけお客様に提供する際の品質レベルを高く維持することが難しくなった。ハイボールブームを起こしたサントリー酒類は、今後のハイボール市場に対する訴求を、導入店舗数の"量"を求めるのではなく、お客様が飲む際の"質"を徹底的に改善していくことだという。

●ジャックダニエルのハイボールを提案

 アサヒビール株式会社では、今年からアメリカンウイスキー「ジャックダニエル」の販売をスタートさせ、ハイボールに対する意識も一層強くなっている。同社は、既に「ブラックニッカ」や「竹鶴」を使ったハイボールを提案しているが、今年に入り、「竹鶴」を使用した「竹鶴ハイボール」の導入を一層強化している。ハイボールが広く定着していくなかで、更なる市場の開拓を狙い、「ブラックニッカ」を使用した「髭のハイボール」を入口として、今年はもうワンランク上の「竹鶴」に対する販売訴求を行っていく。もちろん、ただワンランク上の商品を売っていくだけでなく、しっかりとした比率と混ぜ方の指導を飲食店側に行っていくという。

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●富士山麓ハイボールや、ジョニーウィーカーのハイボールを訴求

 キリン株式会社では、「富士山麓」を使用した「富士山麓ハイボール」が最も広く飲食店で波及しているが、その他にも、「ジョニーウォーカーレッド」を使用した「ジョニーウォーカーレッドハイボール」や「ジョニーウォーカーブラック」を使用した「ジョニーウォーカーブラックハイボール」、「フォアローゼス」を使用した「薔薇のハイボール」、「I.W.ハーパー ゴールドメダル」を使用した「ハーパーハイボール」など、豊富なラインナップを揃えている。それぞれ商品によって異なる特徴を踏まえてオレンジピールやレモンカットを加えて作る提案や、「富士山麓ハイボール」では、ソーダとの割合によって「山頂ハイボール」(富士山麓1:3キリンヌューダ)や「七合目ハイボール」(富士山麓1:4キリンヌューダ)などといった名前を変え、割合によって変化する味を楽しむ提供の仕方を提案している。

 ハイボールの浸透で市場回復したウイスキーは、2012年に前年比プラスで推移し、昨年5月に発売したノンビンテージの「山崎」、「白州」が好調だ。また、国際酒類コンペティションのインターナショナルスピリッツチャレンジで、サントリーの「山崎18年」「白州25年」がカテゴリー最高賞をダブル受賞、アサヒビールの「竹鶴21年ピュアモルト」など4品も金賞を受賞するなど、世界での評価がさらに高まっている。

 一方、輸入ウイスキーにも年末から大きな変動があった。「ジャックダニエル」「アーリータイムス」などを擁するブラウン・フォーマン社の扱いがこれまで40年間続いていたサントリーからアサヒビールに移動した。その反対に、アサヒビールが扱っていた「ジムビーム」「メーカーズマーク」などを持つビーム社の商品がサントリーに移り、2013年は両社ともこれらに注力している。キリンビールは引き続き、「フォアローゼス」「ジョニーウォーカー」をはじめとするディアジオ社商品の拡販を図る。

アサヒビールの「ジャックダニエル」やサントリーの「ジムビーム」などが強くキャンペーンを行っているように、現在のウイスキー市場を見ると、今まで一般的にはあまり馴染みの無かったウイスキーがお茶の間のCMで流れるなど、広い市場の中で多彩な魅力を放っている。毎年約100万人の日本人が成人しアルコールデビューしていくなかで、初めてハイボールを飲むシチュエーションが最も多いのは飲食店だろう。もしも、初めて飲むハイボールの品質が良くなかったら、ウイスキーというドリンクカテゴリー自体に悪い印象を植え付けかねない。ハイボールを作る作業は決して難しくないが、店舗スタッフの品質に対する意識によって大きく味が変化してしまう。それはハイボールの印象を大きく左右すると同時に、飲食店への評価に直結する事を意味している。

 最初の1杯目からオーダーされるようになったハイボール。今だからこそ、ビール同様に店舗で提供しているハイボールの品質について意識しなければならない。たとえ信頼されている商品を扱っていてもお客様を満足させるドリンクを提供できなければ、マイナスイメージを与えてお客様離れにつながっていく悪循環が生じてしまう。多くの飲食店でハイボールが提供されるようになったからこそ、お客様に提供する1杯の品質によってその店舗の印象を左右しかねない。全国の飲食店が、改めて品質について考え改善していく必要があるだろう。

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