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ぶっちゃけどうよ!

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2015年6月03日(水)18:34

「スマイル0円復活」戦略で、マクドナルドにお客様は戻ってくる?

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取材・執筆 : 須田萌子 2015年6月3日

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 「5/25からマクドナルドが変わる!」と、日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長が販売新戦略を発表したのは、2015年5月21日のこと。その戦略内容は、いま一度お客様におもてなしの精神を伝えるための「スマイル0円の復活」をはじめ、女性向けの野菜を使ったヘルシーメニューの開発、「わかりやすさ」を重視したバリューセットのリニューアルなどだ。日本マクドナルドでは、2014年から賞味期限切れの鶏肉を使用したチキンマックナゲットの販売や異物混入などの度重なる衛生面の不祥事により、メイン顧客であったファミリーを中心に客離れが加速。同社は、2015年1〜3月期の純利益が145億円のマイナスであったと発表した。新戦略に取り組むことで、マクドナルドから足が遠のいてしまったお客様の信頼を取り戻すことができるのか。新しく生まれ変わったという5月25日当日、マクドナルド原宿表参道店を訪問。マクドナルド新戦略を4つのポイントに沿ってレポートする。

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新戦略のポイントは「メニュー表のリニューアル」「バリューセットの刷新」「野菜を使ったヘルシーメニューの充実」「スマイル0円復活」の4つ。ホームページ上でもしっかりと予告されていた。

まず1つめは、「メニュー表のリニューアル」。
 
 お客様からの「メニュー表がわかりにくい」「選ぶときにプレッシャーを感じる」という声を受け「わかりやすさ」「選びやすさ」に重点をおいたデザインに変更したという。

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カウンター上部にあり遠目から眺めて何を注文するか検討できる、「トランスライト」。

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レジ脇に置いてあり、注文時に使用する「カウンターマット」。

 いずれも、バリューセットを注文すること前提にデザインされており、①ハンバーガーを選ぶ②サイドメニューを選ぶ③ドリンクを選ぶ、の3ステップで順序よくスムーズに注文できるようになっているが、まずハンバーガーを選び、サイド、ドリンクを選ぶというステップはこれまでと変わらないため、リニューアルしたからといって「すごくわかりやすくなった」「劇的に変わった」「注文するのがスムーズだった」という感覚はなかった。

 また今回から「トランスライト」「カウンターマット」のメニュー表に加えて新たに「ハンドメニュー」が導入されたという。レジに並ぶ前や順番待ちの際に手元でゆっくり眺めて選べるという趣旨だが、訪問時は行列ができていなかったため、お目にかかることはなかった。


2つめは「バリューセットの刷新」。

 「もっと、価格設定をわかりやすく」をコンセプトに、ハンバーガーの単品価格に一律プラス300円でサイドメニューとドリンクをセットにできるというシステムに変更。従来は料金をプラスしなければ選べなかったサラダや、チキンマックナゲット、マックシェイクなども選択可能となった。ただしポテト、ドリンクのサイズアップ、一部のドリンクに関しては刷新後も料金は加算されるため、価格の分かりやすさについては、中途半端な気がした。

mac4.pngバリューセット刷新の最大のポイントは「1000通り以上の組み合わせ」を楽しめること。カラフルな広告でキャッチーにアピールし、自由に選べる、自分だけのセットが作れる楽しさを伝えているが、リニューアル前は選択肢が限られていたにしろ、ある程度自由に選べていたのでメッセージ性はやや弱い。

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5月25日のYahoo!のトップ画面もジャック。ここ数年ジャック広告は増えているため、ユーザーは見慣れており、広告表現にあまり新しさは感じられなかった。

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スマホの公式アプリでは、お気に入りのバリューセットと自分の顔写真でオリジナルのセルフィーをつくれるというサービスで話題作りをおこなっている。これはフェイスブックなどSNSでの波及効果を狙えるか。今後、クチコミで盛り上がることで、新バリューセットの認知度アップとマクドナルドの好感度アップを期待したい。

3つめは、「女性をターゲットにしたヘルシーメニューの開発」。

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「野菜を使ったメニューが食べたい」というヘルシー志向のお客様に向けてレギュラーメニューに「ベジタブルチキンバーガー」、朝マック限定メニューに「ベジタブルチキンマフィン」が仲間入り。また子供に野菜を食べさせたいという母親からの声も受けてハッピーセットに「モグモグマック」をラインナップ。いずれも共通して、色とりどりの野菜を練りこんだチキンパティを使っている。

mac8.png 「ベジタブルチキンバーガー」は単品で340円。バリューセットなら640円、昼マックの時間帯(10時半から14時まで)ならセットで450円。単品で考えるとビッグマックが350円であり、競合モスバーガーのモスバーガーが単品370円なので、プライスはやや高め。

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枝豆、にんじん、コーンを練りこんだチキンパティ、レタス、トマトを玉ねぎやパプリカなどの野菜を使った特製ベジタブルソースとともに、全粒粉を使ったブランバンズでサンド。味は、チキンパティのあっさりと淡泊な味わいが印象的で、豆腐ハンバーグやコシのないさつま揚げに似た歯触りに枝豆やコーンの食感がアクセント。ビッグマックのようなジャンキーさはなく、いかにもヘルシーなハンバーガーを食べているという感じだ。特製のベジタブルソースはレモンの酸味が効いており、味わいがスイートチリソースに似ているので、好みが分かれそうだ。

 「ベジタブルチキンバーガー」のカロリーは1個293kcal、バリューセットで、サイドサラダと爽健美茶を選べば、総カロリー310kcalに収まるというカロリーの低さも売り。マクドナルドの通常のハンバーガーが275kcalでほぼ変わらないが、"野菜を食べている"という感覚が女性の心を満たしてくれる。しかし問題は、マクドナルドに興味を持っていない女性のお客様が、「ベジタブルチキンバーガー」に魅力を感じて来店し、リピーターになってくれるかどうかだ。本当に野菜の摂取を気にするお客様は、ミックスベジタブル風の野菜が練りこまれただけでは納得しないはず。たとえば、国産野菜を使っている、肉を使わないベジタリアン仕様、一日に必要な野菜の半分を摂取できるなど、健康に気を使うお客様に響くセールスポイントや、モスバーガーが取り組んでいる、バンズをレタスに変えた菜摘バーガーなどの「意外性」や「驚き」がなければ、たとえ「ベジタブルチキンバーガー」の看板を街で見かけても、心に留めてくれないだろう。野菜を取り入れる新しい試みだっただけに、ヘルシー志向の女性をうならせる、思わず食べてみたくなるようなインパクトが欲しかった。

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サイドサラダのドレッシングにも、ヘルシー志向のお客様に向けた「ヘルシー玉ねぎ」が新たに登場。しょうゆとかつおベースの和風仕立てのノンオイルドレッシングであるが、こちらも特別なインパクトはない。

そして最後に「スマイル0円復活」。

 「スマイル0円」といえば、マクドナルドに根付くお客様へのおもてなしの精神。しばらくメニュー表への記載を省略していた「スマイル0円」の文字を復活させると発表した当日は、ニュースやツイッターで話題を呼んでいた。

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「スマイル0円」をメニュー表に記載することは、社員・クルーの意識を高めることであり、「どんなときであっても、すべてのお客様を笑顔でおもてなしする」というマクドナルドの決意表明だ。

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安心・安全を顧客に伝えるため、マクドナルドで実際に使用している食材に関する読み物や、ママブロガーたちが、定期的にマクドナルドをチェックしブログやweb上で報告するという「ママズ・アイ・プロジェクト」をはじめたことを告知するパンフレットを店頭で配布。信頼を取り戻すための取り組みが垣間見られる。

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また、マクドナルドは5月25日を「マックスマイルの日」と定め、スマイルロゴマークが登場。紙バッグや紙コッブにロゴをあしらい、この日から最高の店舗体験を提供するために、各店舗でホスピタリティや店内清掃の強化をするとしている。
 
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しかし、生まれ変わった当日、テーブルの下にはポテトが落ちていた。
 
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床にはレシートが散らかったまま・・・・など出足がいまいちなのが残念だ。

 以上、4つのリニューアルポイントを踏まえて新生マクドナルドをリサーチしたが、「5/25からマクドナルドが変わる!」と宣言しても、昨日の今日と一瞬で変われるはずはない。それと同じようにすぐにお客様の信頼を取り戻すことはむずかしい。食材の品質管理や調理オペレーションを改善し、それをアナウンスすることも必要だが、「マクドナルドが変わる!」と世間にいくら呼びかけても、実際に店舗でサービスを体感していないお客様には何も伝わらない。マクドナルドがいま取り組まなければならないのは、そもそもの来店の動機となるきっかけを作ること、そして来店されたお客様に対して感動を与えるおもてなしをすることだ。接客時のさりげないひとこと、提供時の気遣いなどの接客力、気持ちよく食事をしてもらうためのホスピタリティやクレンリネス強化など、各店舗の社員・クルーひとり一人が意識を高め、「マクドナルドが変わった!」と"お客様"に言わせることができなければ、「マクドナルドは生まれ変わった」とは言えず、お客様のイメージを一新することはできないだろう。

 今後マクドナルドは、ワンランク上のおもてなし、信頼を得るための努力を、時間をかけて積み重ね、不祥事で失ったマイナスをプラスにしていかなければならない。5月25日はマクドナルドにとっての再スタート地点、積み重なったマイナスが多かった分、信頼回復までまだ時間はかかりそうである。



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