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ぶっちゃけどうよ!

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2015年1月06日(火)10:33

三光マーケ、新業態「大衆酒場 よろづ」で復活なるか。

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取材・執筆 : 中山秀明 2015年1月6日

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 「東方見聞録」や「金の蔵」などの居酒屋チェーンで知られる「株式会社三光マーケティングフーズ(東京都豊島区 代表:平林隆広氏)」にとって、2014年は受難の年だったのではないだろうか。数年前にはメニューのすべてが270円という均一料金の居酒屋や、それまでにない"焼き牛丼"をウリにした「東京チカラめし」などでヒットを飛ばしていた同社だったが、チェーン系居酒屋業態の衰退や高付加価値メニューが礼賛される世相に押され、昨年は「東京チカラめし」を「株式会社ユウシン(東京都新宿区 代表:川島 賢氏」に売却。しかしそんな苦戦の中、新ブランドが誕生していたのをご存じだろうか。11月20日に1号店が調布、そして同月28日に2号店が南千住にオープンした「大衆酒場 よろづ」である。サイトで見る限りでは煮込みやおでんを名物とした低価格路線の居酒屋のようだが、この新業態が同社復活の起爆剤となれるのか。その実態を確かめるべく、調布駅前店を訪れてみた。

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「大衆酒場 よろづ 調布駅前店」の外観。外から店内の様子は分かりづらいが、半地下なので店の存在には気づきやすい。

 まず、物件としては好立地である。そもそも調布駅は京王新宿線の特急が停まる駅であり、市内最大の歓楽街であることから人の往来も多い。また「もつやき処い志井」や「日本再生酒場」などを運営する「い志井グループ」の拠点があったり「ホッピー」の工場があったりと、大衆酒場の文化が根付いている。そのエリアにあって、駅から徒歩約1分という場所にあり、地下ではあるが外からでも暖簾や入口が見える半地下の設えだ。そのことから、都心の一等地の家賃に比べればかなりローコストなはずである。

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ブラウン調のテーブルと、背もたれやクッション付きの椅子が並ぶ店内。内装のデザインは、大衆酒場というよりは和風居酒屋のよう。席同士の間隔にもゆとりがある。

 店内は広く、シート数は堂々の104席。その多くは一般的なテーブル席だが奥には座敷があり、大宴会にも対応可能な使い勝手の良さも持ち併せている。デザイン的な部分は至って普通だが、大衆酒場というよりも居酒屋。和やかな暖色の空間に、レトロ調のポスターが張られているタイプだ。難点があるとすれば、入口からメインダイニングに行くまでの通路の脇が厨房であるためエントランスが窮屈なこと。もうひとつが、トイレに行くためには一旦外に出なければならないというところである。

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店内は奥行きがあるタイプで、一番奥には掘りごたつ式の座敷も用意されている。幅広い用途に使えるのもポイントといえよう。

 サービスやホスピタリティは、やや残念な印象がある。まず店員の愛想がいまひとつ。ホールスタッフは男女ともにいたが、はっきりいって教育が不十分であることを感じずにはいられなかった。注文を取りに来るなどの積極性があまり感じられないうえ、スマイルも皆無。そしてこのようなジャンルに必要な活気も、それほど感じられなかった。酒場は、利用者も和気あいあいと飲む傾向があるし、基本的には個室などもないため談笑のボリュームは自然と大きくなる。だからこそスタッフの活気がないと声も通らないし、お客様に視線が向いていないとオーダーも取りづらい。それでいて同店は席数が多いにも関わらずテーブルには呼び鈴もないので、オーダー時のストレスという問題があるような気がした。ただ、提供時間のスピードが速かったことと、ファーストドリンクのグラスが凍るほどに冷やされていたことは褒めたいポイントである。

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市内に工場があるなど、調布と縁が深い「ホッピー」は白も黒も486円。ちなみに「なか」は216円だ。

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看板メニューの「仙台味噌もつ煮込み」(486円)。下町のそれに比べると若干濃厚な印象もあるが、具はモツにニンジン、コンニャク、ゴボウなど普通だ。

 料理は名物の煮込みとおでんのほか、お薦めとなっていた串揚げや、酒場メニューの定番であるポテトサラダやハムカツなどを注文したが、特筆すべき点はあまりない。看板メニューの「仙台もつ煮込み」は確かにおいしいが、一般的な下町の煮込みと大差ないように感じたし、おでんもポピュラーな関東炊きで、おいしさは想定内だ。だが、競合を同じようにチェーン展開する大衆酒場の既存店「一軒め酒場」や「テング酒場」と定めて比較すれば、「大衆酒場 よろづ」の差別化のポイントが見えてくる。

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もうひとつの名物はこの「関東炊き 酒場のおでん」で、盛り合わせ(518円)を注文。こちらもオーソドックスな具、味付けだ。

 というのも、同店のブランディングにはしっかりとした狙いがあるように感じるのだ。まず大衆酒場というジャンルは、普通の居酒屋ほど飽きられてはいない。好例なのが「串カツ田中」をはじめとする関西系の大衆酒場だ。だからこそ「大衆酒場 よろづ」には、串揚げがお薦めとして用意されているのであろう。そして先述の「一軒め酒場」と比べてみると、全体的に価格はやや高いが、名物メニューを掲げて料理のウリを明確にするという戦略が見えてくる。また「テング酒場」との違いは、ピザやアヒージョ、ワインのような洋風メニューはあえておかないというのがひとつのポイント。三光マーケティングフーズの他業態と違うのはもちろんのこと、あくまでオーセンティックな大衆酒場でありつつも、トレンドは柔軟に取り入れるというスタイルなのだ。

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串揚げは一本108円からで、写真は盛り合わせ(5本/518円)。ソースは卓上のボトル入りのものを使用する。右は「鶏から揚げ」で410円。

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「鶏皮ポン酢」(270円)と「さっぱり梅しそアジフライ」(302円)。奥に見えるのは「サクっとポテトサラダ」(270円)。

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「おすすめ"厚切り"ハムカツ」は410円。その名の通りの厚切りが特徴ではあるが、「一軒め酒場」のハムカツも分厚いため、特に珍しくはない。

 最後に、今後の展望を予測してみよう。現在は先述の調布と下町・南千住のみであるが、これはそれなりに大衆酒場文化が浸透している街でのテストマーケティングとみられ、次はどこでオープンさせるのかが気になるところである。特にターミナル駅に目を向ければ、「串カツ田中」は1月10日に新宿三丁目店を。「一軒め酒場」は1月22日に西新宿店、2月4日に新宿中央東口店を新規オープンさせる。これらの同業態と渡り合うのであれば、個人的には若干の値段の高さとサービスレベルが気になるところだ。いずれにせよまだ2店舗ということで試行錯誤の状態だと思うが、ヒットメーカーであることには違いない三光マーケティングフーズが巻き返せるか否かは、今年の業績が鍵を握る。一層注目していきたい。

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